いつまで経っても Epilogue編
※この曲を聴きながら読んでみてください。
【櫻の魔法 〜いつまで経っても Epilogue〜「小島凪紗」】
○○「あ〜...きみ.....」
??「はい!」
○○「なぎを呼んでくれ」
??「えっ...先程先生と出ていかれまして.....」
○○「あぁ分かってる...いいから呼んでくれ.....」
遂に私の身体にもガタ...というものが来てしまった。
○○「.....きみ」
??「はい!」
○○「名前は何じゃったかのう」
??「.....理子です」
○○「理子...そうじゃったそうじゃった...新聞を取ってくれるかのう」
理子「.....分かりました」
もう今日が何日なのかすら新聞を見ないと分からなくなってしまった。
ふと、外が灰色な事に気がつく。
○○「.....外は寒いか?」
理子「え?」
○○「いやなに...しばらく外に出てない気がしてな」
理子「.....寒いです...すごく」
○○「そうか.....」
なぎは暖かい格好をしとるんじゃろうか.....。
??「○○様?」
○○「あぁなぎ!」
凪紗「どうしたんですか?」
○○「すまんな...お前の顔が見たくなって」
なぎはいつも通り私の手を取ってくれる。
昔から変わらない私の最愛の人。
○○「外は寒いか?」
凪紗「えぇ、すごく」
○○「ちゃんと暖かい格好しとるか?」
凪紗「えぇ😊」
○○「そうだ、前にお前にあげたマフラーはどうした?」
凪紗「あれは.....」
私にも分かる少しの間。
○○「.....どうした?」
凪紗「.....今日はたまたま家に忘れたのです」
○○「そうか...それは気の遣えんことを言ったな.....」
凪紗「いいえ...心配してくださり嬉しいです」
○○「.....先生は何と?」
凪紗「.....」
本当は質問なんかせずとも自分の状態くらい、自分が1番分かっておる.....。
ただ今は少しでも長くなぎの声を聴きたくて、自分本意な意地悪をしてしまったんだ。
○○「.....やはりか」
凪紗「え.....?」
○○「.....すまんな、なぎ」
凪紗「○○様.....」
○○「死ぬ時も一生というのは叶わなんだな.....」
凪紗「いえ!!一緒です!!」
○○「そうだな...これもまた一緒か.....」
なぎの手はどんなものよりも暖かい。
生涯、私を支え続けてくれた小さな手。
なのに私よりも遥かに大きく感じる。
全く不思議なもんだな.....。
ふと、なぎの後ろに居る理子が持つ鞄に入っているマフラーが気になる。
○○「きみ.....」
理子「は、はい!」
○○「それ.....」
理子「え.....?」
○○「マフラーかい?」
理子「.....はい」
○○「すごく可愛いマフラーだね...誰かからの贈り物かい?」
理子「.....そうです」
○○「昔、なぎにプレゼントしたマフラーもあんなのだっけか.....」
理子「.....」
凪紗「○○様.....」
看護「○○さん、こんにちは」
○○「こんにちは」
看護「手術に行きますよ〜」
○○「手術?」
看護「えぇ...そっち付いて」
看護「はい!」
凪紗「お願いします」
理子「お願いします!」
何のことか全く分からなかった。
なんで手術を受けるのかも。
ただ、ようやく思い出せたことがあった。
○○「理子...理子...そうか...理子!」
理子「はい.....?」
○○「すまない.....すまない.....」
理子「パパ.....」
○○「どうして今まで.....」
理子「ううん...いいの...大丈夫だから」
○○「ごめん...本当にごめん.....」
凪紗「謝るくらいならちゃんと戻ってきてから感謝を伝えてください」
○○「なぎ.....」
凪紗「理子は私の代わりに毎日来てましたから」
○○「理子.....」
理子「.....ううん」
凪紗「絶対に戻ってきてください」
○○「あぁ.....」
理子「.....パパ!」
理子は私の手を取り、何かを渡した。
理子「おまじない」
○○「.....ありがとう」
凪紗「いってらっしゃい」
○○「久しぶりに聞いた気がするな」
凪紗「えぇ...久しぶりに言いましたから」
○○「そうか.....」
凪紗「.....お願いします」
看護「はい...○○さん動きますよ〜」
なんでこんな大切なことを今の今まで.....。
これが老いなのか...嫌なもんだな...老いるというのは.....。
理子.....。
他人の気持ちを理解して寄り添える人になるようにと、凪紗と一緒に考えに考えた名前。
忘れちゃいけない忘れていたことを急に思い出し始める。
看護「○○さん...大丈夫ですか?」
○○「あぁ...死ぬのってこんなに怖いんだなと.....笑」
看護「.....そうですね」
看護「.....」
○○「こんな死の直前になって娘の事を思い出すなんて.....」
看護「.....約束したじゃないですか」
○○「え?」
看護「凪紗さんと必ず帰ってくるって」
○○「あぁ.....」
看護「約束...守りましょう」
○○「そうですね.....」
○○.....享年80歳。
手術中の心室細動による心肺停止。
最後までマフラーの切れ端を手から離さず。
Fin.