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いつまで経っても 7話

【いつまで経っても「小島凪紗」】7話
「はぁ.....暇だ.....」

昨日からなぎが夏の休暇で実家に帰っており、他のメイドさんがお世話してくれている。

「映画もつまんないし.....料理も僕の好きな味じゃないし.....」

なにより朝、なぎの声で起きられなかったことが1番寂しかった。

コンコン

「入っていいですよ」
「失礼致します」
「麗奈さんか.....」
「今日はお勉強なさるとの事で、集中力が続くように紅茶と茶菓子をお持ちしました」

なぎは料理は出来るけど何故かお菓子作りは苦手でいつも僕が好きなお菓子や好きそうなお菓子を選んで買ってきてくれてる。

「ありがとう。置いといてくれる?」
「かしこまりました」
「.....」
「.....なに?」
「あぁいえ、今朝から元気が無いように見えたので勝手ながら心配を.....」
「.....大丈夫だよ。ありがとね」
「なら良いのですが.....」

麗奈さんが作るお菓子ももちろん美味しい。
でも健康に気を使って基本的にオーガニック食材を使うことが多く、父には合っても僕には合わなかった。

なぎが買ってくるバカみたいに甘いチョコが食べたくてなぎに電話しようとする手前、止める。

「ダメだ.....なぎは休暇中.....」

昨日からすでに100回は唱えてる。

1度、キッチンを通りかかった時に見えたスーパーの袋の記憶を頼りに玄関へ向かい靴を履いていた。

「○○様?」
「ごめん、ちょっと出てくるね」
「お付きいたしましょうか?」
「ううん!気持ちだけもらっとくね」
「かしこまりました.....」

ただ、どこにスーパーがあるかも分からないのでスマホでマップを開いた。
それでもそもそもどれがスーパーに当たるのか皆目見当もつかないのでとりあえず大通りを歩いた。

途中何個かスーパーらしき所は発見したが、僕が欲しいものはどこにも売ってなかった。

「どこにあるの〜.....」

気づいたら2時間は歩き続け、普段車移動の僕にはもうしんどかった。

「.....諦めて帰るか」

ふと数十メートル先になぎらしき人影を見つけ、僕は走り出していた。

「なぎだ!!」

角を曲がった先のカフェテラスで友達と楽しそうに話すなぎを見つけ、ギリギリで留まった。

「違う違う.....今日はなぎはお休み.....」

いくら好き同士であれ、邪魔されたくないプライベートくらいある。

「.....帰ろう」

屋敷に戻る足取りは重くて迎えを頼もうと思った矢先、後ろから今1番聞きたかった声が聞こえる。

「○○様!!」
「え」
「あ!やっぱり!」
「なぎ.....」
「○○様の匂いがした気がしたんです」
「.....まじ?」
「はい!そしたら居ました!運命ですかね?笑」

思わず抱きついてしまった。

「どどどどうされました?」
「さb.....いやなんとなく.....」
「○○様.....」

なぎは僕の背中を優しくさすってくれる。

「寂しい思いさせてしまって申し訳ございません.....」
「自惚れるな.....僕は寂しくなんかない.....」
「左様でございますか.....」

ハグを止める。

「ごめん、急に」
「いえ!」
「休日楽しんで」
「○○様」
「なに?」
「今日戻りますので」
「.....え?なんで?」
「寂しくなっちゃいました」

またこの子はこうやって素直に.....。

「.....僕に気を遣ってるなら大丈夫だよ」
「違います。今朝も○○様の寝顔見られなくて寂しかったので」
「なぎ.....」
「では一旦お友達の所に戻るので、また後で」
「なぎ!」

なぎの手を掴んだ。

「僕も寂しい.....でもなぎがプライベートを優先できないのは嫌だから我慢する」

なぎは無言で僕の頬にキスをした。

「大好きです😊」

それだけ伝え、なぎは戻って行った。

僕は歩いて屋敷に戻っていた。

「○○様、お帰りなさいませ」
「ただいま麗奈さん」
「夜ご飯なのですが」
「あぁごめん今日は大丈夫」
「かしこまりました。何か簡単なものでもお作りいたしましょうか?」
「ううん、麗奈さんも今日は休んで」
「かしこまりました。お気遣いありがとうございます」

僕は自室に戻り、ベッドに埋もれて後悔した。

「はぁ.....絶対僕のせいじゃん.....」

ふとスマホの壁紙にしてる、なぎと遊園地で撮った写真を見ていた。

「なぎ.....」
「呼びました?」

声の方を向くと私服のままのなぎが立っていた。

「なぎ!?」
「○○様っ!!」
「うっ」

ベッドに仰向けで居る僕に飛び込んでくる。

「寂しかったです〜.....」
「どうして.....」
「言ったじゃないですか!私も寂しかったって!」
「でも.....」
「ほんとですからね?」
「.....ほんとに?気遣ってない?」
「遣ってません」

なぎが居ない日は2日しか無かったのに、なぎの温もりが、匂いが、声がこんなに懐かしいとは。

「私におはようって言われなくて寂しかったですか?」
「え」
「やっぱり笑」
「なんで分かったの?」
「だって私も寂しかったから」

なぎは僕に微笑んでた。

「次からお休みは一日だけ頂くことにします」
「いやでも.....」
「いいんです。できるだけ○○様と一緒に居たいので」

なぎの真っ直ぐな視線に耐えられず、抱きしめることしか出来なかった。

「夜ご飯食べました?」
「ううん」
「ダメですよ?食べないと。麗奈さんのご飯美味しいのに」
「なぎのご飯が食べたかったから」
「麗奈さんの方が美味しいのに?」
「僕はなぎの方が好き」
「ほんとですか?」
「ほんとだよ」
「.....嬉しいです.....何が食べたいですか?」
「なぎが疲れないやつ」
「笑笑  お気遣いありがとうございます笑」
「なんで笑ってるの笑」
「ううん笑」
「ねぇ僕も手伝いたい」
「良いのですか?」
「いつかなぎに作ってあげたいから」
「😳」
「なに?」
「今日はやけに素直ですね」
「そう?」
「麗奈さんに変なもの食べさせられました?」
「食べさせられてないよ笑」
「失礼しました笑」

キッチンへ移動する。

「なぎ、それがほんとの私服?」
「あ!ごめんなさい着替えもせず.....」
「可愛い、似合ってる」
「.....ありがとうございます」
「.....なぎ」
「なんですか?」

僕はなぎの頬にキスをした。

「さっきのお返し」
「.....」
「どうしたの?」
「.....もう!!○○様のばか!!」
「え?」
「これでもめちゃくちゃ我慢してるのに、そんな事されたらもっと好きになっちゃいます!!」
「笑笑  置いてくよ」
「待ってください〜!!」

長い廊下を2人は手を繋いで歩いていた。

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