73.妄想か真実か
私はその人の坊主頭のてっぺんを見ていました。
当時は中学生男子の髪型といえば私の実家のあたりは校則で坊主と決められていました。
いがぐり頭の向こうで、割れ目に何をしているのかは私には見えませんでしたが時折むず痒いようなくすぐったいような変な感覚がして身を捩らせると、その人は動きを止め、私が動かなくなるとまた何やら割れ目に対して行い、私が動くとまた止めました。
繰り返しがどの位続いたのでしょう、気が付くといとこのお姉ちゃんはいなくなっていました。
しゃがむのに疲れたのか、その人は立ち上がり木箱に腰かけました。
そして私の片足からパンツを抜き、片方の足首にパンツをひっかけた状態の私を自分と同じ向きになるように腿の上に抱き上げて座らせました。
そして私の背後から割れ目に手を伸ばしました。
時折耳に掛かる鼻息なのか呼吸なのかがくすぐったくて、身を捩りましたがしっかりと片方の腕で抱き抱えているせいか、今度は動きを止めませんでした。
だんだんとおしっこをしたいような感覚がしてきて
「おろして」
と訴えましたが、その人は割れ目で動かす手を止めてくれませんでした。
「おりる!おしっこでる!」
半泣きになりながらそう強く訴えると、やっとその人は私を膝から降ろしました。
私はしゃがむ間もなく、すぐその場で立ったままおもらしをしてしまいましたが、その人は足に跳ねる尿を気にすることもなく、私のおもらし姿を見つめていました。
この記憶は思い出したものなのか、それとも妄想や捏造してしまったものなのかを、点滴を繋がれたまま天井を見て考えていると
「目が覚めたか?」
と彼が顔を覗きこんできました。
私がここに運ばれた経緯を説明し
「点滴終わったら診察があって、異常がなければ帰れるそうだ」
そう言って、ベッドの傍らの丸椅子に腰をおろしました。
自宅に帰ってきてから、私はあの記憶が本当にあったことなのか、それとも私の妄想か捏造された記憶なのかについて悩むようになりました。
ただ、ある日を境にいとこのお姉ちゃんは誘いに行っても私とは遊ばなくなり、必然的に二人の遊び場だったあの小屋に行く機会がなくなったのは事実です。
年の差もありましたし幼稚園児の私と遊ぶのが嫌になったのだろうと思っていましたが、もしかしたら他の理由があったのかもしれません。
私はすっかり疎遠になってしまっていた、いとこのお姉ちゃんに連絡をとることにしました。