【Mr.Children】「miss you」ファーストインプレッション!【レビュー】
※最初に
これは十月四日、「miss you」の発売当日にCi-enに掲載したブログの転載です。
なので、いまのぼくの感想とは違う部分もあり、またフラゲから発売日中に発表するため急いで書いたので前後で文章のつながりがない場面もあります。ご理解の上ご覧ください。
これはファーストインプレッションレビュー、つまり初見の感動と熱をそのまま封じ込めたもの、という認識であるため、推敲や改稿をあえて施しておりません。読みづらさがあることも申し訳ありませんがご了承いただければ幸いです。
今後、色々と考えて、改めて(ほかのアルバムも含めて)レビューするかもしれません。今回の浅いレビューで満足いただけない方は、そちらをお待ちいただければ幸いです。
前置きが長くなってしまいすみません。本編をお楽しみください。
「miss you」ファーストインプレッションレビュー!
十月三日。僕は優しい驚き――いや、鋭い衝撃を受けた。
Mr.Children。ニューアルバム「miss you」。その初報を聞いた日、僕は歓喜した。待ちわびたオリジナルアルバム。おそらく二年以上は待った、待望の純然たるオリジナルアルバムである。
中略。待ちわびた日、僕は憂鬱だった。
様々なことが重なり合って、苦しくて。
アマゾン。届いたCD。郵便受けから受け取った。
果たしてその曲たちは、僕の憂鬱に寄り添い、しかし破壊した。
なぜそんな衝撃を受けたのか。それを紐解くために、各曲のファーストインプレッションをここに記そうと思う。
レビュー記事という性質上歌詞などのネタバレを含むので、初見の感動を味わいたい方はこの時点でブラウザバックすることを推奨する。
1.I MISS YOU
まず、この曲の歌詞カードを見てまず衝撃を受けた。
「何が悲しくって こんなん繰り返してる?」
「誰に聞いて欲しくて こんな歌 歌ってる?」
「それが僕らしくて 殺したいくらい嫌いです」
ラスサビの歌詞を抜粋したものだ。「いまの」桜井和寿がこんなことを言うとは思わなかったからだ。
全体的に短調気味な暗くてどこか落ち着く雰囲気からはじまり、I MISS YOUと繰り返すサビ。自己嫌悪が混ざった暗い歌詞。
この曲がアルバムの全体的な雰囲気を示唆しているとはこの時は思わなかった。
SOUNDTRACKSとは全然方向性の違うミスチル像が垣間見えようとは――。
2.Fifty's map ~おとなの地図
この曲は「過去のMr.Children」をオマージュした曲のように思える。
トレーラーでサビの一部が公開されたとき、二〇〇〇年代のミスチルっぽさがあると感じた。
果たして、それは正解だったのではないかとMVが公開された今は思う。
ほとんどが「くるみ」という曲のMVの流用なのであった。
いや、そういう演出だったというのは想像に容易いのだが。「来る未来」という意味のくるみのMVを使って、その先の未来である今のMr.Childrenを表現するという演出がニクイ。
それはさておき、この曲はアルバムの中でも結構異色のナンバーだったと思う。二〇〇〇年代のミスチルへのオマージュを多分に含みながら、現在の自分たちにしか出せない表現を突き詰めているように感じる。
「似てる仲間が ここにもいるよ」
けれども、ラスサビで歌われるこの言葉はアルバム全体で聞かなければ意味が分からないかもしれない。
桜井和寿という人間は、僕らとは遠い人種だ。成功者だ。僕のような底辺をはいずって死んだように生きる屍とは縁のない生き物。そういう意味じゃ、彼と似ている仲間なんて早々いやしない。
けれど、前の曲然り、これからの曲然り、このアルバムを通して、彼は泥臭い側面を歌っている。それを通して、共感の感情を視聴者に生み出す。
彼だって、苦しみながら生きている。僕らだって、誰だって。
だから、その痛みに寄り添っているように感じるのだ。
3.青いリンゴ
明るいバンドサウンドが特徴的な曲。
あまりコメントできることはない、普通の曲。ただ、あまりミスチルらしくないような気もして、これも新しいミスチルなのかな、なんて思う。
軽快で軽やかなサウンドに現代らしさを感じた。新しい風を感じた。そんな一曲だった。
箸休めにはぴったりだ。僕は好き。
4.Are you sleeping well without me?
打って変わって、短調でゆったりした曲風。前の曲とのギャップに驚かされる。
間違う。服を汚して、拭きとって。――「新しい日々はこんな毎日で」。
この曲は失恋の曲だ。ミスチルお得意の。
タイトルの和訳は「私がいなくてもよく寝ていますか」。
主人公はきっと、愛する人と別れたのだろう。そして、眠れぬ夜を過ごし、女々しく一人零すのだ。
「Are you sleeping well without me?」
5.LOST
ポップでダークな曲調に、陰鬱を感じさせる歌詞。それに尽きる。
「放った光さえ歪んで闇に消えてった」
「真っ直ぐな想いだって捻じ曲がって伝わっていった」
そんな歌詞が、無情さを掻き立てる。そして――。
6.アート=神の見えざる手
この曲を聞いた瞬間、僕は衝撃を受けた。
ジャズ調の前奏。そして、ラップ。ほぼ全部ラップで歌われる歌詞は、過激なもの。
Brand new my loverの「Fuckする豚だ」にも負けずとも劣らない歌詞が、血を思わせる真っ赤な歌詞カードに書かれていた。
人を殺したと告白するところから始まり、子供の頃に友達にペ×スを切られたことを告白する。やべえ。
そして二番のサビ(?)でこう歌うのだ。
「安直にセックスを匂わせて倫理道徳に波風を立てて普遍的なものを嘲笑って僕のアートは完成に近づく 大衆を安い刺激で釣って国家権力に歯向かってみせて半端もんの代弁者になる時僕のアートは完成致します」
これ深海の時の桜井さんのことだ!
DV、ワイドショー批判、社会批判。「何とかしなきゃいけませんね。早急な対応が待たれます」
なんて暴力的で過激な曲なのだろう。
それを皮肉るように歌うある意味鬼気迫ったようにも聞こえてしまう姿に、僕はMr.Children、いや桜井和寿の真骨頂を見た。
――いや、見たような気になっているだけかもしれない。
安易に好きになってはいけない曲だと思う。完成してはいけないアートが完成してしまう、ある意味で背徳のような感覚がする。
しかしけれども好きだと感じてしまう自分がいるのも事実なのである。
好き嫌いがわかれる曲だ。大嫌いな人と大好きな人の二極に分かれる曲だ。
カルト的に好むとしよう。ミスチルらしくはないが、こういうミスチルも好きなのだ。
7.雨の日のパレード
前の曲が強すぎて記憶が飛びそうになるが、この曲も普通にいいと思う。
これは00年代の、特に「HOME」に収録されてそうな曲風だと思った。優しい一曲。
そういえば、そのHOMEに「通り雨」って曲が収録されていたのを思い出した。
箸休め的なバラードだったが、まだアルバムは終わらない。
8.Party is over
お洒落な雰囲気を感じる前奏からはじまる曲。
やはり陰鬱さを感じる歌詞。アコギの音色が心地いい。
この曲も失恋ソングだと思う。けど、どこか小説的だったAre you sleeping well without me?よりも現実的な雰囲気を覚える。
最後、主人公は前を向こうとするのだ。けれども、前に進めない。どこへ向かえばいい、と誰かに問うのである。
「胸に手を当てれば 暖かな炎を感じるのに」
「でもparty is over」。無情にも、終わってしまったのである。
9.We have no time
僕らには時間がない。
年を取った男の歌という感じ。
「また始めるにはWe have no time 焦る気持ちも湧き起っちゃう」
何かをもう一度始めようとする男の話。おそらくバンド。
けれど、こう続けるのだ。
「だけどスキルは尚も健在 まだまだいけんじゃない? とか思っちゃう」
何かを羨ましがって、けどできないもどかしさを感じる。そんな一曲だ。
10.ケモノミチ
youtubeで何度も聞いた曲。リリックビデオが先行公開され、幾度となく聞いた。
アルバムを通して聞くと、この曲の意味というか、ある意味このアルバムを体現したような一曲だと感じた。
現代を俯瞰的な視線で見つめるような歌詞。
「誰にSOSを送ろう」
リフレインされるこの歌詞に、主人公の余裕の無さがうかがえる。それが僕ら視聴者との共感を生む。
暗くて、しかし力強い一曲である。
11.黄昏と積み木
一転、日常の風景を綴った曲。
日常の小さな幸せを見つけるような歌詞。ゆったりしたメロディ。アルバム「SUPERMAKET FANTASY」に収録された「水上バス」という曲を彷彿とさせる。
優しい一曲だ。初期のミスチルっぽさもある。
いい曲だと僕は思う。
12.deja-vu
このアルバム唯一の、ラブソングと言える曲だと思う。
「僕なんかを見つけてくれてありがとう」
というその一節が印象的。
僕なんか。桜井和寿という人間が、傲慢にならずにそんな事を言う。それが、なんか意外で人間らしく思えた。
13.おはよう
日常をそのまんま綴ったようなエンディングナンバー。
生活感が漂う歌詞に、アコギが効いたゆったりしたメロディが心地よく響く。
一日の様子が克明に綴られていて、微笑ましい。
幸福の真の姿を現してるような、そんな優しい一曲だと感じた。
総括
このアルバムは、「桜井和寿という人間の骨子」を描いたようなアルバムだと思う。
Mr.Childrenとしてではなく桜井和寿としての骨子である。だからこそ、ツイッターを見てみる限り「Mr.Children」というバンドを求めていた人は肩透かしを食らった人がいるように思える。
圧倒的に成功者である桜井和寿。彼の中の痛み、苦しみ、そして優しさ、愛。それを素直に出力したのがこのアルバムだと僕は感じた。
故に、スター性という仮面を取り払った「一人の人間としての桜井和寿」に共感できるようになる。そう感じた。
この部分を書くまで、執筆途中も含めて何周か聞いたが、聞くたびにこのアルバムが、そして桜井和寿という人間がさらに好きになっていくような気がしてならない。
アート=神の見えざる手は何度聞いてもカッコいい。深海の頃の桜井さん自身を皮肉っているように聞こえて成長を感じられる。懺悔する桜井さんのアレには今も傷跡が刻まれているのだろうかと考えるとぞくぞくする(もちろんフィクションなのだろうけども)。
LOSTはアニメのエンディングになってほしいロックナンバーだし、Party is overはバンドアレンジが効きそうで、ライブバージョンが聞いてみたい曲ナンバーワンになった。
このように何度か聞くうちに印象も変わるし、ほかの人の考察やレビューもみてみたい。
浅学非才な僕のレビューはきっととても浅く感じるだろう。曲に秘められた背景なども知ることはないし、おそらくほぼすべてのミスチルの楽曲を知っているとはいえ、すぐに思い出せるほど頭の回転も良くはない。
けれど、きっと曲の解釈を広げる一助にはなると思う。僕はそう信じている。
皆さんもこのブログのように、感じたことや知っていることをまとめて共有してみるといいかもしれない。
それがほかの人の新たな発見や気づき、学びになっていく(かもしれない)と考えると結構有意義だと思う。
正直僕も気になるので、是非気軽に曲の感想を語ってほしいと思う。
思いっきり話が逸れたが、今回のアルバムを僕はこう評価する。
「最高だ」
宣伝な
……と長々語ってきたが、このブログは本来ミスチルのレビューブログなどではない。今回はあまりにもアルバムの出来がよかったので、緊急で感想をまとめただけである。発売日中に出せそうでよかった。(注釈:このブログのオリジナル版は発売日当日にアップされてます。転載は遅れました)
僕は小説を書いている。音楽とは何ら関係のないものだが、普段は趣味で、いわゆる一般的にライトノベルと呼ばれるような小説を書いて暮らしている。
著書――とはいっても同人でほぼ手のかかっていない自費出版かつ以前ウェブに連載していたもののまとめ本だが――は以下のリンクで購入可能である。
あさおねっ ~朝起きたらおねしょ幼女だった件~
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では、またいつか。ごきげんよう。