
過去も現在も、未来さえ飲み込んで前へー櫻坂46、6thシングルをツアーファイナルで初披露
櫻坂46の6thシングル「Start over!」の評判がすこぶるいい。
MVの爆発力が、おそらく相当多くのBuddiesが待ち望んだ、ゴリゴリに攻める曲だったというのも大きい。
MVが解禁になって、再生回数が櫻坂表題MV史上最速で100万回を超える。どう見ても、この曲の持つ鬱屈した何かを破壊する力が表に出たとしか、説明のしようがない。
他の表題曲には、もちろんそれぞれの良さがある。
その良さを十分堪能したうえで、今この場所にいる。
ただ、意識無意識に関わらず、人々が櫻坂46に求めていたものとピタリと嵌まった。その結果以外に何があるというのだろう。
2023年6月1日。大阪城ホール。

櫻坂のツアーファイナル。福岡、神奈川、そして大阪と参戦した私ではあるけれど、昨年もそうだったが、回を追うごとにパフォーマンスの質が変わっていくのがわかる。本人たちが意識しているのか否かは定かでないものの、そしてどこがどう、ということが確実には言えないものの、何かが違う。そのことが大いに嬉しかった。
例えば、「Nobody's fault」は生き物だ。
参戦した三会場ともに、違った顔を見せてくれた。
森田ひかるの覇王色、という話は私もよくするのだけれど、今や伝説となった二期生おもてなし会を非常に近い位置で見ながら、あれだけ小さい体なのに、どうしてあんなに大きく見えるんだろうととても不思議だった。それは、5年近く経った今でも思う。ノバフォはいつ見てもその思いに駆られる。思えば、そのときからすでに、森田ひかるは覇王色を纏っていたのかもしれない。
るんちゃんももちろんだけど、おそらくそんな彼女を守るように配置されているメンバーのパフォーマンスが底上げされていることが最も大きな要因かもしれない。
全てのレベルが上がっているからこその、違う顔。
三期生パートなど、その成長が顕著だ。
「夏の近道」のパフォーマンス力の凄まじさ、しかもそれが徐々に上がっていく。間奏の疾走感がたまらなく好きだった。
彼女たちがおそらく表題に参加することになる7thは、一体櫻坂本体に何をもたらしてくれるのだろうか、とは思いつつ、そこに考えを至らせるのは流石に早すぎるなと思い直し。
さらに「Dead end」である。村井優センターのこの曲を三回聴いたことになるけれど、その度に、あれだけアイドルとは全く無関係の世界線で生きていた女の子が、運命に導かれた結果、アイドルグループのセンターに立ち、煽りまでやっている。人生は何が起きるかわからない、とよく言うけれど、運命の歯車は勝手に回っているわけではなくて、何らかの必然性があるのではないかとつくづく思う。
村井優は、櫻坂三期生のセンターに立つ、必然性があった。
偶然などという不確定要素100%の言葉よりも、そう思う方が未来に希望が持てる、というものだ。
もちろんそれは彼女だけではない。
三期生全員、そこにいなければいけない「理由」があった___
そう考えた方が自然である。
5月25日に初披露された、スペシャルBANもそうだ。
もはやこれは相乗効果という言葉しか浮かばない。
先輩と共にパフォーマンスする三期生は、生半可なものを見せられないというプレッシャーがレベルアップを余儀なくさせ、そんな彼女たちの後に、まるでご本人登場のように、森田ひかる率いる本家BAN表題メンバーが登場する。
「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」ではないけれど、運営が与えた高い課題ということ以上に、彼女たちの前にその壁となって立ちはだかる先輩陣、という印象だった。三期生にとっては、今までに一体何度踊ったかわからないこの曲。自分たちでは最高のものに仕上げたつもりなのに、簡単に自分たちを越えさせないとばかりにそこにいる。
これも、実は勝負だったのかもしれない。
そして、これが相乗効果をもたらす。
…などといろんなことを考えながらステージを見て、モニタを見て、ペンライトを振って、「魂のLiar」ではクラップをしつつ、ずっと頭の片隅にあるのは、やはり「あの曲」のことだった。
ファイナル大阪二日間。もしかしたら初日に披露があるかもしれない、と私は考えていた。あの運営さん、節目に何かを仕掛ける、というわけではないから、変数はずっと変数のままなのだ。読めない。何を仕掛けてくるかわからない。いや、だからこそ楽しい、というのももちろんあるけれど。
2週連続で水木両日を休みにすることはさすがにできず、木曜だけにとどめた。本当のファイナルは諦められない。だから、大阪初日を泣く泣く手放した。
その初日、結果として6th初披露はなかった。
それにしてもこれは、巧妙に仕組まれた「罠」である。
おそらく「Start over!」、結構前にできていたのではないかと私は思っている。全て逆算。発売日がまず設定され、その後MV解禁日はここを目標にしよう、そのためにはこの日までにMVを撮り終えよう、だったらツアー日程もここを少し開けて振り入れさせよう、となるとメンバーにフォーメーションを伝えるのはこの日…などなど。
ビジネスにおいて、こういう決め事は逆算で設定されると聞いたことがある。
つまり、初めからツアーラストで6thが披露される予定だったのではないか。なんならそこから全てがスタートしていたのではないかとさえ思える。もしこの仮説が正しいなら、全てのBuddiesが最も虜になるための最善の手段を置いたことになる。言葉を換えればまさに「罠」である。
そしてこんな幸せな「罠」がこの世にあるだろうか。
5/23(火) 6thリリース発表
5/28(日) 冠番組における6thフォーメーション発表
5/30(火) 6thMV解禁
6/1(木) 6th初の生披露
このスピード感。たまらない。
これもおそらくであるが、ここまで用意周到なスケジュールは、制作側に絶対の自信がなければできることではない。必ずや世間を揺り動かしてやる。その気合と自信を強く強く感じるのだ。
つまり、勝ちに行く。
ツアー本編。守屋麗奈による「桜月」の、麗しくも優しい、そして強さも感じさせる世界が「Thank you Osaka」の文字で締め括られる。

鳴り止まない拍手。
5th期間。れなぁへの労いと感謝の拍手だったように思える。
私は忘れていない。
彼女が5thフォーメーション発表のとき「こういう櫻坂もあるんだぞというところを見せたい」と言っていたこと。そして、本当にその言葉どおりの5th期間だったこと。櫻坂の可憐な部分、その代表格として表に立つプレッシャーたるや、私たちの想像できる域ではない。でもそれを、涼しい顔して乗り切ってくれたあなたには感謝と尊敬の気持ちしかない。
暗転。
声出しができるようになったことを、実感する瞬間が、本当の意味でのアンコールを求めることができる、このとき。
そして。
自分の客席後方で悲鳴が聞こえた
— 🌸🎨🧢🏦 川 島 雅 隆 ◢͟│⁴⁶ 🌳🐴🗒☀️ (@hiroty0526) June 1, 2023
Start overだと気づいたんだろう
そして、ベース音
さらに、誰かの息遣い
モニタに映し出されたセンターは、すでに泣きそう苦しそう
これは…あの頃だ
誰かに手を取られて、あの頃に引き戻された
緑のペンライトに染まった、あの頃に#櫻坂46_Startover #藤吉夏鈴 pic.twitter.com/kyAQU6jYkM
もはや、寝ても覚めてもあの瞬間だ。
ヤバい。
私はあまり「ヤバい」などという言葉を使うことはないのだが、もうそれでしか表現できないほどヤバいのだ。
ほぼ間違いなく、来るとわかっている曲。わかっているのに、いざ目の前にその光景が現れると、心拍数が上がらずにいられない。
藤吉夏鈴。
普段は決して、目立つ場所に立とうとせず、全体を俯瞰できる位置にいるイメージ。その表現力が爆発したときは、おそらくどの場所にいようが目で追うことをやめたくない。夏鈴ちゃん推しの皆様の気持ちは、とてもよくわかるのである。
MVでも感じたけれど、生パフォーマンスはさらによくわかる。
もはやオマージュかと思えるほど、既視感の連続。
欅坂を経験した人たちでなければ出せない空気感だ。
それらも含めて、全てが櫻坂46を構成する一要素なのだ。
そして、ここにこんな6thCMが来た。
6th Single“Start over!”
— 櫻坂46 (@sakurazaka46) June 4, 2023
Jacket Artwork
6.5 10:00JST#櫻坂46_Startover#櫻坂46https://t.co/hr6YysvYFo pic.twitter.com/fFd3BdcRaL
現在、この瞬間を全力で生きること。
過去も未来も関係ない。
一瞬一瞬を最高到達点にするには、それしかない。
それにしても、MV以上に、ステージの上の藤吉夏鈴は圧巻だった。
解き放たれた、という表現が正しいのかどうか。
あれだけの表現力がありながら、そしてその片鱗はしっかりと見せてきながら、「なぜ恋」も「偶然の答え」も、センターが藤吉夏鈴でなければ考えられないものを提供しておきながら、実はまだ何かを隠し持っている雰囲気も漂わせてここまできた。そんな思いがする。
ある意味で、モヤついていた。
そこにどんな事情があったかは知らない。知る由もない。
でもそんな彼女が、醸し出していたものを一気に弾けさせたのがこの曲で、それは彼女自身が望んでいたことと信じられるし、彼女を推す人だけでなく、彼女のことをずっと見てきている人の多くが望んでいたことだと私は思っている。
櫻坂のメンバーは、全員が強い。それは間違いない。
でも、どこかで必要になってくるはずの、グループをもう一段高みに連れていける爆発力を持つメンバーは、そんなに多いはずがない。
起爆剤。
そこに託したのだろうと。
このあと、MCを挟んで「Buddies」だったのだが、夏鈴ちゃんがいない。彼女の歌割りのところに声がない。そこで初めて気づいた。
そりゃ、パワーを消耗するのは当然だ。あの曲では。
そしてその後、最後のMC時にステージに戻った藤吉夏鈴は、確かこんなことを言った。
「Start over!」という楽曲の中で、力強く、自由に生きることができて幸せでした。
自由。
とても印象的なフレーズだった。
藤吉夏鈴が自由を託されると、ああなるのか。
もしかしたら、運営はそれをわかった上で、ここまで引っ張ったのか。
ここ一番で勝負を賭けるときまで、温存したのか。
逆に言えば、ここが勝負なのか。
彼女の想いに、そして勝負をかけようとする本気度を感じて、涙が止まらなかった。
東京ドーム菅井友香卒セレ以来の、大粒の涙がペンライトに落ちる。
ついでに言うと、MVを観ながら、あの日城ホのアンコールのモニタに映った、苦しそうでありながらも自分の本当の居場所を見つけたような彼女の表情ともオーバーラップするものだから、余計に言葉が選べなくなる
— 🌸🎨🧢🏦 川 島 雅 隆 ◢͟│⁴⁶ 🌳🐴🗒☀️ (@hiroty0526) June 4, 2023
でもこれでいいのだ
幸せの形を知る人は、最強だ#藤吉夏鈴 #karinblog pic.twitter.com/ptQWH0vzQB
それにしても、この子たちは何故ここまで強いのだろう。
いや、弱さだって当然あるに決まってるし、それであるからこその魅力もあるはずなのだけれど、強さしか見えないのは一体どういうことだ。
経験か。
逆境に耐えて耐えて、思うように事が運ばないという意味では、グループそのものが運命に翻弄されたわけだし、それを乗り越えるのに弱くちゃ話にならないわな。
私は、人生は勝負だと思っている。
勝つか、負けるか。そう思って生きてきた。
幼い頃から屈強な負けず嫌いで、自分が負けるのはもちろん、自分が関わる全ての人が負けるのも嫌いだった。いや今でもそうだ。たぶん死ぬまで変わらない。
ただ、勝つとはなんだ。
試合に負けて勝負に勝つ、という言葉がある。
人生経験を重ねるほどに、この言葉の意味を強く噛み締める。
卒業生を大量に出した。グループは改名した。紅白に落選した。
世間的には「試合に負けた」と思われたかもしれない。
でも、それがどうした。
その経験をいかに糧にして次に繋げ、そして結果を導くか。それができれば「勝負に勝った」ことになるのではないか。
最終的に、このグループが最高だったと思えれば、勝ちなのではないか。
勝ち負けなんかどうでもいい?信じられん。
そんなマインドは、私には絶対に理解できないし、理解しようとも思わない。
負けてもなんとも思わないような思考回路の人間でなくてよかった。
負けまいとする力が向上心を生み、向上心が結果を呼び。
それが成長だと信じているから。
だから、勝ってほしいんだ櫻坂には。
改名して終わったと思っていた連中に。
欅坂は解散したと思っているような連中に。
もっと言えば、所詮アイドルだろうと舐めているような連中に。
勝ってくれ。
藤吉夏鈴よ。
櫻坂46よ。
彼らの心に極太の楔を打ち込め。

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