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素直じゃないのはお互いさま

【櫻の魔法 〜素直じゃないのはお互いさま〜「山﨑天」】
「うわぁ......大雨じゃん......」

進路相談で先生と話してたら友達に置いてかれた。
しかも傘忘れたし、職員室の予備の傘も全部出払ったし、八方塞がり。

「この後バイトだから濡れたくないしなぁ.....」
「よっ」

後ろから肩をどつかれた。

「った.....山﨑かよ」
「すっごい嫌そうじゃん」
「めんどくさい奴が来たなって」
「酷くな〜い?」
「はぁ....」
「今帰り?」
「うん」
「なにしてんの?」
「いいだろ別に」

山﨑は俺の両手を見て察したらしい、嫌な顔をしてる。

「入る?笑」
「いらん」
「入りなよほら〜」
「いらんって早くどっか行け」
「なんでいっつもそんなに冷たいの?」
「なんでって....いっつもチビだのなんだのバカにしてくるからだろ!」
「大きい声出すなチビ」
「だから!!あと1センチだろ!!」
「それでもちっちゃいじゃん」
「腹立つこいつ...!」
「じゃあおっ先〜」

スキップで帰ったと思ったら正門の所でわざとらしく止まって傘をフリフリしやがった。

「くそが.....」

仕方なく1回そのまま家に帰って、バイト先には先生との話が伸びたって言い訳するか.....。

「はぁ.....」

一瞬外を出ただけで大粒の雨が降り注ぎダッシュしても意味がないと悟る。

「寒っ......風邪ひいたら山﨑のせいにしてやろ」
「わっ!!」
「うわぁああ!!」

正門を通り掛かる時、急に人が飛び出してくる。

「あははは笑笑  ○○の顔ウケる!!笑笑」
「お前......ふざけやがって」
「え、びしょびしょじゃん、どしたん?笑」

良かったな法律があって。

「傘入る?笑」
「もう遅せぇよ、見て分かれ」

腹立つので大股で歩こうとしたら腕を掴まれる。

「待ってってば!」
「なんだよ」
「そのままじゃ風邪引いちゃうよ?」
「引いたら山﨑のせいにする」
「はぁ?自分が忘れたのが悪いでしょ!」
「うっ.....そうだけど.....」
「いいから入りなって!」
「いいってもう手遅れだし普通に」
「風邪引いたら困るじゃん!」
「.....なにが?」
「教科書誰が見せてくれるの?」
「忘れんなそもそも」
「宿題も誰が答え教えてくれんの?」
「遠藤とかに聞けよ」
「理子、教えてくれないもん!」
「それは遠藤が偉い」
「あと......」
「なに?」
「.......」
「もういい?冷たいんだけど」
「だから!」
「なんだよはっきりしろよ、めんどくさいな」
「寂しいじゃん!弄る相手居ないと!」
「........はぁ?」
「いいから入って!」

強引に俺の手を引き、傘に入れてくる。

「お、おい!お前も濡れるだろ!」
「いいよもう手遅れだし......」

勢いよく手を引っ張ったせいで実質的に山﨑にタックルしてしまい、左半身が濡れていた。

「ごめん.....」
「もうちょっとこっち寄って!濡れちゃう!」

山﨑が逃がさないように腕を組んでくる.....お母さんお母さんお母さんお母さん.....。

「.....そのまま帰れば濡れなかったのに」
「一応私にも良心はあるから」
「.....そうか」
「ねぇ昨日さ、もしかして告白された?」
「う〜わ.....めんどくさ....」
「やっぱり!」
「1番嫌な奴に見られた最悪.....」
「どうするの?」
「どうするも何も断ったけど」
「.....そっか」

体制がしんどかったのか、腕を組み直sお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さん。

「○○ってさなんでその性格でちょっとモテるの?......腹立つんだけど」
「なんでだよ笑  理不尽すぎるだろ」
「なんかムカつく....笑」
「知らね〜よ、そんなもん」
「なにがいいんだか.....」

しばらく無言が続く。

「....そろそろ離してくんね?」
「え!?あ、ごめん!!」

突き飛ばされた。

「ったいな.....」
「ごめんって...つい....笑」
「ったく....」
「....○○ってさ好きな人とか居ないの?」
「なに急にキモイんだけど」
「キモいとか言うな!」
「居ないよ好きな人」
「でも1年の頃、愛季と付き合ってたよね?」
「あれは半ば強制だったけどね」
「どんな人が好きなの?」
「なんだよさっきから」
「別にいいじゃんか....」

前を向いて歩く山﨑の横顔を見ていた。

「.....包容力ある人だよ」
「キモ」
「お前まじで1回くらい殴っても許されるよな?」
「暴力はんたーい」
「.....うちちっちゃい時からお母さん居ないから」
「え、ごめん.....知らなくて」
「別に話すことでもないしな」
「だから?」
「.....まぁたまに寂しいなとか思ったり」
「そっかぁ.....」

いつもみたいにバカにされるかと思って構えたのに違う反応だった。

「ねぇねぇハグしたい?」

..............ん?

「聞いてる?」
「......今なんつった?」
「だからハグする?って.....」
「......なんで?」
「寂しいのかなって」
「いや今は別に」
「ほんとに?」
「うん.....」

山﨑の顔を見るといつものバカにした顔じゃなくて少し焦る。

「一応その.....包容力あると思うんだよね.....」

たしかn......お母さんお母さんお母さんお母さんお母さん。

「.....なに?まじで怖いんだけど」
「いやその.....たまに○○怖い顔してるから」
「山﨑にイラついてんだよ」
「そんなに意地悪してないけどなぁ.....」

まぁたしかにそこまでではない。

「何が言いたいんだ?」
「.....分かってるくせに」
「.....」

コンビニに着いた。

「じゃ、ここまででいいや傘買うし」
「え、ちょっと」
「じゃあな」

離れようとするとまた腕を掴まれる。

「好き!」
「......え?」
「......かも」
「......え?笑」
「......知れない.....笑」
「はぁ?笑  なに自信無くしてんだよ笑」
「いやちょっとさすがにキモいかと思って.....」
「そんなことないよ別に」
「......え?」
「たしかに山﨑包容力あるし」
「.......キモっ」
「よし分かった今から全力で振りかぶってぶん殴るから構えろ!!」
「っしゃこい!!」
「行かねえよバカかよ」
「....おいで」

山﨑は急に真剣な顔で片手を広げる。

「いい加減に」
「私は本気だから」
「.....次はないぞ?」
「大丈夫」

もうバカにされてもいいやって思ってしまった。

「.....来るんじゃん」
「お前が来いって言ったんだろ.....」
「.....どう?落ち着く?」
「.....まぁ」
「.....素直じゃないやつ」

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