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甘いVanillaの薫り 前編

『村山先輩!!私と付き合ってください!!』
「あ〜.....ごめんね、タイプじゃないや」
『はぅ...ありがとうございます.....』
「ありがとうございます.....?」

なぜか女の子にはめちゃくちゃモテる。
理由は考えても分かんないから、だいぶ前に考えるのを諦めた。

喫煙所に入り、タバコに火をつけ、2吸いくらいしたところで彼が来た。

「おつかれ〜」
「おつ〜」
「今日も言い寄られてたな」
「うん」
「.....うわ、火ぃ丁度切れたわ」
「.....はい」

タバコとは別に薫る、彼特有のこの匂いに釣られたのが始まりだった。

「.....サンキュー」
「なんか女の子にばっかりモテるんだよね」
「女の子もいけるんだ?」
「分かんない」
「そっか」

彼の興味はタバコにばかり。

「.....興味なさそう」
「一応聞いただけ」
「そっちは?彼女とか」
「つい最近別れたよ」
「そもそも居たんだ」
「うん、向こうからだったんだけど『思ったのと違った』って」
「思ったのと違った.....ねぇ」

たしかに見た目は好青年だからな.....。

「どう?俺ってそんなに裏表ありそう?」
「ここの○○しか知らない」
「まぁたしかに.....互いにどこの学部かも知らねえしな」
「それ」
「なぁそれさ、いつも何吸ってんの?」
「これ?セッター」
「渋いな」
「元彼の影響」
「だいたいそんなもんだよな」
「そっちは?」
「俺はアメスピ」
「ぽいね」
「そう?」
「うん、格好が」
「.....たしかに笑」

蛍光色のパーカーにダボダボパンツ。
いかにもって感じ。

「なんでタバコ始めたの?」
「俺も高校の時の元カノ」
「珍しいね、仲間内とかじゃないんだ」
「これでも当時は純情な可愛い男子だったんだぜ?」
「想像つかないわ.....笑」
「その時付き合ってた人が歳上でさ...22だっけか.....ある夜、顔に煙かけられてさ」
「まじ?」
「あれ、意味あるの知ってる?」
「知ってる.....え、それ高校生の時?」
「うん、そりゃ歪むよね」
「たしかに」
「村山はなんかそういうのある?」
「その元彼以外、みんな吸わない人だったんだよね。だからそういうのないなぁ.....」
「そっか」

火の粉を吸殻入れに落とす。

「そういうのされてみたかったなぁ.....」
「村山ってどんな人がタイプなん?」
「歳上で余裕ある人」
「元彼は?」
「歳上だけど余裕無い人だった」
「ふーん」
「どっかに居ないかな.....歳上で余裕ある人」
「そんなのそこら辺に居んだろ笑  誰か適当に声掛けりゃ捕まるだろ、村山の容姿なら」
「やだよ、見た目で判断する人なんか」
「みんな第一印象は見た目だよ」
「そうだけど.....」

1本吸い終わった彼はいつも2本目に行くんだけど、今日は違った。

「.....あのさ」
「なに?」
「飯行かね?」
「今から?」
「うん、授業ある?」
「ない」
「何か好きなもんある?」
「行くって言ってない」
「嫌とも言ってないだろ?」
「.....ラーメン」
「いいね、近くで上手い店知ってんだ」

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