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焼き餅焼くなら狐色 6話


「梨名〜行くよ〜準備出来た〜?」
「まだ〜待ってや〜」

この時期になると毎年、私達は一緒に花火を観ていた。
いつからか始まった2人の約束。

「早くしてよ」
「なぁなぁどう?」
「どうって」
「浴衣...可愛い?」
「可愛いんじゃない?」
「なんで疑問形なん」
「いいから早くしてよ」
「もう.....」

分かってるけど...可愛いって言われたいじゃん.....。

「.....可愛いよ...別に」

思わず○○を見つめてしまう。

「なんだよ」
「.....いや.....なんでもない」
「喉乾いた、お茶貰うね」
「う、うん」

そんな急に言わんといてよ.....準備してないのに。

「今年、なんか人多くない?」
「なんか今年、イベントで谷口愛季が来るらしくて」
「まじで!?え?女優の?」
「うん。あれ?好きやっけ?」
「昨日、凪s小島さんから見せてもらって可愛いなぁって」

下の名前.....。

「.....ふーん」
「来てるなら観に行きたいなぁ」
「じゃあついでに行こっか」
「うん。あとはいつも通り適当にご飯買っていつもの場所行こ」

○○を追いかけようと1歩前に足をやると、転がっていた石に足を取られて少し捻ってしまう。

それでもどうにか○○に置いてかれたくなくて、我慢して歩き続ける。

「.....うん!」

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時間は少し遡り、3日前。

「梨名〜」
「なに〜」
「えり〜」
「梨名」
「な〜」
「梨名」
「いの〜」
「なんやねん、要件は?」
「今年も行くでしょ?花火」
「え?なぎちゃんは?」
「う〜ん.....」
「なんかあったん?」
「いや.....何かあった訳じゃなくて何も無いんだよね」
「.....ん?どういうこと?」
「何も無いんだよね。付き合って3ヶ月経つけど手すら繋いでない」
「○○が繋ぎに行かんからちゃう?」
「それが1回拒否られちゃってさ.....どういうこと?」
「梨名に聞かれても.....笑」
「告白してきたのあっちだよね?」
「そうやね」
「あれ?話したっけ?」
「え、あ、うん聞いた」
「そうだっけまあいっか。だからどうしようかなって」

危ない危ない

「恥ずかしがってるだけとかじゃない?」
「そうかなぁ.....」
「なぎちゃんと行きいや」
「.....いや梨名と行くわ。それに先約は梨名の方だし」
「え?」
「ちっちゃい頃、毎年行くって約束したじゃん」
「.....いつの話」
「忘れたん?」
「覚えてるけど.....小学生の頃やん」
「泣いて縋って来たくせに」
「はぁ?そんなんしてないし!」
「『○○ぅ...寂しいからずっと居ってぇ.....』とかさ笑」
「言ってない言ってない!絶対言ってない!」
「はい嘘〜覚えてるくせに〜」
「知らんも〜ん」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そんなこと.....もう忘れたよ.....。

「梨名〜何してんの〜?クレープ買うんでしょ〜?」
「待ってよ〜」
「また迷子になるよ?」
「子供扱いせんで!」
「ふっ笑  僕からしたら梨名はまだまだ子供だよ🙂」
「もう!!」

花火の音がする頃には2つの影は周りと滲んだ。

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