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誰かのメインキャスト

今期のドラマ、私には「ブラッシュアップライフ」が一番面白い。あー面白い面白いと見終わったあとで、(今の記憶を持ったままの)人生の2周目3周目がない(だろう)私は、今生を悔いなく生きなきゃなーと思う。でも「悔いなく」って、具体的にどうしたものか。最期になっても「もういいや」って思えない悔いってどんなものだろう。それを思いつくことのできない自分が歯痒い。せいぜい徳を積んで、来世も人間になれるように頑張るしかない。

来世といえば、「初めて会ったのに、なんだか親しみを感じる人」というのは、前世でも何かしらの関わりがあり、親しかった人だ」…なんて、何かに書いてあった話を、私は密かに信じている。信じているって言ったって、なんとなーく「そうだったらいいな」くらいの話なので心配しないでほしい。

ドラマや舞台じゃないけど、自分の人生に関わる登場人物は、前世も今も来世も変わらない。ただその「役」が変わるだけ、とかなんとかいう話だったと思う。たとえば可愛い愛犬、前世では恋人だったとか?

なーんてことを電車の中で書いていたら、乗り換え駅で降り損いそうになった。危ない危ない。降りなかったら、この先の人生が変わっていたかもしれない。…とはいえ、世の中には逆に、たまたま降りなかったからこそ遭わずに済む災難もあったりするわけだから、人生、先のことは読めない。

隣に座っている男性は、私の横の空間に荷物をどさっと置いて、その上、足を組んで座っている。私には縁もゆかりもないが、この人も、誰かにとってはメインキャストだ。必死に覗き込んでいるスマホの画面は地図アプリらしい。「荷物を置きやがってー、足を組みやがってー」と思っている私の隣で、彼は彼の人生を生きて、彼を待つ人のいるどこかへ向かっている。

「神田」を出たあたりで足を組むのをやめた。よしよし。次の「東京」が近づいて荷物を膝に乗せた。よしよし、混んでくるからね。そして「東京」を出たところでまた、荷物を隣の席に下ろした。一瞬「は?」と思ったけど、次の「浜松町」で降りるんだからいいじゃん? だったんだろう。案の定、浜松町で降りて、スマホを見ながらホームを歩いて行った。

私が知る彼の人生はそこまで。
来世もまた、ちょい役で登場するんだろうか。