コアラのマーチ
【櫻の魔法 〜コアラのマーチ〜「遠藤理子」】
「わっ!」
「うわっ!」
丁度入口に背中を向けており、理子が入ってきたことに気が付かなかった。
「びっくりした.....笑」
「えへへ笑 足どうですか?」
足を骨折して入院している僕を心配してか、毎日お見舞いに来てくれる。
「昨日の夜から歩くのOKが出たんだ〜」
「ほんとですか!良かったぁ.....」
「あ、そうだ」
ベッドから身体を起こそうとすると理子が構える。
「え、ちょっと!大丈夫なんですか!?」
「大丈夫だよ笑 今朝も普通に下のコンビニに行ったから笑」
「無理しないでくださいよ?」
「それよりお菓子買いに行こうよ」
「そんなのりーが買ってきてあげますって」
「ううん、じっとするの苦手だから」
「ん〜.....」
理子は顎に手を置いて悩んだ後、仕方なく僕の肩を支えてくれた。
「お〜、久しぶりのコンビニ〜」
「食べちゃダメなものとかないんですか?」
「うん特にないよ」
「そっかぁ」
理子はしゃがんで下の方にあるお菓子を見ていた。
「理子、最近のオススメある?」
「これ」
渡されたのはコアラのマーチ。
「え?今?笑」
「最近ハマってるんです笑」
「しかも普通の?」
「はい笑」
「じゃあこれ買うか」
「りーが買ってあげます!」
「なんでだよ笑 先輩である僕が払うよ」
「いいですから!」
こうなると理子は譲らなくなる。
「分かったよ.....笑」
普段、僕に奢られてるからよほど嬉しいのだろう。
背中から喜びが滲み出ている。
袋いっぱいのお菓子を買って病室に戻った。
「あ、そういえば椅子.....」
「あ、たしかに...取ってきますね」
「待って」
「はい?」
「ここ座りなよ」
ベッドを指さす。
「いいんですか?」
「うん」
すると何故かベッドから足を下ろしてる、僕の前に座ってくる。
「なんで!?」
「え、座っていいって」
「横にだよ!笑」
「疲れたのでもう立ちたくないです」
そのまま理子はチョコの袋を開ける。
「別にいいけど.....笑」
「あ〜...先輩」
「なに?」
「もしかして...りーのお菓子狙ってますか?」
「狙ってないよ笑」
「食べないでくださいね?」
「食べないって」
「りーは先輩の食べますけど」
こっちに顔を向けてニヤニヤしてる。
「そんな悪い子には.....」
「あははは!!笑 待って待って!!」
「くすぐったいだろ!!」
「ごめんなさい!!許して〜!」
『すみません...他の患者さんも居るので、お静かにお願いします.....笑』
高校生にもなって怒られたのが恥ずかしくて、お互いに顔を合わせて笑う。
「先輩のせいですからね?」
「理子が意地悪なのが悪い」
「あ〜またそうやってりーのせいにして〜.....コアラのマーチ食べちゃうもんね〜」
理子はコアラのマーチを開けた後、僕の口の前にやる。
「お口開けて」
「ん.....ありがと」
「美味しいですか?」
「うん」
「はい」
「え」
さらに口の前に。
「あ〜...」
「...ん」
「.....はい」
「ちょ」
「あ〜...」
「...ん」
「まだ入りそうですね」
「待って待って笑」
「笑笑」
「まだ入ってるから!笑」
「食べてくれないんですか.....?」
「待ってってば.....笑」