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ママのリップスティック 5話 Fin.

【ママのリップスティック「遠藤理子」】5話
「.....こちゃん.....子ちゃん.....理子.....」
「.....ん?」

呼ばれてる気がして目を覚ますと○○くんが居た。

「理子、そろそろメイクとか始まるよ」
「あぁごめん.....寝ちゃってた笑」
「随分幸せそうに寝てたけど、なんか良い夢でも見た?」

○○くんはネクタイを結びながらからかってきた。

「ふふっ笑  高校生の頃の夢見てた笑」
「そっか笑」

大人になってもまだ鏡を見ながらネクタイを結ぶ○○くんをいつも見てるのに、この日はなんだかすごく新鮮に思えた。

「あ、そういえば結局あの日なんで泣いてたの?」
「ん?どの日?」
「うちの母さんと理子が2人して泣いてた日」
「あぁ笑  あの日ね笑  もうすぐ分かるよ」
「そう?」
『失礼いたします、遠藤さんメイクのお時間です』

ドアの方を向くとスーツの女性の方が立っていた。

「ありがとうございます!旦那も連れていいですか?」
『ええ、もちろんでございます』
「○○くん一緒に来て」
「うん.....?」

少し長い廊下を進む度に増す緊張をスタッフの方が解してくれる。

『どんな感じで仕上げたいとかありますか?』
「特になくて.....ドレスに似合うものなら良いなって」
『かしこまりました、お任せ下さい』
「あ、1個だけ絶対に使ってほしいものがあって」
『使ってほしいものですか?』

カバンの中からこの日まで大切に取っておいたそれを取り出す。

「はい、このリップなんですけど.....」
『え!可愛いリップですね!』
「亡くなった母からの最後のプレゼントなんです」
「えっ」
『それは.....ぜひ使いましょう😊』
「.....もしかしてそういうこと?」
「解った?笑」
「たぶん.....?」

このリップを持つとママとの思い出がちょっとずつ頭に浮かぶ。

「.....このリップをあの日、○○ママから貰ったの」
「そういうことだったんだ.....今まで使わなかったの?」
「大切な時に使いたくて🙂」
「そっ...か.....」

静かになったと思ったら鼻を啜る音が聞こえてくる。

「えぇ!?なんでもう泣いてるの!!?」
「いや.....泣いてない」
「涙、落ちてるから!!笑」
『旦那さんティッシュです』
「ありがとうございます.....」
「ほんと涙脆いなぁ.....笑」
「これは泣くよ.....」
「泣いてないんじゃなかったの?笑」
「あ.....いや泣いてないよ?」

スタッフさんと、彼の素直につい笑ってしまう。

控え室でメイクしてもらっていると遠くから足音が近づいてくる。

「理子ぉおおおお!!!」
「パパ!!?」
「ついにこの日が来ちゃったんだね......」

鏡越しに大の大人がぐちゃぐちゃの顔で泣いていた。

「ねぇ笑  なんでもう泣いてんの.....?笑笑」
「お義父さん.....」
「2人して泣かないでよ.....笑」
「もうほんと君たちは涙脆いなぁ」

パパの後ろからもう1人の大切な人の声が聞こえる。

「○○ママ!!」
「うるさいなぁ.....母さんも泣いてるじゃないか」
「釣られたんだよ.....笑」
「ねぇみんな泣かないでよ.....笑」
『遠藤さん、泣いたらメイク出来ないです笑』

このカオスな状況にスタッフさんも思わず笑っていた。

「泣いてないです!笑  もうみんなが泣くからメイクさん困っちゃってるじゃん!!笑」
「ごめんなさい....気まずいですよね.....笑」
『いえ!大丈夫です!!笑  時間はまだあるのでもうちょっと後にしましょうか?』
「そうします.....笑」
『かしこまりました笑  ぜひこの空間を楽しんでください😊』
「すみません.....笑」


ほんとにこの人達は.....。
みんなして涙脆いから大変.....。

結局時間ギリギリまでスタッフさんをお待たせしてしまった。

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そして.....。

『早速皆様の元へとお迎えしたいと思いますが、お二人のお顔が見えましたら皆様どうぞ大きな拍手でお迎えください。また、カメラをお持ちの方はどうぞご準備くださいませ。それでは入場口にご注目ください』
「理子」
「ん?」
「大丈夫だよ」

○○くんは私の手を取り、その温かい手で優しく包み込む。

「ふふっ笑  やっぱり落ち着く」
「緊張ほぐれた?」
「○○くんの方が緊張してるんじゃない?笑」
「やめてよ笑 してるんだから笑」
「ほら笑」
「笑笑」


『新郎新婦入場です!!』


Fin.

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