零れ落ちる水芭蕉「藤吉夏鈴」1話
僕の名前は松生 冬星(まつお とうせい)。
人員強化のために今日から株式会社種花へ出向になったものの、外が寒すぎてそれどころじゃない。
電車を待ってる他の人も、みな厚着をして一回り、二回り大きくなっている。
「寒いな.....」
東京ドームでライブかなにかでもあるんだろうか。
日曜の朝にも関わらず電車は満員。
そして同じようなグッズを持った人達が居る。
??「わっ...すみません.....」
電車が急停車したことで、目の前に居た女の子とぶつかる。
冬星「いえ...大丈夫ですか?」
??「はい...すみません.....」
華奢な女の子なんてもっと大変だろうに.....ん?
この子...どこかで見たことあるような.....。
というかなんか押しつぶされそうだなこの子.....。
よし...さりげなく壁にでもなっておこう。
『次は市ヶ谷...市ヶ谷.....』
ん?この子もここで降りるのか。
ちょうど良かった.....ちょうど良かった?
会社に向かっていると、この子もどうやら同じ方向らしい。
まぁここらへんに会社なんて山ほどあるし、なんて思っていたら、ついには会社のエレベーターまで同じだった。
おいおい...まじかよ.....。
エレベーターの駆動音だけが響いていた。
冬星「.....お疲れ様です」
さすがに声をかけないと気まずい。
??「え...あ、お疲れ様です.....」
冬星「まさか同じ会社だったとは....笑」
??「そう...ですね.....」
冬星「あぁすみません...さすがに触れないと気まずくて.....そんなに警戒しないでください笑」
??「え...あ!いや、すみません...人見知り...なんです.....」
冬星「それは...すみません.....」
??「あ、いや.....」
目的の階まで変な間が空く。
??「あの.....スタッフ...さんですか?」
冬星「ですです.....えっと、そちらは?」
??「あえーっと.....タレントです」
冬星「え!あ、そうなんですか!?」
??「一応.....」
プルルル
スマホを確認すると、今日からお世話になる小林チーフの名前が。
冬星「すみません.....」
??「.....お気遣いなく」
なんとなく一礼して電話に出る。
冬星「.....お疲れ様です」
小林「お疲れ様〜、もう着いた?」
冬星「今ちょうどフロアに着きました」
エレベーターを降りる時、一応その子に会釈する。
小林「あ!」
冬星「お疲れ様です!」
小林「お疲れ様〜、外寒かったでしょ」
冬星「ですね...手が悴んでて.....笑」
小林「手貸して」
冬星「はい?」
小林「ほんとだ、めちゃくちゃ冷たいじゃん笑」
!!?
びっくりした.....。
冬星「.....小林さんは温かいですね笑」
小林「そりゃ事務所は暖房効いてるからね」
冬星「あ、そっか」
小林「笑笑 この後、タレントのみんなにも挨拶しよっか」
冬星「分かりました」
小林「今日はオンラインミーグリの日だから」
冬星「あぁ!」
小林「お、勉強してきた?」
冬星「一応、頂いた資料は全部目を通しました」
小林「もう名前覚えた?」
冬星「顔見てからですかね.....笑」
小林「さすがにか笑」
こんな会話をしていると事務所に着く。
小林「みんな〜、今日から入る松生くんです」
冬星「よろしくお願いします!」
一同「よろしくお願いします!」
小林「マネージャーの経験は?」
冬星「初めてなので、色々と勉強させていただきたいです」
小林「だそうなのでみんなよろしくね〜」
そのままマネージャー業の説明を軽く受けた。
小林「んで...これが新しい社員証ね」
冬星「ありがとうございます」
プルルル
小林「ちょっとごめん」
冬星「あ、いや全然.....」
小林「タバコ吸う?」
冬星「あ、はい」
小林「あれなら行ってもいいよ、30分までは何も無いから」
冬星「いいんですか?」
小林「喫煙所、奥の角ね...もしもし」
デスクを見る感じ、小林さんも喫煙者らしい。
仲間が居るのはめちゃくちゃ助かるな.....。
ここでは肩身の狭い思いをしなくて済みそう。
にしても、いきなりイベントの日かぁ.....。
説明を聞く限り、結構大変そうだなぁ.....。
喫煙所に向かう途中、さっきの子と出くわす。
??「あ」
冬星「あ!さっきの!」
??「え、あ、お疲れ様です.....」
そうか、なんか見たことあると思ったら資料の.....。
冬星「藤吉さんだ!」
夏鈴「え?あ...お疲れ様です.....」
冬星「やっぱり!」
夏鈴「.....?」
困惑してる顔を見て、ようやく自分が失礼なことをしていると気がつく。
冬星「あ、いきなりすみません...今日からこちらの事務所に異動してきた松生です。一応この後、みなさんの前でもご挨拶させていただくんですけど」
夏鈴「うそ!?新しいマネージャーさんって.....」
冬星「えーっと...たぶん僕です」
夏鈴「.....よろしくお願いします」
深々とお辞儀される。
冬星「こちらこそ、よろしくお願いします.....あ、すみません呼び止めてしまって」
夏鈴「いや全然.....笑」
冬星「じゃあまた、あとで改めてお願いします!」
夏鈴「お願いします.....笑」
まさかアイドルだったとは.....たしかに華奢でスタイル良いなとは思ったけど.....。
そう思いながら煙草に火を灯す。
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小林「よし、じゃあ挨拶行こっか」
冬星「お願いします!」
小林「ミーグリ前に軽く紹介して、その後はそれぞれのミーグリでみんながどんな感じでやってるか見てもらいつつ、顔と名前を覚えよっか」
冬星「かしこまりました」
小林「ちなみにこの子は分かるって子居る?」
冬星「藤吉さんなんですけど朝、同じ電車に乗ってて」
小林「え!?そうなの!?」
冬星「はい...さっきも喫煙所に向かう途中で会ったので一足先にご挨拶しまs」
ん?待てよ?
なんで喫煙所の方から来たんだ.....?
小林「夏鈴、また居ないと思ったらそっちに居たのか.....笑」
冬星「え!?大丈夫なんですか!?」
小林「あぁ違う違う笑 あの子、すぐどっか行くから注視しててね笑」
???
どういうことだ.....?
冬星「.....は、はい!」
小林「じゃあ入るよ〜」
冬星「お願いします.....!」
小林「みんなお疲れ〜」
一同「お疲れ様です!」
小林「ミーティングを始める前に、まずは今日から新しく入った子を紹介します.....いいよ」
小林さんに呼ばれ、緊張しながらも会議室に入る。
冬星「失礼します!今日からお世話になります松生冬星です!異動前はマーケティング部に居ました!未熟者ですが、みなさんが活動しやすいように精一杯サポートさせていただきます!」
パチパチパチパチ-👏
??「よろしくお願いしまぁす!!!!」
??「しまぁす!!!!」
誰かが大きな声で返してくれて、それに釣られたみんなが笑っている。
明るっ。
小林「この後のミーグリ監視役の見学でみんなのとこ入るから、その時は助けてあげてね」
??「了解でぇす!!!!」
あの子たちめっちゃ元気だな...えーっと.....。
タブレットに入ってる資料を確認する。
山﨑天と松田里奈か.....。
初めての会議は知らない言葉が沢山出てきて、僕だけ1人呪文の勉強でもしてるのかと思った。
あとで小林さんに確認しておこう。
小林「じゃあそんな感じでお願いします...他何かある人いる?」
??「.....ないでぇす!!」
小林「じゃあ解散!頑張れ!」
一同「よろしくお願いします!」
若いというかなんというか、活気が凄かった。
小林「ごめんね〜、朝からうるさい子達でしょ笑」
冬星「いやいや!元気が1番ですから!笑」
小林「こちとらまだ眠いっつーの笑」
冬星「笑笑」
小林「じゃあ早速、ミーグリの監視役の見学に入ってほしいんだけど.....」
そう言いながら、なにやら資料を渡してくれた。
小林「ん〜...誰にする?」
冬星「え!?僕が選ぶんですか!?」
その名簿には
・田村保乃&藤吉夏鈴
・森田ひかる&山下瞳月
・守屋麗奈&山﨑天
の情報が書かれていた。
Q.どのグループにする?