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ママのリップスティック 4話

「ねぇねぇほんとに大丈夫かな?良い子に見える?」

△△くんと付き合って半年が経った。
今日は久しぶりに△△くんのお家に行く。

「大丈夫!もうめっちゃ可愛い!」
「ほんとに〜?」
「天使かと思った」
「言い過ぎ笑」
「ほんとほんと!笑」
「あ〜...何回来ても緊張する.....」
「大丈夫だよ、緊張しなくても笑」
「ちょっと1回、手握って」
「うん」

△△くんの手を握ると自然と心が落ち着く。
彼の優しさがすーっと心を包んでくれる気がする。

「.....落ち着く」
「ハグは?」

ニコニコしながらそうやって優しくするのやめて欲しい...つい甘えちゃう.....。

「.....一応しとく」
「よしよし」

ハグする時はいつも頭を撫でてくれる。

「.....好きだよ」
「僕もだよ〜」
「.....んふふ」
「あ、今ニヤニヤしてるでしょ」
「してないよ.....?笑」

愛で満たされた2人は玄関に着いていた。

「ただいま〜」
「あら〜!理子ちゃん!おかえり!」
「ただいまです」
「『です』要らない!笑」
「ただいま.....笑」
「もう理子ちゃんはうちの子同然なんだから、今日は思う存分△△をこき使って楽にしてね!」

相変わらず△△くんのお母さんは元気だなぁ。

「うるさいなぁ笑  僕の部屋行こ」
「うん笑」
「ごゆっくり〜」

めっちゃ笑顔で手振ってる.....。
△△くんの優しい笑顔はきっとお母さんからなんだろうなぁ.....。

「いつ来ても元気だね笑」
「元気だけが取り柄なとこあるから笑  迷惑じゃない?」
「ううん?嬉しいよ」
「ならいいけど.....じゃあ?」
「じゃあ〜?」
「マリカターイム!」
「今日こそ勝つからね😏」
「勝てるかな〜?」

△△くんはSwitchの準備をしながら続ける。

「パパと特訓したんだから!」
「じゃあ負けたらこちょこちょの刑ね?」
「うっ.....いや、ただのこちょこちょじゃ面白くないから1分間ね?」
「いいの?理子こちょこちょ弱いのに」
「負けないもん!」
「後で痛い目見るぞ〜?」



「り...理子ちゃん.....?笑」
「えへへへ」
「こ、怖いよ.....」

へっへっへっ...勝った.....。

「うりゃあ!」
「あはははは笑  やめて!!もう無理!!!笑」
「ダメだよ!1分間って約束でしょ!!」
「ごめんって!!僕が悪かった!!!」
「まだあと50秒あるよ🙂」
「やだー!!!」
「こら、動いちゃだめ笑笑」

せっかく楽しんでたのにタイマーがうるさく響く。

「はぁ...はぁ...鳴ったよ!!終わり!!」
「ちぇ〜.....」
「はぁ...勘弁してよ.....」
「やだよ、約束は約束だもん笑笑」
「もっかいしよ!」
「お手洗〜い」
「逃げるな!笑」
「後で何回でもやってあげるから!笑」

ありがとね、パパ🤭

「理子ちゃ〜ん」

お手伝いから出ると△△ママに呼ばれた。

「実は理子ちゃんに伝えたい事があってね」
「伝えたいこと?」
「うん。この前、理子ちゃん18歳になったでしょ?まずはおめでとう」
「ありがとう笑」
「でね、いとちゃんと約束した事があったの」
「.....え?ママ?」
「うん、実はいとちゃんと高校からの友達なの」
「.....えぇ!!?」

聞き間違いかと思って記憶を辿っていると、△△ママは棚からアルバムを取り出した。

「ほら見て、こっちが私でこっちがいとちゃん」
「ほんとだ!!うちにある写真のママだ!!」
「そうでしょ?」

△△ママは色んなお母さんの写真を見せてくれた。

「なんの偶然か、うちの息子と理子ちゃんが付き合った時、ほんとにびっくりしたんだから」
「りーも今びっくりしてる.....笑」
「そんないとちゃんから1個、預かってるものがあってね」
「え...なに.....?」
「これ」

渡されたのは手のひらサイズの小さな箱。

「なにこれ.....」
「開けてみて🙂」

慎重に包装紙を外し、中を見るとそこには.....

「え!?リップ!!」
「そのリップはね、いとちゃんが1番好きだったやつなんだ〜」
「見たことあるかも.....」
「どうして1番好きだったか知りたい?」
「知りたい!」
「実はね、理子ちゃんのパパが初めていとちゃんにプレゼントしたのがそのリップなんだよ」
「え!そうなの?」
「うん.....いとちゃんとよく2人で思い出して笑ったなぁ笑」

△△ママは凄く懐かしそうに笑う。

「どうして?」
「だって初めてのプレゼントでリップ選ぶ?笑」
「あ...たしかに.....笑」
「でもね、その話をする時のいとちゃんが毎回、ほんとにほんとに嬉しそうでさ.....」

初めて聞くママとパパの話に自然と目に涙が溜まってくる。

「え...泣いちゃいそう.....笑」
「いいんだよ、我慢しなくても笑」
「うん.....笑」
「いとちゃんがお空に行く前にね『○○くんだけじゃ不安だから理子ちゃんの事よろしく』って頼まれてたの」
「知らなかった...え、ってことはパパとも友達なの.....?」
「うん、高校生の頃から全然変わってない」
「へぇ〜.....」

なぜかは分からないけど、それを聞いた瞬間に私の涙はピークに来ていた。

「もう号泣じゃん笑.....はいティッシュ」
「違うよ.....目にゴミが入っただけ.....笑」
「きっといとちゃんも今頃号泣してるよ...2人ともほんと似てるんだから.....笑」
「△△ママも泣いてるじゃん.....笑」
「うそ!笑  ほんとだ笑  なんでだろうね笑」
「ふふっ.....笑」
「理子〜」

リビングのドアの方を見ると△△くんが立っていた。

「えぇ!?なんで2人とも泣いてんの!!?」
「うるさいなぁ.....女の子には色々あるんだよ」
「なんだそれ.....」
「りーは泣いてないもん」
「うそだ、泣いてるよ笑」
「泣いてない!」
「そっかそっか笑 理子ちゃんは泣いてないよね?」
「.....うん」

頑張って涙を堪える。

「なんなんだこれ.....笑」
「いつか理子ちゃんから聞きなさい😊」
「分かったよ.....」
「△△くん、マリカの続きしよ?」
「よし!次は絶対負けないからね!」
「無理だよ〜笑」
「いいや!理子ちゃん待ってる間に必殺技生み出しちゃったから!」
「なにそれ笑笑」

この時に初めて聞いたママとパパの話を、そのリップを見る度に思い出しては、ちょっとだけ泣いてるのはここだけの秘密。

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