最期の夏祭り
【櫻の魔法 〜最期の夏祭り〜「大園玲」】
「いらっしゃ〜せ〜!」
「○○.....」
夏祭りの手伝い中、元カノが来た。
「玲.....」
「久しぶり....だね」
「えーっと....」
「あ、えっとたこ焼き8個入りを」
「1個?」
「ううん2つ」
2つ......。
「.....お2つですね」
「お願いします.....」
そりゃ別れて3ヶ月経つんだから新しい人が居たってなんらおかしくない.....。
「今日忙しい?」
「まぁまぁかな」
「手伝い?」
「うん、あいついとこだから」
「そっか....」
付き合ってた頃は無言が1番心地よかったのに別れるだけで1番気まずいものに変わるなんて皮肉だな。
「お待たせしました!」
「ありがとね」
「熱いから気をつけて」
「うん....またね」
「おう....」
付き合ってた頃を思い出す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「見て!」
「え!浴衣!いつ着替えた?」
「○○がパソコンと睨めっこしてる時😑」
「ごめんって....笑」
「今日お祭あるの覚えてた?」
「お....ぼえてた」
「絶対忘れてたじゃん!笑」
「いや!覚えてたよ!」
「うそつき〜😐」
「あはは....笑」
「リンゴ飴と焼きそばとたこ焼き奢りね」
「めっちゃ食べるじゃん」
「その為にお腹空かせたんだから」
「よし、いいよ行こう」
玲の手は夏でも冷たい。
「今日も今日とて冷たいですね」
「ちょうどいいでしょ?」
「ちょうどいい」
「.....ねぇ浴衣どう?」
「あ」
「そうだよね?」
「違うよこれは可愛いすぎ逆に言えなかったパターン」
「傷ついた」
「怒った顔も可愛い!」
「なにそれ笑 そんなんで許されると思ってんの〜?笑」
「あ、やば!信号赤になる!」
「ちょっと!走らないで!靴擦れしちゃう!」
「そしたらおんぶするよ」
「もう.....笑」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この時から確かに意識から玲が外れる時が多くなったせいだろうか......。
考えたってしょうがない。
夏祭りも無事に終わり、撤収作業をしていた。
『○○ありがとな!めっちゃ助かったわ!』
「いや!全然!結構楽しかったわ!」
『来年もやる?』
「就活で死体のままでいいなら」
『そうだったわ笑 あ、そこに余ったジュースあるから持って帰れよ!』
「まじ?助かる!」
『結構あっから2人で分けろよ!!』
「いや.....」
もうすでに車は走り出していた。
「......もう1人なんだよな」
少し浸りたくて他の屋台が片付けするところをラムネを飲みながら眺めていた。
「......やっぱり彼氏居んのかな」
「居ないよ」
「え?」
後ろを向くと玲が立っていた。
「これ、私も貰っていい?」
「いいけど....」
玲はラムネ取って開けようとするも手こずっていた。
「.......?」
「.....貸してみ」
「.......」
「ここじゃなくて.....こうだよ」
「ありがとう.....」
「慣れてない事するから」
「.......だって前まで○○がやってくれたから」
どういう意味だよ....。
「.......元気だった?」
「元気だったけど」
「大学で全然会わないから」
「最近ずっとバイトしてたからな」
「そっか.....」
屋台の片付けの音が響く。
何を話せばいいのか、なんで玲が横に居るのか。
思考能力が暑さで鈍る。
「......友達がね好きな子と上手くいって2人で帰っちゃった」
「....それは災難だったな」
「ううん、嬉しかったの」
そうだ.....玲はこういうやつだった。
「....そっか」
「たこ焼き美味しかったよ」
「俺が作った訳じゃない」
「そっか....」
「....」
「....」
「ねぇ」「なぁ」
「......なに?」
「いいよ玲からで」
「私のはどうでもいい話だから」
「....俺のもそんな感じ」
「......うそつき」
玲は僕にキスをした。
「なにして......」
「そういう所が大嫌いだった」
「....は?」
「なんでいっつも言いたいことはっきり言わないの?」
「いや.....」
「ほらまた.....」
「玲には分かんないだろ」
「分かんないよ!だから教えてほしいの.....何を考えてるのか」
「.....」
「距離を取ろうって言われたら『寂しいな』とか思わないの?」
「それは....もう玲が冷めたんだと」
「なんで勝手に決めつけて終わらせるの?こちとらまだ好きだったんだけど」
「.....ごめん」
「許さない」
「.....どうしたら」
「戻ってきて」
「でも」
「私の事まだ好きなくせに口答えすんな」
掴まれている腕に涙が落ちる。
「.....寂しかったんだから」
「.....ごめん」
「謝って欲しいんじゃないよ....」
「どうしたら」
「いちいち聞くな.....」
「.....玲」
「なn」
分からないなりに出した答えはこれだった。
「.....」
「.....今からでも間に合う?」
「間に合うもなにもずっと好きだってば!もう!」