【スタートアップ!占い師】#23 占い師の帳簿ってどうなってるの?⑥ インボイス制度がはじまっちゃったけど、結局何をすればいいの?
占い師として活動をはじめて38日目。
大事なことに気がついたさくらさん。そう、帳簿の付け方です。
占い師は個人事業主なので、会計業務も自分で行わなければいけません。
どこからお金が入ってきて、何に使っているのか。使ったお金は事業のために適切に使われているのか。それを明確化できるのが、帳簿です。
どんぶり勘定だと、せっかくスタートさせた占いの事業も立ち行かなくなりますよ〜。
今回は、占い師の帳簿のお話。
最近始まった、「インボイス制度について」です。
インボイス制度は、一部の占い師の売上に大きな影響をうけます。
売上に影響を受けない占い師でも、インボイス制度により、とりまく環境や生活が変わってしまいます。
インボイス制度で、とりまく環境はどうなってしまうのか。占い師の仕事に与えるものとは。何をすればいいのか。お話していきます。
占い師の仕事というよりは、個人事業主としてめちゃくちゃ重要なので、この帳簿の回は無料で公開しております。
はじまってしまったインボイス制度
2023年の10月から、インボイス制度は始まってしまいました。
知らない方もいらっしゃると思いますが、「インボイスで廃業する!」「生活が苦しくなる!」という声が、去年からどんどん大きくなっていました。
しかし、そんな声はSNSで盛り上がっていたくらいで、(テレビ等ではCMは流れていたものの)悲しいことにあまりメディアに取り上げず、話題も浸透しませんでした。
なぜでしょうか。
個人的には
・事業者にきちんと正しい税額を収めてほしい(消費税は2種類あるから、混ぜずに正しい金額で明記してほしい)し、事業者の手元に残る税金をなくしたい(今まで許していた「税金のポケットマネー化」=益税をなくしたい)から、国がゴリ押しした。メディアであまり取り上げさせなかった
・インボイス制度そのものがあまりにも複雑なので浸透しにくかった
・多くの人がピンとこなかった
が理由ではないか、と考えています。
・事業者にきちんと正しい税額を収めてほしいし、事業者の手元に残る税金をなくしたいから、国がゴリ押しした。メディアであまり取り上げさせなかった
この太字の主張でもわかってほしいのですが、国は税金をとることに一生懸命になっています。これは近年の増税にも感じる通りです。
なお益税は、事業者の労力軽減のためにとられた措置であり、合法です。
・インボイス制度そのものがあまりにも複雑なので浸透しにくかった
「インボイス制度」と検索してみると、「わかりやすく」「簡単に」というワードが出ます。そのくらい、複雑でわかりにくい制度です。
・多くの人がピンとこなかった
日本におけるフリーランスの労働人口は日本のは労働人口の約24%、自営業となると約10%です。どこかの会社や組織に属して働く人と比べると、圧倒的に少数派です。大半の人がピンと来なかったのは、インボイス制度がよくわからなかったのもあると思いますが、「自分たちの生活に直接関係のないことだ」と捉えられたからだと思います。
このあとお話していきますが、このインボイス制度は、どこかの会社や組織に属して働く人の生活にも大きく影響します。国民全員の生活が変わってしまう制度なので、他人事と思ってはいけません。
インボイス制度が他人事だと思っちゃいけない理由
どうして、インボイス制度が他人事だと思ってはいけないのでしょうか。インボイス制度によって、どのようなことが起こってしまうのかも含めてみていきましょう。
頑張っている街のお店屋さんが消えてしまうかもしれない
街で元気に営業しているお店屋さんは、外からモノを仕入れて、商品やサービスの提供を行っています。
モノを仕入れるとき、モノを売るときに消費税は発生します。
このモノのやり取りの中で発生した消費税を、確定申告をしてお国に収めないといけないのですが、お客さんや取引先から預かった金額のままでは納めません。
お店屋さんが支払う消費税は、お客さんや取引先から預かった金額から、取引先などの外に支払った消費税を差し引いて、納税する額を決めているのです。これを「仕入税額控除」といいます。
言葉に「仕入」とありますが、この「仕入」は消費税ものの仕入れから経費までを指します、ややこしいですね。
「仕入税額控除」は、国に納める消費税額を軽くする制度なのです。
で。インボイス制度によって、これができるお店とできないお店に別れてしまいます。できるお店は「相手も自分も課税事業者」であるお店、できないお店は「相手が免税事業者で自分は課税事業者」であるお店です。
免税事業者というのは、売上が1000万円以下で、消費税の免税を許されている事業者です。
課税事業者はその逆で、売上1000万円以上で、消費税の課税を行っている事業者のことです。
仕入税額控除ができないお店はどうなるのかというと、外に支払った消費税は支払ったまま、預かった金額の消費税はそんぐりそのままお国に納めなくてはならないのです。(少額特例をのぞく。少額特例の話は順序的な都合で、次回書きます。)免税事業者と取引のある課税事業者のお店屋さんは損ですよね……モノを仕入れなくなったり、サービスを拒む可能性があります。
これだけではありません。
免税事業者のお店屋さんは、インボイス付きの領収書を発行できません。
大きな会社(課税事業者)に勤めている人が、免税事業者のレシートや領収書を受け取っても、自分たち(大きな会社)が受け持っている消費税から免税事業者の店舗やサービス分の消費税を差し引くことができません。
つまり、経費で領収書やレシートを持ち帰っても、会社は消費税分を損をしてしまうことになります。
この「損」を避けるため、課税事業者に勤めている人は、街のお店屋さんを利用しなくなってしまうのです。
免税事業者側のモノが入らない、免税事業者側の外注を使わないお店屋さんは、品揃えやサービスが悪くなる可能性があります。
インボイス付きレシートや領収書を発行できないために、免税事業者のお店を利用する人が減ってしまうかもしれません。
そうなると、街のお店屋さんが消えてしまうかもしれません。
フリーランスや自営業で成り立っているインフラやサービスが受けられなくなってしまう可能性がある
それに、フリーランスや自営業で成り立っているインフラやサービスが受けられなくなってしまう可能性があります。
「そんなの、大きな会社やメーカー、チェーン店に頼ればいいじゃん。社員がなんとかしてくれるでしょ?フリーランスと自営業の人とは、うち関係ないし」と言う人もいると思います。
その大きな会社やメーカー、チェーン店は、下請けや取引先としてフリーランスや自営業の人を雇っている場合が多いのですよ!でもって、フリーランスや自営業の過半数は、免税事業者です。
課税事業者は免税事業者と取引をした場合、消費税を免税事業者に支払います。しかし、免税事業者はインボイスを発行できないし消費税をもらうだけなので、課税事業者は消費税分、払い損になってしまいます。こうなると、仕事の報酬を引き下げられたり、最悪契約解除や取引終了になってしまう可能性が高くなるのです(一方的に報酬を下げたり、契約解除や取引終了に追い込むのは下請法や独占禁止法にひっかかるので、事前の相談や交渉はあると思います)。
大きな会社やメーカー、チェーン店の下請けや取引先がいなくなると、技術不足や人手不足が深刻になります。仕事が回らなくなって……あとは、想像がつきますよね。
仕事を失う人が多くなってしまう
先にもいいましたが、フリーランスや自営業の過半数は免税事業者です。
この制度により、免税事業者は「課税者になって消費税を支払うか」「仕事や収入がなくなるリスクを背負ったまま免税者を続けるか」の二択をせまられることになります。
ちなみに、「STOP!インボイス」サイトの消費税納税のシュミレーションだと、簡易課税を選択した年収200万円のサービス業の場合、年に納める消費税額は90909円です。課税者で、日本の平均年収低めの収入で「一度にコレ払え」は相当キツいです(消費税は分割払いじゃありません)。
これなら免税者を選ぶと思いますが、仕事や収入がなくなると……と思うと、生活のために続けてきた仕事をやめてしまう人も少なくありません。
SNSを見たら、実際に廃業した会社もあるようです……。
インボイス制度が始まった今も、「廃業するかもしれない」と追い込まれている、フリーランスや自営業の人が多いのです。
で、インボイス制度ってどういう制度なの?
身近にあるある、インボイス
生活に影響すると言われている、インボイス制度。
どんな制度なのでしょうか。
超わかりやすいサイトがあるので、ご紹介します。
国が交付したインボイス発行事業者の番号が入っている請求書、領収書や仕入れの明細書、レシート……これらの書類のことをまとめて「インボイスと呼んだりします。
もしくは、「適格請求書」「適格簡易請求書」といいます。
「請求書」とありますが、請求書だけのことをさしてはいません。
「適格請求書」「適格簡易請求書」「インボイス」がよくわかんない人は、どこかのコンビニでなにか買ってきてみてください。レシートに、謎の番号が明記されています。
それが「インボイス付きレシート」と呼ばれるものになります。
(大抵のコンビニは、インボイス対応になっています)
結構身近なところにあったりするんですよね。
このインボイスを発行していれば、課税者は「ちゃんと課税してますよ」「納税してますよ」という証拠を残すことができるのです。
課税事業者になってインボイス事業者になって消費税払うから、
・仕入税額控除を受けたいからインボイス発行するよ
・仕入税額控除のために発行してもらったインボイス使うよ
……というのが、インボイス制度です。
制度に関係している人、してない人
この制度の対象となっているのを関係別に言えば
・自分はお客さんなどの消費者。取引しているのが、消費者(メルカリなど)……インボイス関係ない
・自分は消費者。取引しているのが、免税事業者……インボイス関係ない
・自分は消費者。取引しているのが、課税事業者……インボイス関係ない
・自分は免税事業者。取引しているのが、お客さんなどの消費者……インボイス関係ない
・自分は免税事業者。取引しているのが、免税事業者……インボイス関係ない
・自分は免税事業者。取引しているのが、課税事業者……インボイス関係ある
・自分は課税事業者。取引しているのが、免税事業者……インボイス関係ある
・自分は課税事業者。取引しているのが、課税事業者……一応インボイス関係ある
……と、こんな感じです。
お金を使う場面によって、この「消費者」と「免税事業者」or「課税事業者」の立場は変わります。
例えば、免税事業者(課税事業者)なんだけど、プライベートでお金を使ったなら、ただの「消費者」になります。
インボイスを発行できる人は?
国が交付したインボイス発行事業者の番号が入っている請求書、領収書や仕入れの明細書、レシート……この「インボイス」を発行するのは、インボイス発行事業者として登録した課税事業者です。
インボイス発行事業者の登録をしていない課税事業者と免税事業者は、インボイスを発行できません。
インボイスが発行できる課税事業者ができること
インボイスが発行できる課税事業者は、「仕入税額控除」を受けられます。
消費税は、お客さんや取引先から預かった金額から、取引先などの外に支払った消費税を差し引いて、納税する額を決めているのです。これを「仕入税額控除」といいます。「仕入」は消費税ものの仕入れから経費までを指します。
課税事業者は従来出来ていたことなのですが、インボイス発行事業者として登録することによって、今後も継続して控除を受けられます。
なので……消費税を課税するのにインボイス登録はしない課税事業者は、そういないでしょう。損を取りに行くようなものですから。
インボイスが発行できる課税事業者が、やらないといけないこと
インボイス発行事業者になると、
・インボイスの発行
・インボイスの書類とインボイスじゃない書類を分けて保存する
・インボイスのものとインボイスじゃないものの、それぞれの経費計算
……など、やることがますます増えるでしょう。経理泣かせです。
結局、免税事業者はどうすれば?
では、今まで免税事業者だった人はどうしたらいいのでしょうか。
免税事業者は、先程もあったように「課税者になって消費税を支払うか」「仕事や収入がなくなるリスクを背負ったまま免税者を続けるか」のどちらかを選ばなくてはいけません。
・免税事業者が課税事業者になることを選んだら
免税事業者が課税事業者になることを選んだら、メリットがあるとすれば…………はっきり言って、ありません。
課税事業者として公表されるので、身バレや住所バレに繋がる可能性があります(すでに、特定商取引法の記載をしている人には関係ないですが)。
課税事業者として、仕事の取引の選択に入れてもらうくらいしかありません。インボイス事業者のメリットを受け取れるとすれば、モノの仕入れが多い免税事業者か、課税事業者と取引が多い免税事業者でしょう。
控除されても消費税は発生します。消費税は支払わないといけませんし、そのための経理が面倒です。デメリットが大きいです。
・そのまま免税事業者になることを選んだら
従来どおりの経理でOKです。インボイスのレシートや領収書をもらっても、インボイスあり・なしで仕分けるだけです。
記帳も特別な書き方をする必要はありません。今まで通り、消費税も含めた金額を記入します。
問題は、課税事業者との取引がある人です。上記のようにこれまで通りの取引を行うと、課税事業者は消費税分、払い損になってしまいます。
報酬や料金はこれまで通り消費税込みの支払いなのか、そうじゃないのかを、取引の取り決めや相談、契約の見直しを行う必要があります。
仕事がどうなるか、報酬や料金がどうなるのかはそれぞれの話し合いによります。
10月1日からのスタートに合わせた申請は終了していますが、インボイス登録者申請はまだできるようです。
選択は個人の自由ですが、私としては、課税事業者のままでいたほうがいいかなと考えます。
次回は「インボイス制度によって、占い師の帳簿はどうなる?」についてお話していきます。