声
おかげさまで、去年11月の終わりに退院して丸一年。なんとか無事に過ごせていることに日々感謝している今日この頃。
老夫婦二人での生活を送っているが、健康であればお買い物も行けて外食して帰るとか、なんならカニバスくらいには乗って楽しみたいと思うのだが、足の悪い夫はあれだけ好きだった近所のコンビニでさえも行きたがらない。
100m、せめて50mでもいいので歩こうと誘うのだけれど、私と一緒では、お互いに不安でしかないと言う。確かにそれもそうだ。
ちょっと調子がいい時は歩かなければと思う気持ちから、マンションの前までゴミ出しに行ってはくれるのだけれど、玄関前のEVに乗ってエントランスを歩くだけなので、リハビリにもならない。が、稀に住人のどなたかに会うことがあって、その時は、家では見せないほどの嬉しそうな顔をして帰ってくる。
昨日も、仕事の知人が見舞いの電話をくれて、夫と交互に少し話したのだけれど、声の調子が弾んでいる。私や息子達だと甘えているのか超ネガティブ思考で、やれ足が痛い、腰が痛い、食べる気がしないとか頼りない声でぶつぶつ言っているのだが。
電話を切って、
「きてくれるって言うてたか?」
「うん、いつ来てもいいよと言っておいたから、年内に来てくれるかもよ」
「そうか、よかったな」
好き嫌いの激しい人なので、付き合う人は少ない。
「お父さん、電話をもらってから、声が元気になったね、声に勢いがあるわ」
「あ、そやな、なんか自分でも元気が出た気がするわ。やっぱり晩ごはん食べよかな」
「よっしゃぁ!何にしようっかな〜」
お父さんの声が元気で食べる気が出てきたと思うと、今度は、私の声も元気になった。