68.次回撮影へ

そこはよく行くスーパーでした。
私は夕方の混む時間帯を避けて行っており、その時間帯は複数あるレジ打ちは大学生と思われる男の子達でした。
お客さんもまばらでしたので、ゆっくりとその日も買い物をしているとバックヤードというのでしょうか、そこから男性の従業員が出てきました。

いつものように買い物をしていると、何やらコソコソ声がして振り向くと3~4人の男性従業員が好奇心丸出しの視線をこちらに向けていました。

「ほら!」
「うそ、マジか?」
「絶対そうだって」

私の耳に届いたのはそんな言葉でした。

その時は「何なの?」と思い、ただなんだか晒し者になっているような不快感を覚えて帰ろうと思いレジに向かうと、レジにいた男の子達が私を明らかに凝視している視線にぶつかりました。

買い物カゴを放置して帰るわけにもいかず、俯き気味にレジに向かうといつもはスムーズに会計するその大学生が私の顔をちらちら見てくるので何とも居心地が悪く、サッカー台での袋詰めを適当にして店の外へ出ました。

契約時、インターネットにはのせないという約束でした。
不安を覚えながら自分につけられた名前を検索してみて愕然としました。

DVDや視聴動画やポスターや、すでに購入し観た人の口コミまで出てきました。
そしてそれは日を追うごとに検索ページが増えていき、切り取り動画やフル視聴動画が複数の成人向けサイトにのっており、DVDはTSUTAYAオンラインやHMVや楽天やamazonに普通に流通していました。

多分、あのスーパーの人達はこれらの何かを目にし、それを私に結びつけたのでしょう。
こんな田舎でスーパーに出入りするセルフヘアメイクの私と、髪を色っぽく緩く巻き、プロにメイクアップしてもらってはいても、デビューしたてのたいして有名でもない私を結びつけられる人の方が珍しいと私は思いましたが、それからも、たまに家電屋さんなど何度か足を運ぶようなところで店員の男性にじっと顔を見つめられることがあり、そういうこちらを観察している気配を感じた場所には近寄らないように注意して過ごしました。

多分、そういう人達は、服を着ていても見える部分の爪の形や耳の形やほくろなど化粧ではごまかせない身体的特徴や声などをよく観察し、AV女優と身近にいる女性の共通点を探すのが趣味で、共通点が多いほど身近にいるその女性の性行為する様子をAV女優に重ねて日頃から楽しんでいるのだと思います…考えすぎかもしれませんが。

そういう趣味をもった一部の人達に顔バレはしかけた(した)かもしれませんが、その人達もまさかこんな田舎にいるはずがないという思いもあるのか、身バレまではいきませんでした。

私がネット上に自分を見つけてから数日後、社長から電話がありました。

「代表作1本できたから、これからは仕事とりやすくなるよ。
あれ観れば、君が持つポテンシャルが撮る側に伝わって営業も宣材写真だけより動きやすいからね。これからいっぱい稼げるね」

契約書のことを聞く隙もないほど一方的に話され電話は切れました。

そして確かに営業は動きやすかったのでしょう、すぐに次の撮影が決まりました。





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