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愛を見た

【櫻の魔法 〜愛を見た〜「村山美羽」】
「....どうしたの?こんな朝早くに」

ベランダで独りで空を眺めていた。
下を見ると今から仕事に行くサラリーマンや学校に行く小学生たちが見えた。

「うん.....ちょっとね」

タバコに火をつけようとすると美羽に押さえられる。

「タバコ吸わないで」

美羽の顔をしばらく見つめても意思は変わらなかったため、箱に戻す。

「.....美羽はさ、僕のどこがそんなに好きなわけ?」
「なに急に」
「てかそもそも今も好きなわけ?」
「好きじゃなきゃここに居ないよ」

美羽は後ろから抱きしめてくる。
夏の朝にちょうどいい温かさだった。

「そうか.....」
「.....朝ごはん作ったよ」
「まじ?」
「うん、簡単なやつだけど」
「ありがとう」
「うん」
「.....○○ってね」
「ん?」
「自分が思ってるより優しいよ」
「そんなことないだろ」
「そういう所が好き」
「.....そうか」
「大好き」
「.....」
「私のこと雑に扱うのも好きになりたくないのも理由があるんでしょ?」
「.....ないよ」
「私には分かるよ」
「.....」
「話してくれるまでそばに居るから」
「.....話したあとは?」
「その時はもっとそばに居る」
「これ以上ってなんだよ」
「トイレとかも着いてっちゃう」
「来るな笑」
「お風呂とかも一緒に入っちゃう」
「やめろ」
「起こすときにキスで起こしちゃう」
「今もやってるだろ勝手に」
「だからお別れみたいなこと言わないで」

抱きしめる力が少し強くなった気がした。
僕は回ってる腕を優しくさすった。

「美羽.....」
「.....タバコ吸っていいから」
「早死させたくないんじゃなかったの?」
「分かってるならやめてよ」

箱から1本取り出し、吸おうとする。

「.....吸うの?」
「こっちのライター、あともうちょっとで無くなるんだよね」
「.....」
「だからもしこれが付かなかったらその時は辞める」
「もし付いたら?」
「.....その時考える」
「なにそれ」

何度かボタンをカチカチするもつかない。

「つかないね」
「ううん、ここまではいつも通り」
「.....」
「こっからなんだy」

美羽はタバコを掴んで取り上げ、僕にキスをした。

「.....やっぱりやだ。吸わないで」

ライターは僕の手から落ちて割れてしまった。

「運試しくらい待てよ」
「自分から掴むものだって言ったの○○でしょ」
「.....ふっ笑  そうだな」
「なんで笑うのこっちは真剣なんですけど」
「ううん笑  なんでもない」
「バカにしてる?」
「いいや?どんだけ好きなんだよって思ってね」
「好きだけど」
「朝ごはん何作ったの?」
「フレンチトースト」
「美味しそう」
「好き?フレンチトースト」
「別に」
「何が好きなの?」

ベランダの外を見てるその横顔にきっと愛を見たんだと思う。
今度は僕からキスをしていた。

「.....美羽が作ったご飯」
「.....😳」
「なんだよキスくらいするだろ」
「いや.....別にびっくりしただけ」

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