酔ったら想像以上に大変だった
【櫻の魔法 〜背伸びしていた〜「村山美羽」】
「先輩、これサインお願いします」
どうしてこうなったんだろう......。
「中身は?」
「私の方で確認しときました」
「いつもすまないな」
「いいえ、少しでも休んでください」
「助かるよ......あぁあああ......」
「経費でマッサージチェアとか買っちゃダメなんですかね?」
「買えたらとっくに買ってるよ.....」
「そうですね.....」
「......村山、お酒好き?」
「飲めますけど弱いと思います」
「この後1杯どう?」
「残業代出ますか?」
「あはは笑 そうだな帰りにケーキでどう?」
「へぇ....そんなに易い女に見えてるんですか?」
「参ったな.....笑 俺の負けでいいよ」
「冗談です笑 行きましょ🙂」
「好きな食べ物は?」
「今日は焼き鳥の気分です」
「ちょうど近くにオススメの店があるからそこにしよう」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『いらっしゃいませ〜!』
「予約してた○○です」
『お待ちしておりました。ご案内いたします』
「.....先輩、口説こうとしてます?」
「って事はこういうとこ好きなんだ?」
「.....🙂」
「全く....キミはどこでそんなの習ったんだ.....笑」
『こちらへどうぞ』
「ありがとうございます」
『本日、地鶏の手羽先をオススメさせて頂いております』
「ではそれと日本酒を。軽めですっきりしたものをお願いします」
『かしこまりました。その他ご注文お決まりですか?』
「苦手なものある?」
「いえ、大丈夫だと思います」
「ではおまかせで」
『かしこまりました。ではごゆっくり』
「よろしくお願いします」
「.....いつも来てるんですか?」
「いやいやそんなことは無いよ」
「慣れてらっしゃるので」
「そういう風に魅せてるだけだよ」
「言っちゃうんだ....笑」
「正直な方が好きだろ?」
「さぁ.....?」
「....どう?仕事は慣れてきた?」
「はい....お陰様で」
「そっかそっか.....キミを引き抜いて良かったよ」
「その件は感謝してます」
「随分息苦しそうだったからな」
「.....まぁ」
「でもこっちに来て、伸び伸びやってるのを見ると安心するよ」
「.....助かってます」
『失礼いたします』
「ありがとうございます」
『ごゆっくりどうぞ』
「先輩」
「あぁ....ありがとう」
「.....」
「.....実は結構呑むんじゃ?」
「勉強しただけです」
「ほら村山も」
「.....ありがとうございます」
「お疲れ」
「お疲れ様です」
「.....」
「.....」
「.....どう?いけそう?」
「.....せんぱぁい」
!!!!!?????
「ど、どうした?」
「えぇ〜?なにがれすかぁ〜?」
開いた口が塞がらないってのを初めて体験した。
「えへへ.....せんぱいだぁ〜」
「おい.....しっかりしろ」
「しっかりしてますよぉ」
「一旦水飲め」
「いらないれす.....それよりおさけついでくらさい」
「おいおい.....まじかよ.....」
「せんぱいってわたしのことすきだったりしないれすか?」
「いきなりなんだよ」
「わたしはせんぱいのことすきれすよぉ」
「酔いすぎだって」
「ねぇ○○さぁん」
「なんだ」
「いつもありあとうございます」
「.....」
「せんぱいがいるからおしごとたのしいれす」
「そうかそうか....」
「せんぱいはたのしいれすかぁ?」
「うん、楽しいよ」
「そっかぁ」
普段、スマートに色々こなす村山が目の前でほんわりしながら見つめてくるギャップにやられかけていた。
「せんぱぁい」
「なんだ?」
「んふふ.....せんぱい」
「なんだよ」
「○○さん」
「早く続きを言いなさい」
「○○.....」
「下の名前で呼ぶな」
「みうちゃん」
「.....?」
「よんでくらさい」
「.....みうちゃん」
「やったぁ」
「すみません、1番強いお酒頂いてよろしいですか?」
『かしこまりました』
「ごめん村山.....」
「みうちゃん」
「みうちゃん.....そんなにお酒弱いと思わなくて」
「よわくないれす」
「もしかしていつも無理したのか?」
「.....?」
真顔で僕を見つめ、首を傾げる村山に奇しくもキュンとしてしまった。
「.....かわいい」
「あ〜.....いまかあいいっていいました?」
「あ、いや」
「うれしい.....えへへ」
「なぁ村山」
「なんれすか?」
「今日の事は忘れてやるから一旦帰ろう」
「かえる.....?」
「あぁ.....村山のためにもな」
「ねむたくなってきちゃった....だっこぉ」
「おいおい.....勘弁してくれ.....」