大喧嘩した日
⚠️一部不快な表現が含まれます。十分理解してお楽しみ下さい。⚠️
【櫻の魔法 〜大喧嘩した日〜「大園玲」】
○○「だからさ!こっち紐足りてないって!」
櫻坂ちゃんたちとダンスレッスンで、左から玲→唯衣ちゃん→まつり→僕の順に横一列に並んで他の子達もそれぞれで練習してた。
大園「笑笑」
○○「何笑ってんの?まじのやつだからこれ」
大園「はぁ?何キレてんの?」
○○「真面目にやれよ」
大園「もう疲れたんだけど」
○○「まだ30分も経ってないだろ」
大園「こっちは朝から撮影してたんですけど」
松田「ちょっとちょっと喧嘩しないでよ.....」
○○「.....ごめん」
大園「なんでまつの言うことはすぐ聞くの?」
武元「ぞのもほら落ち着いて.....」
大園「唯衣ちゃんは黙ってて」
武元「はい.....」
○○「なんでふざけるやつの言うこと聞かなきゃいけねぇんだよ。へらへらしやがって」
大園「楽しくやればいいじゃん」
○○「楽しくやるつったってやることちゃんとやってからやるもんだろ普通」
大園「普通とかそんなのそっちの要領でしょ?」
○○「はぁ?それに午前撮影だったってそんなのお前だけじゃない、みんなだろ?」
大園「だから休もうって言ってんじゃん」
○○「本番まで時間もないし、そもそもまだ全然出来てないのにいつ休む時間があるんだよ」
大園「前から思ってたんだけど休憩短くない?」
○○「みんなで決めたヤツだろ。今更文句言うな」
大園「みんなってそんとき私居た?」
○○「ふざけんな!!お前サボってただろ!!」
大園「どこにそんな証拠あるの?」
○○「まじで話になんねぇな」
松田「ねぇちょっとほんとにやめて…」
○○「ごめん、まつりみんなに指示出して。1回こいつと話すわ」
大園「話すことなんかない」
○○「練習の邪魔なんだよ」
松田「ちょっとほんとに落ち着いて!○○くんも一旦冷静になって!玲ちゃんも素直になってよ.....」
大園&○○「.....」
武元「.....でも確かに休憩は短いなって」
松田「唯衣ちゃん.....」
○○「あのなぁ.....そう言われてつい3日前にみんなの総意で長くしただろ?」
武元「そうだけど.....」
大園「てか忙しさなんてコロコロ変わるじゃん」
○○「そんなこと言ったらメンバーそれぞれで違うだろ!まつりなんて朝早くから動いてんのに」
松田「私は良いよ.....」
大園「まつもまつでちゃんとしんどいとか言ったら?」
松田「いや.....」
大園「そうやってハッキリしないからこいつも気付かないんでしょ?」
○○「お前、まじでいい加減にしろよ」
松田「ねぇちょっとほんとに」
○○「なんでまつりが弱音吐かないか考えろよ!!」
松田「ねぇ.....」
○○「みんな本番が近くて、それなのに出来てない状況で頑張ってんのにお前だけ辛いみたいな感じ出すなよ」
大園「そんなこと」
○○「出してんだろ!!」
松田「○○くん.....」
○○「分かったよ.....もう出てけ」
武元「ちょっと!」
○○「ふざけるやつ要らねぇんだよ」
大園は走ってスタジオを後にした。
松田「ちょっとさすがに酷いよ.....」
○○「去年からかなり飛躍して、もうこれまでの半端な覚悟じゃこの先伸びていかない.....」
松田「そんなこと.....」
○○「みんなも分かってんじゃないの?」
全員「.....」
○○「もちろん休息だって大事だけど、今はさすがにそれぞれ我慢してくれ。出来てないことはみんなの方が分かってるだろ?その状態でBuddiesの前に立てるの?」
松田「.....みんな10分休憩!」
武元「え、でも.....」
松田「いいでしょ?○○くん」
○○「.....あぁ」
松田「ちょっと来て」
俺とまつりは部屋を出て、給湯室に入る。
松田「ねぇ.....」
○○「.....」
松田「みんな疲弊してるよ?」
○○「でも状況は理解してるだろ?」
松田「そうだけど.....それでもさっきの言い方は良くないよ」
○○「あれは別に俺個人の意見じゃ.....」
松田「そっちじゃなくて玲ちゃんの方」
○○「.....」
松田「いくら2人が幼なじみだからってさっきの言い方じゃみんな萎縮しちゃうでしょ?」
○○「.....ごめん」
松田「たしかにさっきのは玲ちゃんが悪いけど、言い方に気を付けなきゃ.....」
○○「.....」
松田「分かったら気持ち切り替えて、みんなの所に戻って謝って」
○○「.....分かった」
松田「私は玲ちゃんと話してくるから」
○○「頼む.....」
スタジオに戻り、みんなで話し合う。
田村「○○くんの言うように休憩をそんなに取れる状況じゃないって分かってない人が多すぎるかも」
森田「でも出来るかどうかにはそれぞれ差があるから」
守屋「それこそ個人で練習したら良くない?」
藤吉「今大事なのは全体のレベルアップでしょ?」
その間、俺は彼女たちの真剣な顔を一人一人見ていた。
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松田「玲ちゃん」
大園「まつ.....」
楽屋に戻ると玲ちゃんは帰る準備をしていた。
松田「戻ってきて?」
大園「無理だよ.....」
松田「じゃあ話だけでも聞いて?」
大園「.....なに?」
松田「知ってる?○○くん、毎日全体レッスンが終わった後、深夜まで誰かしらの個人レッスンに付き合ってるんだよ?」
大園「え.....」
松田「私たちが他の仕事してる間は普通に事務仕事して午後からは私たちのレッスンしてくれて、それが終わったら次はダンスが苦手な子から頼まれて個人レッスンをして、休みの日は体調不良の子達の様子を見に行って.....この2週間ずっとそれだよ?私たち、この前お休みもらったよね?何してた?」
大園「.....」
松田「その日、たまたま事務所寄らなきゃいけない用事があってレッスン室の前を通ったら○○くん1人で私たちの曲、練習してたよ?しかも全メンバーのポジションを!」
大園「え.....」
松田「ポジションが1つ変わるだけで、どれだけ大変か分かるよね?」
大園「.....」
松田「さすがに声掛けたら『1番しんどいのはみんなだから、せめて相談には答えられないと』って」
大園「.....」
松田「しんどさが人それぞれなのは分かってるけど少なくとも今、1番しんどいのって○○くんじゃないの?ちゃんとありがとうとか言ってる?」
大園「そんなの.....それが仕事なんだから当たり前じゃん」
松田「じゃあ玲ちゃんはできるの?同じこと」
大園「.....」
松田「自分ができないことをやってくれてる人に、さっきの言い方はないでしょ.....」
大園「.....今からでも間に合うかな」
松田「それは玲ちゃんが1番知ってるんじゃない?」
大園「.....」
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○○「じゃあみんなそれで大丈夫?」
全員「はい!」
○○「あとで一応、玲とまつりの意見も聞こう」
全員「はい.....」
スタジオのドアが開く。
○○「玲.....」
松田「○○ちょっと来て.....」
○○「.....みんな2Bから再開で!まつり、お願いね」
松田「うん」
まつりにあとを任して玲とレッスン室を出る。
大園「.....まつから全部聞いた」
○○「.....」
大園「.....今日この後、何人レッスンがあるの?」
○○「.....5人」
大園「だれ?」
○○「森田と小池と石森と大沼と増本」
大園「同時にはできないの?」
○○「できないよ.....それぞれ悩むところもやりたい所も違うからそれぞれの時間を無駄にできない」
大園「無理しないで」
○○「無理なんかしてない」
大園「○○が倒れたらみんな困るじゃん」
○○「本番が終わればしばらく休めるから別にいい」
大園「そうだけど.....」
○○「俺の心配より自分の心配をしてくれ」
大園「.....」
○○「お前、右足少し捻っただろ」
大園「え.....なんで」
○○「どんだけ見てると思ってるんだ.....今日は一旦、家で休んでくれ」
大園「でも.....」
○○「今戻ったって玲も気まずいだろ.....それに足を捻ってるのを見過ごす訳にいかない」
大園「.....」
○○「待ってろ、今マネージャーさん呼んでくるから」
大園「いい!自分で呼ぶから」
○○「.....じゃあ戻るわ」
スタジオのドアノブに手を掛けた時、
大園「ごめんなさい」
○○「.....明日は来れそう?」
大園「うん」
○○「.....ゆっくり休めよ」
大園「.....ごめんね」
○○「ちゃんと来いよ」
玲はこくりと頷き、帰って行った。