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アイドルが与える影響の連鎖ー正源司陽子のきっかけに見るアイドルの役割

アイドルを志す理由というのは、人それぞれである。
ただその中に、偶々見たアイドルのパフォーマンスに衝撃を受けた、というものも結構散見される。

それは、AKB48かもしれない。
それは、乃木坂46かもしれない。

特に欅坂46一期生がオーディションに応募したきっかけは、乃木坂46に憧れて、というものが結構多かった気がする。坂道シリーズ第2弾、ということで集められた一期生なので、当然と言えば当然だ。

そしてそんな欅坂46は、当初乃木坂と同じ路線を走ると思われていたものの、秋元康がつけた方向性は、かつて存在したことのない、唯一無二のグループとして進む道であった。

これは何度も過去のブログなりnoteなりで言っていることではあるが、私はもともとアイドルファンではない。

欅坂46だからこそ好きになった、アイドルのことは全くと言っていいほど知らない人間であった。他のグループのアイドル文化も、全く知らない。今でも、他界隈のことは、正直よくわからない。

欅坂がああいう方向性、人間のダークな部分に焦点を当て、そこに寄り添うという唯一無二性を発揮したことが、私を惹きつけた最大の理由だった。夢を与える、というのがアイドルの使命という既成概念を叩き壊し、誰しもが持っている闇の部分をクローズアップさせ、そこに寄り添うことで共感を得た。
魂を揺さぶることに特化したのが、欅坂だった。

平手友梨奈をセンターに据え、彼女だけではない、その全体的な世界から醸し出される雰囲気。欅坂にしか表現できないと言わしめた独特のステージング。しかもそれがただ外観を整えるだけでなく、魂を入れることで見る人の心に訴える。彼女たちがよく言う「楽曲を届ける」というのは、受け手である私たちの心に届ける、ということなのだと私は理解している。

当然、そんな既存のアイドル像と一線を画す欅坂への風当たりもまた、強かった。私が見て感じていたのは、その風当たりはどこからやってきていたかというと、おそらくそれまでのアイドル文化を是とする人たち、アイドルとはキラキラ輝いて、その笑顔で夢を見させるという、そんな文化のみがアイドルであると思っている人たちからが多かったと記憶している。

真反対の欅坂が、しかも世間でムーヴメントを起こす。彼ら既存のアイドルを応援する人たちにとっては脅威だったのだろう。アイドルの概念を壊されることへ怖さもあったのではないかと想像する。だからこそ、欅坂はどうしても潰さなければならない、そうでなければ、今までのアイドルそのものが否定されてしまう、という悲壮感すらあったのかもしれない。

でも、もしそうであるならばそうであるほど、欅坂の起こしたムーヴメントは「本物」であったと言わざるを得ない。

笑顔満開で夢を見させてくれるのもアイドルであれば、辛いとき苦しいときに隣にいてその痛みを背負ってあげようとするアイドルがいてもいい。人間、綺麗事だけで人生を進めることはできない。否、綺麗事や帳尻でうまくいかない場面の方が圧倒的に多い。
そんな場面に出会したとき、乃木坂に救いを求めるか、欅坂に救いを求めるか。
そのどちらかが正解で、どちらかが間違いとどうやって決められるのか。

いつもながら前置きが長くなったが、そんな欅坂のパフォーマンスを見て衝撃を受け、そのままアイドルを志すようになった人がいる。

日向坂46四期生・正源司陽子だ。

アイドルを志したきっかけは、音楽だった。3歳からピアノを始め、中高は吹奏楽部でフルートを担当。「音楽は私の一部です」。小6だった18年末の「NHK紅白歌合戦」、欅坂46(現櫻坂46)「ガラスを割れ!」のパフォーマンスを見て心が動いた。「衣装も雰囲気も曲調も、概念を正面からぶっ壊されました。あの衝撃は忘れられません」と強くうなずいた。
「坂道」グループに興味を持ち、曲を聞くようになった。昨年2月、乃木坂46に加入した5期生を見て「キラキラしていて憧れました。そんな時、姉が食事中に『日向坂46がオーディションやってるよ』って言ってくれて」。人生初のオーディション挑戦を決意した。
『坂道の火曜日』2023年3月21日付より


彼女が目にしたという2018紅白の欅坂は、平手友梨奈不在の回だった。小林由依がセンターを務め、平手センターとは少し色を異にして仕上げ、平手がいなくても「楽曲を届ける」ことができるのだという自分たちの自信にしたかったパフォーマンスだったのではないかと捉えている。

もしそうだとすれば、少なくとも正源司陽子という、スター性を兼ね備えた当時の小学生の目に留まり、衝撃を与えた、つまり「楽曲を届けた」ということだけは、紛れもない事実である。
人々がたとえ欅坂に対してどう思おうが、厳然たる事実なのだからこればかりは歪めようがない。

彼女が坂道に興味を抱いたきっかけが、平手友梨奈のいない欅坂の「ガラスを割れ!」であったのだ。

既存のアイドルを、アイドルとして位置付ける。それはもちろんそれで構わない。その文化を私ごときが否定できるわけはない。
ただその一方で、欅坂のような寄り添い方をするグループを、アイドルとして認めない、という了見の狭さというか、原理主義的傾向に対しては全力で抗いたい。

アイドル文化というものを、一歩引いたところから見ていた人間として、その多様性が認められないという物事の見方そのものが危険ではないかと言いたいのである。
アイドルとして輝くことが、たった一つの方法論しかないわけがないだろう。
彼女たちが志すきっかけが様々であるように、私たちに対する寄り添い方も様々でいい。事実、欅坂に救われたという人は本当にたくさんいる。
私が教えている中にも、そんなことを訴えてくれる生徒がいた。それも一人や二人ではない。

欅坂を見て衝撃を受け、乃木坂5期生を見て憧れ、日向坂のオーディションを受ける。

そして、今がある。

正源司陽子は、そういう意味で坂道の遺伝子を全て備えるメンバーなのかもしれない。

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川島 雅隆(かわしま まさたか)
noteの中でも、櫻坂46・日向坂46に特化した内容ですので、特に二つのグループの推し活を経て、皆様に文章で還元できるよう努めてまいります! よろしければサポートをお願い致します。