【社中すいせいむし】観てきました!📖
ここ最近仕事がかな〜り忙しくて舞台熱が少し冷めていたのですが、少年社中の『すいせいむし』がとても良かったので感想を書き殴らせていただきます!
⚪︎あらすじと感想
⚫︎人生をかけた討論バトル
主人公のカクは30歳でバイト生活をしています(作業着だから多分工事現場系)。職場では陰でチー牛と馬鹿にされ、おそらく友人も恋人も頼れる家族もいない様子。人生に絶望したカクは、”世界を終わらせる事ができる本”『すいせいむし』を探し求めていました。
『すいせいむし』を手に入れられるのは、討論バトルでトーナメントを勝ち進み最後に残った1名のみ。バトルの参加者には宇宙飛行士、勇者、シェフ、ミステリー作家、IT起業家、ロボットなどなど、かなり個性的なメンツが揃い、キュレイターを名乗る書店の店主が勝敗を判断します。
但しこの議論バトルはただのディベート合戦ではなく、勝負に負けてしまった人は本になって書店に飾られてしまいます。つまり人生をかけたデスゲームです。とあるキャラクターが一回戦目で討論バトルに負けて本になってしまうのですが、手脚がぐにゃぐにゃと折り畳まれて、暗明転後、本が一冊ぽつりと置かれている演出は結構不気味でした…。(なんとなくチャーリーとチョコレート工場でバイオレットが風船ガムになるシーンを思い出しました)
討論のテーマは「人生に意味はあるのか?」「君は人のために死ねるか?」「夢を追い続けることは苦しいだけか?」とかなり難題ですが、個性豊かなキャラクター達がそれぞれの波瀾万丈な人生を語り、人生経験から持論を繰り出していきます。個人的にカモメくんのキャラがめちゃくちゃツボで何回も笑わせてもらいました!😹テーマは重ためですがコメディ要素とのバランスが本当に絶妙なんです。あとカモメくんに羽押し付けられてモゴモゴ言ってるカクがかわいかった(^^)
⚫︎フェンの存在
最初、命をかけたバトルと聞いて無理無理!と逃げようとするカク(根っからの根性なしって感じでいいですね)でしたが、フェンという謎のキャラクターに唆されて無理矢理バトルに参加することに。
フェンの存在は他の参加者には見えていなくて、カクの心の中の人物なんだなということはすぐに分かります。カクがどんな人生を送ってきたのか、どんな人間なのかをよく知ってて、度々カクを煽るような事を言うんですよね。
ここの解釈はまだ考察中ですが、弱気で根暗で保守的なカクと強気で傲慢で破滅的なフェンは対極といえる存在で、カクの奥底に眠っている本音の感情がフェンなのかなというのが観劇中の印象でした。
フェンという名前は「焚書」が由来となっていて、カクは「おまえのせいで」のような発言をすることから、カクの人生がこうなってしまったことの一端にフェンがいる事が示唆されています。ただ、カクもカクで自分の人生なのにすごく他責的なんですよね。この辺りが物語の芯に繋がっていくのですが……。
⚫︎人生まだまだ長い…?
すいせいむしは漢字で書くと「酔生夢死」。
「何も価値のあることせず、虚しく一生を終える」という意味です。残酷ですがまさしくカクが今まで生きた人生を表す言葉でしょう。 実年齢に精神年齢が追いついていない感覚(永遠の10代⭐︎という奴ですね)や、年相応の経験値を積んでいない事への焦燥感は多かれ少なかれ誰もが感じたことがあるんじゃないかと思います。何かを始めるのに遅すぎることはない、なんて言いますが実際日々生きてるとなかなかそんな風に思えないですし。
私はまだ20代なので正直カクの気持ちを全ては分からないですが、高校時代に引きこもっていた経験から「なんで頑張れなかったんだろう、なんで無駄に過ごしたんだろう」という後悔には共感できました。私はむしろその後悔があったから今の人生を一生懸命生きる覚悟ができたし、すいせいむしを観劇して改めて人生を無駄にしてはいけないなと思えました。
パッと見た感じお客さんは20〜40代の女性がメイン層だった気がしますが、これはカクに近い世代の方にも観てほしいなぁ。少年社中の皆さま、円盤化待っています…。
⚪︎カク役・櫻井圭登さんについて
⚫︎主人公って
ビジュアルが公開された時点で櫻井さんの雰囲気に合いそうだなと思ったのですが、実際主人公のカク役はハマり役だったと思います!
2.5の舞台だと主人公タイプというよりは、ちょっとクセのある役や中性的で非現実的なキャラクターを演じることが多いですが、劇団系(?)のストレートプレイだと主人公が映えますね。
偏見ですが、大体こういう舞台作品の主人公って人生に悩んだり陰鬱とした想いを抱えながらも心の底に強い信念を持っている事が多いじゃないですか。私は櫻井さん自身も秘めたる激情を抱えている方だと思っているので、人生に絶望しても心の底には誰にも譲れないものを持っているカクの役がピッタリだったと思います!
あと華奢な櫻井さんだと作業着姿が全然似合ってないのも(ごめんなさい)、カクが望んだ仕事でも向いている仕事でもないってことが表現されてて逆にいいですね。
⚫︎カメレオン俳優
物語の中盤で、とある重大事実を突きつけられ、現実に耐えられなくなったカクが「お願い…」といって人格をフェンに明け渡して議論バトルをするシーンがあるのですが、ここのカメレオン俳優・櫻井圭登が本当に凄かった。まず目から全く別の人格が宿っているのが分かるんですよ。さっきまでグチグチとネガティブ発言ばかり発してた陰キャの男はどこにも居なくて、テーブルに足をドカンと乗せて、相手を小馬鹿にしたかの様にニヒルに笑みを浮かべていて、もうヤバいとしか言えなかった🙄
今回前列2列目というめちゃくちゃ良席で、表情の細かい動きまで見れて大満足でした!
本当に心を動かしてお芝居しているんだなぁと、櫻井圭登にハマってしまった訳を思い出させられましたね。本当にこの人の芝居は面白いしみればみるほどもっともっと観たくなる。久しぶりにこのゾクゾク感を味わって、このシーンを観てる時ずっと口角がニヤけて仕方なかったです!笑
⚪︎おわりに
今回初めて少年社中の舞台を見たのですが、個人的にかなり面白かったです!「人生」という重ためのテーマを取り扱っていますが、テンポの良さやキャラクター一人一人の個性、魅せ所が分かりやすい構成のバランスがすごく良くて、純粋に楽しめる部分としっかり心に残る部分どちらも満足できる舞台でした!
最近はプライベートが忙しくて舞台はしばらく良いかな…と思っていたのですがやっぱり観劇後もずっと心に残るものがある舞台っていいですね。
もうしばらくこの沼から抜け出せない予感……