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最期の記憶

【櫻の魔法 〜最期の記憶〜「大園玲」】
「玲〜おつかれ〜」
「あ〜!来てくれたんだ!」

今日は玲の初舞台を観覧しに来た。

「すっごい良かった!」
「どこが1番好きだった?」
「ラストのシーンがもうほんとに泣けて...すごい心が暖かくなった」
「そっかそっか...良かったぁ笑」
「あ、これ差し入れというかご褒美というか」
「え!!イチジクのドライフルーツのやつ!!」
「開演前に並んできた...😏」
「え〜...ありがとう!」

玲は僕に飛びついてくる。

「喜んでくれて良かった.....」

しかし、珍しくしばらく離れてくれない。

「れ、玲?」
「.....ね〜え?」

少しだけ声が低くなった気がする。

「なに.....?」
「共演のひよこさんいらっしゃるじゃん?」
「うん.....」
「すっごい綺麗な方だよね?」
「う、うん.....」
「○○くん的にさぁ.....」
「.....」
「.....どっちが可愛い?」

絶対何かしたじゃん...と思い、観覧中の出来事を思い出す。
しかし、特に思い浮かばないのでちゃんと答えておく。

「玲に決まってんじゃん」
「ほんとに?」
「うん.....」
「ほんとにそうかなぁ.....?」
「な、なにが言いたいの?」
「今日、実は客席に居る○○くん見つけたんだよね〜」
「えっ」
「演技しながら○○くんにアイコンタクト送ったの気づいた?」
「えっ.....と.....」
「だよね〜.....まぁしょうがないか.....」
「ごめんね.....全然気づかなかったや」
「だってひよこさん見てたもんね?」

背筋を冷や汗が通り過ぎるのを感じた。

「えっ」
「せーっかく○○くんに愛を伝えよーって思ったのにー」

次第に僕を抱きしめている玲の力が強くなっていく。

「れ、玲...苦し.....」
「あ、そうだ」

何かを思いついたらしい玲はあっけなく僕を離す。

「どうしたの?」
「私の目、しーっかり見て?」
「え?うん」
「そしたら私の顔覚えて?」
「え?覚えるもなにも.....」
「いいから」
「はい.....」

玲の顔がなんか怖い.....。

「覚えた?」
「.....うん」

玲が一瞬ニコッとしたのを見たのが最後、視界が急に真っ暗になる。






そして






「あがぁあああ!!!!!」






こめかみに激痛が走ったあと、とてつもない頭痛に襲われる。

「うわぁ...血がいっぱい出てきちゃった.....」
「あ"ぁ"あ"あ"あ"!!!」
「タオルタオル.....」
「れ、玲!!な"に...をっ.....!」
「え?他の子見るくらいなら要らなくない?」
「はぁ!?」

その後の記憶がなく、気づいたら一定間隔で機械音がする場所に...横になっていた。

「起きてる?」
「玲.....」
『○○さん聴こえますか?』

聴いたことない声...誰だ?

「.....どなたですか?」
『担当医の△△です』
「どうも.....」
『体調はいかがですか?頭痛とか』

さっきから頭を突き刺すこの痛みはそれか.....。

「頭が痛いです...こう...突き刺されてるというか」
『ここは痛いですか?』

こめかみに激痛が走る。

「痛っ...たいです.....」
『分かりました...災難でしたね.....』
「なにが.....?」
『事故で目に鉄骨が刺さるなんて.....』

.....は?

「いや、玲g」
「○○くん心配したんだよ〜?」

僕の手を握る玲の手がやけに冷たく、僕の声はそこで止まる。

『また伺いますね』

そう言い残し、最後の頼みの綱が部屋から出ていった音がした。

「玲.....!」
「そんなに怖い顔しないでよ〜まぁ包帯で見えてないけど」
「なんで.....」
「これで"最期の記憶"は私だね♡」

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