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隣の席のヤンキーくん
【櫻の魔法 〜隣の席のヤンキーくん〜「谷口愛季」】
「また?」
「またって何?」
「いや他に席空いてんじゃん」
委員会の時、谷口は何故か毎回隣に座ってくる。
「ここの席が好きなんです〜」
「あっそ」
『じゃあここマーカー引いといて〜』
「あ、やば」
「マーカー忘れた?」
「うん」
「はい、これ使っていいよ」
「ありがと」
「愛季が隣で良かったね〜」
「まぁ」
「.....素直じゃないやつ」
『じゃあマーカー引き終わった人から解散で』
「書き終わった?」
「え?谷口は終わった?」
「うん」
「ごめん、急ぐ」
「別に大丈夫だよ〜」
谷口がこちらを見ていたので気になる。
「.....なに?」
「え?」
「いやなんか間違ってる?」
「マーカーの向き愛季と逆だーと思って」
「向き.....?笑」
「うん、やっぱり愛季の引き方変なのかな」
「どうやって引いてんの?」
「愛季、逆で引いてる」
そういうと谷口は柄を自分と反対側に向けて引くフリをした。
「え、珍しっ」
「こっちの方が線引きやすいんだよね〜」
「へ〜」
「.....」
「.....だからなんだよ笑」
「え?笑 気になっただけだけど笑」
「なんだそれ.....笑」
『愛季〜帰ろ〜』
「は〜い」
「谷口、マーカーありがと」
「引けた?」
「うん、助かった」
「いいえ〜」
谷口は俺に手を振って教室を後にした。
次の週、谷口は時間になっても来なかった。
居ないと居ないで寂しがってる自分が悔しい。
「すみません!遅れました!!」
『おー、遅いぞー座れー』
「すみません.....」
案の定、俺の横に座ってくる。
「遅刻してやんの」
「先生と話してただけだもん」
「説教?」
「違います〜😑」
「あっそ」
「今日はマーカー持ってきた?」
「.....まだ使うって言われてないから」
『じゃあここマーカー引いた人から帰れよ〜』
「.....」
「😏」
「.....」
「どうすんの?」
「.....」
「黙ってたら分かんないよ?」
「.....貸してください」
「はい、よく出来ました」
「.....舐めやがって」
「忘れる方が悪いでしょ〜」
「おいなんでピンクなんだよ」
「笑笑 いいじゃん何色でも笑」
「黄色貸せよ」
「文句言わない」
「.....ちっ」
「あー舌打ちするなら貸さないよ?」
「ありがとうございますー」
「どういたしましてー」
今日はバイトが休みだし、家に帰っても特にやることも無いから教室でのんびりしてから帰ろうと思ったのに.....。
「お前いつまでいんだよ。早く帰れよ」
「別に愛季の勝手でしょ?」
「.....いつもの友達は?」
「.....」
「黙ってたら分かんないんですけどー」
「.....喧嘩した」
「.....あっそ」
「○○くんと関わらない方がいいよって言ってくるから怒った喧嘩になった」
「.....は?」
「聞いてよ。その子さ、○○くんの事何にも知らないのに『性格悪い』とか『万引きしてそう』とか『カツアゲしてるの見た』とかって噂信じてさ!信じらんない!」
「.....なんでしてないって言い切れる?」
「だって愛季が知ってる○○くんはそんなことしないもん」
「俺の何を知って」
「知ってるよ」
「.....」
「愛季の事『うざい』とか言ってくるくせに『ありがとう』とか『ごめん』とかはちゃんとするし」
「.....」
「自分が怖がられてるの知ってるから、わざわざできるだけ人が少ない時間帯狙って帰ってるし」
「.....」
「それに愛季が居ないとそれはそれで寂しそうにしてるとことか可愛いなぁって」
「はぁ?調子乗んな」
「んふふ.....笑」
「なんだよ.....」
「否定はしないんだね」
「っ!」
「ひぃっ.....」
「え、ごめん.....そんなつもりじゃ.....」
「.....ふっ笑 ほらちゃんと謝った笑」
「お前.....」
「あとこの前、駅でおばあちゃん助けてるの見かけた」
「.....」
「なんか梨を大量に貰って困ってたの面白かったなぁ.....」
「見てたんなら貰いに来いよ.....大変だったんだから」
「無理だよ」
「なんでだよ」
「だってドキドキして声掛けられなかったんだもん」
「.........は?」
「『うわ〜.....好きだな〜』ってなっちゃったんだもん」
「.....断る」
「まだ何も言ってないじゃん!」
「俺なんて好きになるな」
「"なんて"とか言わないで」
「.....ごめん」
「.....あはは笑」
「なんだよ急に.....怖ぇな」
「ほんと面白いね笑」
「なんだよ.....」
「ねぇねぇ」
「なに?」
「今日一緒に帰ろ?」
「なんでだよ、1人で帰れよ」
「寂しいこと言わないでさ」
俺の手を握ってくる。
「触んな」
「あー照れた?もしかして」
「そんなんじゃねぇよ」
「じゃあ繋いでみてよ」
「やんねぇよ」
「恥ずかしいんだ.....だっさぁ〜」
「ちっ.....」
「.....」
「手繋ぐくらいでいちいちうるせぇな」
「.....恋人繋ぎじゃないの?」
「ふざけんな、いつ恋人になったんだよ」
「今、愛季の事好きにならないとすぐどっか行っちゃうよ?」
「知らねぇよ」
「.....うそ。たぶんずっと好き」
「なんなんだよ.....うぜえなぁ」
しばらく手を離してくれなかった。