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小説|青い鳥 - 1.INTRO【期間限定全文公開】

青い鳥

全ての始まりは一通の手紙からだった。

いつもと変わらないある日の放課後。
音楽活動に夢中な桜庭 詩織(高二)は、自分の机の中に差出人不明の手紙を発見する。
それは詩織ではない他の誰かに宛てたものだった。
送り主の想いが相手に届かなかったことに胸を痛めた詩織は、手紙の差出人を探そうと心に決めるのだが、ある日の放課後、机の中に二通目の手紙を発見する。

これは届くことのなかった想いが、時を超えて届く奇跡の物語。
私がわたしの軌跡を辿る、奇妙で不思議な非日常が――いま始まる。

全8章で完結。
青い鳥が運ぶ、過去と未来を繋ぐ甘くて切ない恋物語。


INTRO

 全ての始まりは一通の手紙からだった。

 いつもと変わらないある日の放課後。
 私は自分の机の中に差出人不明の手紙を発見した。
 それは、私ではない他の誰かに宛てたものだった。

 机の中に見つけたそれを手に取った瞬間、私を取り囲む世界全体がひっくり返ったような感覚に襲われる。
 ふわりと舞うは金木犀の香り。
 こうして私と、私ではないわたしとの物語が始まった。

 物語が始まるのはいつも突然だ。
 きっと誰もが自分の物語の本を持っていて、最初の一ページを開くのを今か今かと待っている。
 大切なのはその物語を、他の誰でもない自分が信じることができるかどうかなのかもしれない。

 ふと見上げた空に一番星を見つけた時のように、心躍るワクワク感が止まらない。
 身に覚えのない手紙など、ゴミ箱に放り投げてしまえば何も始まることなくただの日常が続くだけだった。
 それでも手元にそれを残したのは、手紙の差出人のことが気になって仕方なかったからだ。

 そもそも何故、他人宛ての手紙が私の机の中に入っていたのだろう。
 誰かが間違えて入れてしまったのだろうか。
 それより問題は内容だ。

『放課後、いつもの公園で待っています』

 まずい。
 これはまずいことになった。

 自分のせいではないものの、何か悪いことをしてしまったような気持ちでいっぱいになる。

「どうしよう……いつもの公園ってどこ!?」

 届くことのなかった想いが、時を超えて届くことがあるとすれば、それをきっと奇跡と呼ぶのだろう。

 これは一通の手紙をきっかけに始まった奇跡の物語。
 私がわたしの軌跡を辿る、奇妙で不思議な非日常が――いま始まる。


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安心の完結作品!ぜひ最後までお楽しみください。

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