生意気なメイド
【櫻の魔法 〜生意気なメイド〜「村山美羽」】
「ねぇ〜ご主人様ぁ〜」
「なに?」
「今日はどこにも行かないんですかぁ〜?」
「今日は仕事が溜まってるからどこにも出ないよ」
「どこか行きましょうよ」
「お前はサボりたいだけだろ」
「やだなぁ...めちゃくちゃ真面目に働いてますけど」
目の前で堂々とタバコを吸っているメイドが何かほざいてる。
「.....説得力の欠片もないな」
「今は休憩中ですから」
「じゃあなんで僕が灰皿を持ってるんだ」
「それは...えっと...ちょうどそこに居たので」
こいつ.....。
ほぼ寝転んだ状態のままで喋りやがって.....。
「てかそもそも休憩室で吸えよ」
「ご主人様が寂しがるじゃないですか」
「一度でも寂しがったか?」
「寂しがってたじゃないですか」
「いつだよ」
「ほら小さい時『美羽ちゃあああん』って」
「それは...小さい時だろ.....」
「可愛かったのになぁ.....」
「うるさいなぁ...そこの資料取ってくれる?」
「.....」
「おい.....?」
「休憩中」
「こいつ.....」
にこにこしやがって.....。
「休憩終わったら肩くらいなら揉んであげますよ」
「あ〜...そうだな、お願いしようかな」
「任せてください。得意です」
「今日何時までだっけ?」
「19時です」
「予定は?」
「特には」
「そうか.....もうお昼作り始めてるかな?」
「さっき食材買いに行こうとしてました」
「あ、じゃあ連絡し...」
「.....🙂」
「...ます」
「お願いしまーす」
「もしもし?」
「いかがされました?」
「今日この後、美羽を連れて夜まで商談だから僕らの分は作らなくて大丈夫」
「かしこまりました」
「え、いいんですか?」
「今からちょうど出なきゃいけなくなったからな」
「うわ...運転ってことか.....」
「おい、もう休憩終わったんじゃ?」
「あと10秒あるんで」
つくづく生意気だな.....。
「すぐ出ますか?」
ただ、憎めないのは仕事となると完璧すぎるところ。
「あぁ」
「今日は少し暖かいので薄着でも大丈夫かと思われます」
「そっか」
「何着かご用意してますのでお選びください」
「全く...普段からそうならな」
「誠に申し訳ございませんが、そのご要望にはお応え出来かねます🙂」
「.....可愛くないな」
「お褒めの言葉として受け取らせて頂きます」
商談を終え、美羽が待つ車まで戻る。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「ただいま」
「ご主人様を待ってる間に何件かレストランを厳選いたしました」
「助かる」
iPadに何件か用意してあった。
「美羽はどこに行きたい?」
「え?」
「なにか食べたいものは?」
「どうしたんですか.....?」
「そういえば美羽の好きな食べ物知らないなと思って」
「あ〜.....私はお寿司が好きです」
「鮨か.....」
「あ、待ってください」
「ん?」
「私の好きな食べ物ですよね?」
「あぁ.....?」
「ではそちらに向かいます」
「よろしく」
着いたのは普通の回転寿司だった。
「回転寿司.....?」
「はい」
「いいのか?」
「いいんです」
「そうか.....」
「.....よし、勤務終了です」
「タバコは?」
「さっき吸ったので大丈夫です」
「そうか」
「あ、別にご主人様が吸うなら付き合いますよ」
「いや大丈夫」
「は〜い」
席に案内された。
「好きなの頼みな」
「やったぁ」
勤務が終わると急に腑抜けた顔と声になるから、きっとそこでストレスとかを調整してるんだろう。
.....偉いな。
「飲み物どうします?」
「美羽は?」
「私はレモンサワーです」
「じゃあ僕も同じので」
「私の事好きなんですか?」
「なんでそうなるんだよ」
「んふふ笑 冗談です」
何個か注文して2人で食べていた。
「だから恋愛とかはもう全然です」
「そうか」
「あ、お皿もらいますよ」
「ありがとう」
「ここ、ガチャガチャできるから好きなんですよね〜」
ふと、小さい頃のことを思い出す。
「そういえば小さい頃、美羽と来たっけ?」
「え.....」
「そうだよな?」
「覚えててくれたんだ.....」
「あれだろ?僕が家出した時にたまたま休みの美羽と会って」
「ですです。連れていきました」
「懐かしいな.....笑」
「メイド長から連絡来た時びっくりしたんですから」
「ごめん.....でもよく僕の場所が分かったな」
「そりゃ産まれた時から担当してますからね」
渾身のドヤ顔なんだろう.....腹立つ顔だ。
「あの時のおもちゃまだ持ってるよ」
「え!?」
「たぶん小さい頃使ってた部屋にそのまま置いてあると思う」
「私の事大好きじゃないですか笑笑」
「まぁそうだな.....小さい頃は大好きだったな」
「へ.....?」
「小さい頃な?」
「今は?」
「今.....」
そう聞かれると上手く答えられない。
たしかに裏表がないから接しやすいし、変に気も遣ってない。
それに大人しくしてさえいれば、ちゃんと可愛い。
「そうだな笑 嫌いではない」
「なんですかそれ〜笑」
「部屋でタバコ吸うのやめたら好きになるかも」
「じゃあ無理ですね」
「頑張れよ」
「そもそも別に好かれたいと思ってないし〜」
「可愛くないな、ほんと」
「でもこれからもずっと、ご主人様の近くにいますね」
ほんと生意気なメイドだな。