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真昼のプラネタリウム

【櫻の魔法 〜真昼のプラネタリウム〜「大園玲」】
「大園ちゃ〜ん」

授業なんてつまらない、なら大園ちゃんと過ごしたい。

「もう...またサボり?」
「へへっ」
「へへっ、じゃないよ。ちゃんと授業出なきゃダメでしょ?」
「だってめんどくさいし.....」
「ここはサボり場所じゃないんですけど〜」
「ん〜.....あ、胸痛いかも」
「ほんとに?😑」
「ほんとほんと!聴診器で聞いてみてよ。不整脈かも」
「はぁ.....じゃあ服捲りなさい」

大園ちゃんは聴診器を耳に当て、胸の音を聴く。

「はい、正常です。お帰りください」
「いやいや!ちゃんと聴いて!」
「聴きました」
「.....うっ今度は頭がっ!」
「そんな訳ないでしょ」
「うっ.....胃がキリキリする.....」
「それなら保健室じゃどうしようもできないから救急車呼ぼっか」
「待って待って!」
「今度はなんですか」
「お願いします!ベッドでゴロゴロするだけなんで!」

キーンコーンカーンコーン

「はぁもう.....次から授業に出るって約束するならいいよ」
「やったね!」
「まったく.....」

とは言っても暇ではある。

「この銃みたいなのなに?」
「温度計だね」
「え、どうやって使うの?」
「貸して」

僕から温度計を奪って頭に押し当ててくる。

「こうやって.....」
「.....痛いんだけど合ってる?笑」
「ううん、違うよ?笑」
「えぇ.....笑」
「大人しくしてなさいよ」

棚の一番下のダンボールが気になる。

「これ何が入ってんの?」
「なんだっけ」
「開けてみよーっと」

開けてみると中には球体の.....プロジェクター?が入ってた。

「あぁ!懐かしい!」
「なにこれ」
「これプラネタリウムだね」
「え!.....なんで?」
「昔、生徒からプレゼントされたんだよね」
「大人気じゃん」

大園ちゃんは僕の隣にしゃがみ、プラネタリウムを受け取る。

「その子、卒業したら私と付き合いたいとか言ってたのに全っ然関係ない子と付き合っててさ〜」
「まじ?」
「そんなこと言われるの初めてだから期待してた分、結構ショックだったなぁ」
「そっか.....」

俺の前にもそんな奴が.....。

「暇だよね?」
「え?うん」
「観てみる?」
「観たい!」

カーテンを閉めて、延長コードを使って保健室の真ん中に設置する。

「スタート」
「うぃ」

神秘的な音とゆっくり動く星たち。
それが反射して大園ちゃんの眼に綺麗に映っていた。

「私見てどうすんの笑  天井見なよ笑」
「え、あ.....」

言われて見惚れてることに気がついた。

「綺麗だね〜」
「うん.....大園ちゃんって今彼氏とか居ないの?」
「ん〜知りたい?」
「知りたい」
「ふふっ笑」
「え、なんで笑われた?笑」
「ううん笑  そうだな〜じゃああの星の名前言えたらいいよ?」
「え"」

まずぃ.....星の名前なんて全然分かんない.....。
頭を抱えて居たところに助け舟が来る。

『この星はアルタイル』
「!?」「!?」
「あははは笑笑」
「え!?今、これから!?」
「そうだった笑笑  この子喋るんだった笑笑」
「あ!アルタイル!!当てたよ!!」
「いやいや笑笑」

大園ちゃんは腹抱えて笑ってた。

「はぁ笑  いいよ笑  教えてあげても笑」
「っし!」
「って言っても居ないからつまらないよ?」
「.....そっか」
「ちょっと!気まずくなるのやめてよ!笑」
「いや、居ると思ってたから」
「高校生からずっと居ないや」
「高校生から?」
「ちょうど君と同い年くらいの時かなぁ」
「へえ.....」
「あ、そうだ」
「ん?」
「このプラネタリウムあげるよ」
「え?なんで?」
「待って帰るのにはちょっと大きいから」
「置いとけばいいじゃん」
「置いとけないよ、だって11月に異動しなきゃだもん」
「え」
「ほんと困るよね〜、部屋もまだ決まってないし」
「待って、ほんと?」
「嘘言ったって仕方ないでしょ笑」
「.....まじか」
「あ、でもせめて君の卒業式は観たかったなぁ.....」
「観に来てよ!」
「来れないよ、県外だもん」

自分が思ってるよりも何もかもが遠く、諦めようかと思った瞬間さっきの大園ちゃんの話が頭を過ぎる。

「大園ちゃん」
「なに?」
「俺.....先生の事」
「ふふっ笑 お子ちゃまが何言ってんの」
「本気だってば!」
「君もどうせ卒業式の時には他の彼女作ってるよ〜」
「そんなことない!」
「ほんとに〜?」

居ても立っても居られず、そこにあった赤色の輪ゴムを2つ手に取る。

「大園ちゃん手出して」
「どうして?」
「いいから」
「はい.....?」

俺は彼女の手と自分の手にそれぞれ輪ゴムを結んだ。

「これって.....」
「結婚指輪の代わり」
「いやいや笑」
「取らないで!取ったら.....」
「取ったら?」
「.....なんかすっごい不幸になるよ」
「なにそれ笑笑」

大園ちゃんは指輪を見て笑ってた。

「あ〜....おっかし笑」
「俺、本気だから」
「はいはい笑」
「絶対冗談だと思ってんじゃん」
「思うでしょ笑笑」
「じゃあ卒業式の日、迎えに行くから異動先の高校教えてよ」
「ん〜.....じゃあ10月31日にまた保健室おいでよ」
「分かった」
「ただし」
「ただし?」
「それまで一回もサボらないこと」
「.....分かった」
「約束だよ?」
「うん、約束」

大園ちゃんは食べていたチョコを手に取る。

「はぁまったく、笑  チョコ食べる?」
「いいの?」
「指輪のお礼」
「気に入ってんじゃん笑」
「一応貰ったからお返ししなきゃね?」
「いただきます.....」

あの日、玲から貰ったチョコは後にも先にもないほどの甘さだった。

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