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ラヴェルの全作品を年代順に聴く⑵ 1901〜06年
今回は1901〜1906年、ラヴェルが26歳から31歳の間に作曲された13曲を聴いていきましょう。
【このシリーズの一覧】
ラヴェルの全作品を年代順に聴く⑴
ラヴェルの全作品を年代順に聴く⑵ 👈
ラヴェルの全作品を年代順に聴く⑶
ラヴェルの全作品を年代順に聴く⑷
ラヴェルの全作品を年代順に聴く⑸
このシリーズでは、近代フランスの作曲家、モーリス・ラヴェルの全作品を作曲年順に聴いていきます。
作品一覧としてもご活用ください♪
参考文献はこちらです。
1901年
♪水の戯れ (ピアノ曲)
Jeux d'eau
…きらめく不協和音、ソナタ形式を模した構成、そして「噴水」の描写力は独創性にあふれており、
ピアノ曲の傑作として多くの人の心を魅了している作品です。
しかし初演から好評だった《♪亡き王女のためのパヴァーヌ》に比べると先鋭的すぎる作品だったため、作曲当時はイマイチな評判だったそうです…。
パヴァーヌと同じ日に、幼馴染みのピアニスト、リカルド・ビニェスによって初演されました。
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【リカルド・ビニェス】
スペインのカタルーニャ出身で、ラヴェルの幼なじみの凄腕ピアニストです。
ラヴェルの《♪夜のガスパール》までの作品や、ドビュッシーの《♪版画》などの初演も行いました。
とても気さくで社交的な人物だったらしく、作曲家のアルベニスやグラナドス、画家のオディロン・ルドンなどとも親交を結びました。
1902年
♪アルシオーヌ(ローマ賞作品)
Alcyone
…保守的な審査員を満足させるためにラヴェル自身の独創性を削ったため、よくありそうなロマン派風の曲に仕上がっています。
【ローマ賞】
ラヴェルは1900年から1905年まで、若手作曲家の登竜門だったローマ賞に応募していました。
ローマ賞はフランスの国家的な芸術賞で、作曲のほかにも絵画や建築などの部門がありました。
ドビュッシーなども第1位を取り、第1位の副賞としては、2年間のイタリア留学や、奨学金などが付与されていました。
この作曲賞では保守的な作品が好まれたため、サティやシャブリエといった革新的な作風を目指していたラヴェルとは相性が悪く、
1901年の第3位が最高位で、最後まで1等を取ることができませんでした。
(それに当時のパリ音楽院の院長から、ラヴェルはかなり嫌われていたそうです🥺)
1903年
♪弦楽四重奏曲
Quatuor
…室内楽曲の前作《♪ヴァイオリンとピアノのためのソナタ》に比べると、作曲手腕がかなり進化しています。
優しく柔和で、繊細かつ華麗な曲調です。
またこの曲は《♪水の戯れ》とともに『親愛なる我が師ガブリエル・フォーレへ』と献呈されています。
♪アリッサ(ローマ賞作品)
Alyssa
…アルシオーヌもそうですが、「この曲ってラヴェルなんだ」と驚いてしまうほど、《♪水の戯れ》や《♪弦楽四重奏曲》と曲のテイストが異なっています。
1904年
♪花のマント (歌曲)
Manteau de fleurs
…「取るに足らないテキスト(詩)なため凡庸な作品」と評されていますが、
晩年ラヴェル 自身の手で管弦楽版へと編曲されているので、思い入れがあった曲なのではないかと想像できます。
♪シェエラザード (歌曲)
Shéhérazade
…トリスタン・クラングゾルの詩による歌曲で、
当時流行していた東洋趣味や、詩の絵画的な描写に魅せられたラヴェルの「新鮮な若さ」が感じられる作品です。
♪メヌエット嬰ハ短調 (ピアノ曲)
Menuet
…2007年に楽譜が出版されたため、CDや楽譜の全集に載っていないことも多い曲です。
シンプルで美しい小品です。
1905年
1905年のローマ賞では、ラヴェル事件が勃発しました。
【ラヴェル事件】
1905年のローマ賞でラヴェルが予選落ちしたことで、審査員の不正が疑われた事件です。
新聞記事にもなり、当時のパリ音楽院の院長が辞任する事態に発展しました。
(後任としてフォーレが新院長となり、ローマ賞の審査制度の改革を行いました。)
しかし当時のラヴェルの答案を見てみると、故意に禁則を破っていると見られる箇所があったりと、まじめにローマ賞試験に取り組んでいたのかは疑わしいといいます。
真実はわかりようもありませんが、この事件がラヴェルの1つの転換点となり、より一層作曲家として有名になったことは間違いありません。
♪ソナチネ (ピアノ曲)
Sonatine
…題名のとおり、古典的なソナタ形式を用いて作曲されており、
ラヴェルが古典派の時代の、構造的な明快さや優雅な作風を好んでいたことがわかります。
(曲自体は、和声法が近代的だったり変拍子が使われていたりと、20世紀になってからの作曲法で書かれています。)
友人で、サロンをよく主催していたゴデブスキ夫妻に献呈されています。
(ちなみに夫妻の子どもたちにはピアノ連弾曲の《♪マ・メール・ロワ》が献呈されています。)
♪鏡 (ピアノ曲)
Miroirs
♪1.夜蛾
♪2.悲しい鳥たち (ビニェスへ献呈)
♪4.道化師の朝の歌 (カルヴォコレッシへ献呈)
…全5曲あり、それぞれの曲が芸術サークル「アパッシュ(荒くれ者)」のメンバーに捧げられています。
ドビュッシーの影響が感じられますが、鋭い不協和音と、堅固な構成がラヴェルらしさを感じさせる作品です。
第3曲の《♪洋上の小舟》と第4曲の《♪道化師の朝の歌》は、のちに管弦楽版に編曲されています。
★洋上の小舟
★道化師の朝の歌
♪序奏とアレグロ (弦楽四重奏、フルート、クラリネットを伴うハープのための)
Introduction et Allegro
…小型のハープ協奏曲のような作品で、上品さとものうげな官能性が感じられ、
またラヴェルの色彩的な楽器使いが見てとれる楽曲です。
この曲を大急ぎで完成させた後、友人たちとローマ賞の傷心ヨット旅行へと向ったのだそうです⛵️
1906年
♪5つのギリシャ民謡 (歌曲)
Cinq mélodies populaires grecques
…アパッシュのメンバーの1人で、詩人でギリシャ出身のカルヴォコレッシと協力して作曲されました。
1曲が短く、各曲の表情がはっきりとしているため、ラヴェルの歌曲の中では比較的演奏頻度の高い作品だと思います。
♪おもちゃのクリスマス (歌曲)
Noël des jouets
…高音部でのピアノ伴奏がとてもかわいらしく、純粋な子どもの世界に惹かれていたラヴェルの姿が垣間見える曲です。
♪博物誌 (歌曲)
Histoires Naturelles
…小説『にんじん』が代表作のジュール・ルナールの同名詩集による歌曲です。
詩の語法が今までにない特殊なものだったので、発表当初はかなり物議を醸したといいますが、
現在では、フランス歌曲に独創的な貢献をした作品だと認められています。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
ラヴェルの全作品を年代順に聴く⑶に続きます🎶
さくら舞🌸
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