さなコン2のフィードバックコメントを受けて
さなコン2の結果が発表されました。
まずは審査員の皆様、そしてさなコン2の運営チームの皆様、本当にお疲れさまでした。このような作品発表の場をいただけたことに感謝の念を捧げます。
さて、神推し作品である環(わ) | マラカスは残念ながら受賞ならずでした。ただ、SFコンテストなのでしょうがないね……という点もあり。色々な感情を抱きましたが、終わってみればいいコンテストだったと言えます。
自分のは普通に全滅。乙。
本稿は自分が受けたフィードバックコメントから、各作品について色々考えてみる感じのものです。自分用の記事なんで、興味ない人は即Uターンしてください。
フィードバックコメント原文について
フィードバックコメントの原文はこちらをご覧ください。こっから自分に対してのコメントだけこちらの記事に引用します。
結構審査員の方々の負荷が高かったのが伝わってくるテキストです。誤字脱字衍字の類が跳梁跋扈している点には目をつむりましょう。作品数が多すぎる。負荷がやばいと思うので次回から一次通過の時点で100作品くらいにしてあげて欲しい気もする。
もっとも、これくらいの数のフィードバックコメントを出さないと後進が……というのもあるので、作者一人あたりの応募点数制限の方がいいのかなという気もしますね。一人で四つもフィードバックコメントもらってる人もいるわけで、そういうのはちょっと不公平な感じがする。理想は作品点数が増えることより参加者数が増えることにあるとも思うし、今後どうなっていくかは気になりますね。
一次選考通過作品
インソムニアの夢
開幕〈軽快な店舗〉で草だったわけですが、もっと草だったのは〈若者らしさにあふれた作品〉というところですね。我はアラフォーのオッサンやぞ。とは言え、心の中学生(心の高校生も協力してます)をフル動員しただけのことはあり、それが活きていたという点はポジティブ評価かな。
ネガティブがフィードバックコメントからだとよくわからんですが、キャラクターが中心に褒められているということは、それ以外の点が全部ダメと考えた方がいい。まあ確かに無理くり作られた作品ではあったからな……。特に、10000字にするのめっちゃ苦労したということは、つまりそういうことだよっていうアレだね。この作品をきっちり10000字にするにはキャラクター数を削って状況描写に紙数を割いた方がよかった気がするな。その方がネームレスたちの孤独感が際立ったろうし、作品世界をちゃんと書けただろうから。
アキラメハヤコのさとり教育
コメントが草。
ナンバガと筋肉少女帯の力を借りてフルパワーで出力されただけのことはあり、高出力電波兵器として機能していたっぽいことが読み取れます。逆に言うとその他の部分について言及できないほど世界観(というか文体かね?)に依存し過ぎていることがうかがえますね。読み手がちょっと引いてる感じするんだけど気のせいか?
勢い任せのエンターテイメントをやるなら、だからこそ骨子をもっとしっかり書きましょうという感じ。ネタ文章が延々続く上に、一人称と三人称が頻繁に入れ替わるという読みづらい文章の手本みたいな感じになっとる。
というわけで納得の死。南無三!
永久の青春のクレイドル
これが今回一番うれしかった。二次選考通過とかどうでもよくなるわ。
うれしいこと言ってくれるじゃないの。SFとしてはまるでダメ太郎だったというのが結果から伝わってくるけれどね。
とは言え、繰り返しになるけれど、この作品は基本的に環(わ) とスプリットの重力圏の中で身体に清水アリカ(革命のためのサウンドトラック)を通して書いた作品だから、これが小説として肯定されていること自体に意味がある。〈気がします〉というのが非常に気になるところではあるが、瞬発力で書いたテキストのくせによく戦った。自信になる。指に任せてもそれなりになってくれるってんなら、オレはやれるんだ! って思えるからね。
来年からはまた小説書けなくなるような気がしてて、なんなら死んでるかもしれないから、これを糧に手を挙げていかないと。そうしないと元気のGが始まることもない。
二次選考通過作品
Wasted Days
二次選考通過しただけでも奇跡だし、それゆえに通過作品中では評価最下位なんとちゃうんかという自己評価のこの作品。そのくせ二倍のフィードバックコメントがもらえていることに驚きを隠せぬ。四作品通過で四倍のフィードバックだと思っていたら、実際は五倍もらっちゃったわけだ。
フィードバックコメントの覇者と呼んでくれて構わんよ。
アホなことを書くのはやめ、二次選考者のフィードバックコメントから。
このフィードバックコメントで重要なのは〈分かりやすいSFというのを素直に描ける力は逆に貴重なのかもしれません〉というところかなあ。
私は他人の作品を読んでる時に「この作品はすごいSFしてるけど、そもそも小説としてわかりづらくないか?」って感じることがたびたびある。そういう中で出てきた言葉だから、案外読んでる方も同じようなことを感じてるところがあったのかもしれないですね。
書いている側としては「評価されてるSF小説と比べると内容がありきたりだしなあ」とか「そもそも他者の作品に敗北感を味わわされてるんだが」という負の感情が強かった。それがこういう評価になるってのが皮肉な感じがするよ。もしかしたらこの評価自体にアイロニーが混じってるかもしれないけれど。
でもこういうのって素直に受け取った方が身体にいい。だから、環境(今回で言えば「わかりやすいSFが素直に書かれてなかった」んでしょう)って大事ねっていうのと共に、自分の感情に嘘をついて無理せんようにしとこっていう感想を抱きました。
そもそもエンターテイメントの基本原則は「わかりやすく」「おもしろい」であるわけだし、SFエンターテイメント(そして小説としてはちゃんと暗喩も持っている)を書くにあたって大事な部分がちゃんと保てていたという点に関しては、非常にポジティブな結果だと思う次第です。そういうものを書いていかないと読者層が先細りするとも思うので、やってることの方向性にそれほど誤りがなかったということに前向きになろうや。
さて別のフィードバックコメント。
技術的な面での指摘は非常にありがたい。
ご指摘の点はまさにその通りなのでなんにも言えないよね。やっぱりプロ作家は読み手としてもきっちり作品を見通してくるもんだなって感じます。
なにせこの作品は反復横跳びと二重の文字数縛りで書かれているので、そりゃそうなるわな……というのも納得。特に使える紙を使わなかったのは反省すべき点だわな。誰も文字数見てないから字数縛りが息してないし。
反復横跳びについての補足。この作品は課題文を最初と最後の両方で使用する為に、冒頭で世界観を作ったら速攻でラストシーンを書いてます。その後に中間層となる部分をラストシーンから逆算して書き、さらにその後に書いた要素の配置順序を小説として読みやすくなるように調整をかける……というように、まず自分が書きたい部品を先に作ってから、それの間を小説の必須パーツで埋める、あるいはパテで無理やり繋ぎ止めるような書き方がされています。
というわけで、普通の小説はおそらく頭から最後までまずはまっすぐ書かれてると思うんですが、私のは「あっち書いてこっち書いてあれ書いてこれ書いて間はこれで繋げる!」という無茶苦茶なやり方をしていたので、作劇には相当な作為性が与えられてるわけです。それが完全に欠点として見抜かれてるありさまですね。
総括
ま、いい経験になったよ。ここまでやれたのが出来すぎだったんだ。非才の一般凡愚が一次選考四つ通して最終選考にも残るとかさ。やっと楽になれるな。改めて乙、オレ。
以前の一人反省会に比べると、今回のフィードバックで見えてきたことはもっと明確な感じがするな。
前回は丁寧とかいう曖昧な言葉で済ませていたけど今回については「世界設定の提示」「作為性の消し方」「小説としての骨子の組み方」など、作品ごとにそれぞれに固有の欠点があり、その一方で個性として誇ってもよさげな部分が見えてきている部分もある。これらを意識しながら次作(公募作品なので皆様が目にする可能性は1%以下です)を書いていこうかな。
というわけで今回は以上です。
お読みいただきましてありがとうございました。