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レディー・ドラゴン セックスレスな妻たちへ

夫以外の他の男と、セックスしてやる!~レディー・ドラゴン⑦~

夫以外の男とセックスしたい!。
璃宇はこれが自分の本音だと知り、呆然とする
これまでちらり、とも考えたことがなかった、と言えば嘘になる。
テレビやネットで見る男達に抱かれる妄想をしたこともある。。
でも、どういうこと?!


さっきまで落ち込んでいた璃宇は、もぐりこんでいた布団の中で目を大きく開く。
50歳を目の前にして、今さら夫以外の男に抱かれるなんて、ありえないでしょう?
今の自分の体型、知ってる?
7号サイズの私じゃなく、13号のデブッて、お腹もどこもかしこもタルンタルンのおばさんよ!
長い間夫の前でさえ裸になってないのに、他の男の前で裸になれるの?

海老のように丸まり頭を抱え自問自答していたら、横から「う~ん」という声の後、健やかな寝息が聞こえた。璃宇はハッ!と我に返る。
ついさっき自分を傷つける言葉を吐いたのに、何事もなかったようにスヤスヤ眠る夫が憎らしかった。
思い切り、蹴とばしてやりたい気分だ。
夫の健やかな寝息は導火線のようにジリジリと璃宇の悔しさを伝い、怒りに引火させた。
「よし!夫以外の他の男とセックスしてやる!!」
ついに自分の本音を認めた璃宇はようやく力尽きすこん、と眠りに落ちていった。

翌朝目覚めても、夫とは何ごともなかったように、ふるまう。
結婚生活の知恵だ。お互い不利な事はスルーする。
起きてきた夫の顔を見ると、習慣的に気持ちのこもっていない声で「おはよう」と挨拶をする。夫は新聞を読みテレビを時計代わりに眺める。そして璃宇の作った味噌汁とご飯と焼き魚を食べ、慌ただしく仕事に行った。

夫が家を出ると、洗濯物の生乾きのような空気が軽くなり、息がしやすくなった。
璃宇がふぅ、と大きなため息を一つつくと、見えない疲れも吐き出される。ダイニングの椅子に腰かけコーヒーの入ったマグカップを両手で暖めると、ようやく体がゆるむのがわかる。
毎日同じルーティンをこなしていたつもりだった。
けれど昨日の今日で夫に何か言われやしないか、と緊張していた事に気づく。
熱いコーヒーの湯気に目を細め、椅子の背にもたれかかると、夫はどうやって性欲を処理しているのか、どこかでセックスをしているのか、と思いめぐらす。

実はこれまで何度か夫の浮気を疑うことはあった。

シャツに残ったほのかな香り
謎の領収書
携帯電話をお風呂やトイレに持ち込む

どれもこれも、ネットや雑誌で「夫が浮気をしている時」にぴったり当てはまることがあった。浮気をしていたことは、たぶんビンゴだ。
けれど璃宇は嫉妬や不安、疑惑やから目をそらし、見なかった事にした。
「どうせ一時のことだから」と夫を問い詰めることもなかった。
夫を信頼していたわけではない。本音はこうだ。
自分とのセックスでオーガズムを感じさせない男が、他の女に快感を与えられるワケがない。
だから浮気していてもすぐ終わる。夫を見下していた。

実際、璃宇の予想した通りだった。
夫の浮気の気配は長く続かなかった。
やっぱりね、それくらいのものよ、あの人のセックスは
と璃宇は思った。

浮気にはセックスがつきもの。それ以外の何を他の女に求めるの?そう考えていた。自分に素直になった今だからこそわかる。オーガズムを与えてくれなかった夫とのセックスに強い恨みがあった。案外粘着質な性格だったんだなぁ、とおかしくなった璃宇はふふふ、と笑う。

ダイニングテーブルの白いテーブルマットの上に、夫の食べ終えた食器が残されている。
新婚の頃から何度口うるさく言っても、彼は食べた食器をシンクに下げてくれない。子供達でさえちゃんと下げてくれたのに。今はもう言うのも面倒であきらめている。
夫の茶碗やお皿、湯飲み。彼らは璃宇が下げるのが当然、という顔でそこに偉そうに鎮座している。
それを目にした璃宇は、急にムラムラと昨日の夜の怒りが湧きあがり、食器をなぎ倒してやりたい思いにかられた。
でも後片付けをするのも自分だからあほらしい、と怒りを抑える代わりに改璃宇は改めて誓う。
「夫以外の他の男とセックスしてやる!」


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