銀魂考②『銀魂』における“志”、“銀ノ魂”とは

⑴志とは

志とは、「私」ではなく「公」のための目標です。(対して夢は、個人的な願望)

最終的に国の、皆のためになるものが志です。

吉田松陰は、前回のnoteでも書いた『士規七則』で、「志を立てることは全ての始まり」であるとして、志の重要性を説いています。


⑵『銀魂』における“国”とは

『銀魂』における“国”といえば、銀時のセリフが浮かびますよね。

3巻のセリフ「だが俺のこの剣 こいつが届く範囲は 俺の国だ」

66巻のセリフ「俺の国に その臭ェ足で入るんじゃねェ」

“俺の国”というのはもちろん、文字通りの“日本国”ではないでしょう。

「一本の腐れ縁」で繋がる人々、そんな彼らの住む場所が『銀魂』における“国”です。


⑶『銀魂』キャラの志とは

例1.銀時

銀時の志は、上記のセリフ(3巻「だが俺のこの剣 こいつが届く範囲は 俺の国だ」、66巻「俺の国に その臭ェ足で入るんじゃねェ」)から分かるように、腐れ縁で繋がった自分の“国”を護ることです。

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例2.桂、茂茂

桂の志は「より良い国をつくる」こと(こちらもさらば真選組篇より)です。

ちなみに桂は懺悔篇にて茂茂もこれを志としていることを知り、彼の死後、彼を「同じ志を追いかけた友」と認めます。
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例3.近藤、真選組、沖田、土方

近藤の志を示すであろう言葉はたくさんあります。

「どんだけ人に嫌われようが 人に笑われようが かまやしない!ただ護るものも護れん ふがいない男にだけは絶対になりたくない

目の前で命狙われてる奴がいたら いい奴だろーが悪い奴だろーが手ェ差し伸べる。それが人間のあるべき姿ってもんだよ。」

「迷い悩み、自分の理想を追い求めるその姿勢こそが侍なんだ」

自分だけの真の道を選び、突き進め

近藤は真選組の局長であり、真選組の魂です。近藤の志は、真選組の志です。

沖田は、自分を「おまわり」と自称します。(「おまわりさんの心を傷つけた〜」「地球のおまわりなめんな」など)六角篇からも分かるように、彼は彼なりの信念に従って“おまわりさん”でいる。近藤の側にいるためだけではない。その信念に基づいて、警察として誰かの大切な人を護ることを誇りに思っている部分がある、というか。彼はそれを志にしてきたと思います。だから、自分の信念を曲げなければならないのならば、近藤を初めとした腐れ縁仲間を護ることができないのならば、「腐りきった幕府に仕えてまで侍であることに意味はない」と言うんですよね。

土方は、さらば真選組篇にて、「今まで江戸を護ることは 自分たちが侍であるための ただの任務だと思っていた」と言います。真選組を、近藤の側で侍でいるための手段だと思っていたんです。これは「公」のためではなく、「私」のためですよね。「江戸を護りてェ 俺たちの居場所を護りてェ」と心の底から思えた時、彼は自分の志を得て、「ようやく真選組になれた」と思うのです。………………………………………………


銀時は、捕らえられ連行されゆく松陽に「仲間を みんなを 護ってあげてくださいね」と言われ、「あぁ 約束だぜ」と答えます。銀時はこの約束だけは違えてはいけないと、強く思ったのでしょう。それが松陽の望みなのならば、どんなに辛くても、みんなを護るために生きてゆこう、と。

桂は登場時こそ過激攘夷浪士でしたが、幾松や万事屋など自分と繋がる仲間の存在に気付き、自分よりも辛くともそれに耐え、“国”を護ろうとする銀時に影響されます。松陽が望んでいたのは、この国を守ること、この国をより良い国にすることである。その志を受け継ぐために自分たち弟子が生き残ったのだ、と思うようになる。

高杉が銀時・桂と道を違ったのは、高杉は「私」のために動いたからではないでしょうか。

誰よりも大切に思っていた松陽を喪ったことで、松陽を奪った世界に絶望し、ならばこの世界を壊してやる、と、悲しみに突き動かされ感情的に動いた。松陽を喪ってしまった、銀時に松陽を喪わせてしまった、銀時に全てを負わせてしまった、それらの負い目からずっと抜け出せなかった。


⑷志の原点となる“魂”とは

吉田松陰の有名な歌の一つに、

” かくすればかくなるものと知りながら 已むに已まれぬ大和魂 ”

というものがあります。ペリーの船に乗り込んで外国へ行こうとして失敗し、自首した後の松陰が詠んだ歌です。

「失敗すれば捕まると分かっていても、それを止めるわけにはいかなかった。大和魂に突き動かされたからだ」というような意味です。

つまり彼は、行動の理由、志の原点となるものは大和魂であるとしたのです。

この大和魂というのは、「日本を思う心」、「愛国心」、「侵略してくる外国から日本を護りたいという心」を表現していると考えられます。


同じように空知先生は、『銀魂』において志の原点となるものは銀ノ魂である、としたのではないかと思うのです。

銀魂における国とは“1本の腐れ縁で繋がった国”ですから、銀ノ魂というのは、「“国”を思う心」、「“国”を護りたいという心」なのでしょう。

舞台が江戸(日本)なだけに少し分かりにくいですが、『銀魂』において「“国”を思う心」というのは何も日本人だけが持っているものではないですよね。というかむしろ人種なんて全く関係ない。地球人でない神楽だって、人間でない定春だって、誰もが皆心の底に持っている心です。だから空知先生は、松陰の言う大和魂とは違う、銀ノ魂と名付けたのではないか、と。


⑸まとめ

吉田松陰の志とは、日本国を護るためのもの。

その志を突き動かすのは、日本人の持つ、日本を愛する心、大和魂である。

『銀魂』における志とは、人それぞれ形は違えど、“国”を護るためのもの。

その志を突き動かすのは、誰もが持つ、自分の周りの人や場所を愛する心、銀ノ魂である。


⑹あとがき

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とは書いたものの、銀ノ魂を大和魂と近しいものとして描いているなあと思う部分はあります。だって日本人にとって馴染み深い銀色の魂ですもんね。主人公さんですもんね。

華やかじゃないけど逆にそこが良いっていうの、日本人ぽいなって思います。銀閣とか、いぶし銀とか。判官贔屓と近いものを感じますね。

…そういえば銀テープって、なんで銀なんですか?最初に作られたのが銀色のだったんですかね?今はもう金のだってカラーのだって色々あるのに、それでも私たちはあれを銀テープって言うんですね。

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