部屋の隅、心の表し
【櫻の魔法 〜部屋の隅、心の表し〜「藤吉夏鈴」】
「寂しかった?」
2泊3日の出張から帰ってきたら夏鈴がまた暗い部屋で角に居た。
「別に?」
「嘘つけ。寂しかったくせに」
「1人時間満喫してた」
「絶対嘘や」
「ほんと」
「てかあんた僕が出張から帰ってくる時、毎回暗い部屋で角に居るのやめなって言ったよね?」
「あかんの?」
「怖いやん普通に」
「○○、お腹空いた」
「お昼は?」
「朝から何も食べてない」
「なにしてたん?」
「映画観てた」
「何観たん?」
「さっきまですみっこぐらし観てた」
「こわ」
「怖いとか言わんで」
「急になんで?いっつも血いっぱいのやつしか見やんのに」
「後輩が観ろって」
「どんな後輩や」
「その子とかげって子が好きらしいんやけど、どの子がとかげか分からん」
「観せて」
「テレビつけたらすぐ観れるよ途中やから」
「途中?」
「うん」
「僕が帰ってくる言うたから急いでそこ移動したん?」
「.......してない」
「絶対寂しかったやん」
「寂しくない」
「.......あ、この子ちゃう?」
「どの子?」
「緑の子......この子エビフライやろ?....この子しろくまやろ?.....消去法でこの子ちゃう?」
「そうなんかなぁ.....」
そっと抱きついてくる。
「ほら....絶対寂しかったやん」
「違う....これはなんとなく」
「はいはい」
「ちょっと!動かんといて」
「手とか洗いたいもん」
「洗わんでも綺麗」
「そんなことない」
「ほら綺麗だって」
そう言って抱きついたまま手を握ってくる。
「なにしてんの....」
「....ちょっとだけ寂しかった」
「ほら....嘘つき」
「....お腹空いた」
「近くのラーメン屋さん行く?」
「行く」
「すぐ出れる?」
「出れるよ」
「あれ?そういえばなんか今日可愛いな」
「.....気のせいじゃない?」
「もしかして久しぶりに帰ってくるからオシャレしたとか?」
「そんなんしやんって」
「そっかそっか笑」
「早く行こ」
ラーメン屋に着くまでずっと片手は塞がっていた。