レディー・ドラゴン セックスレスな妻たちへ
他の男に抱かれてこい~レディー・ドラゴン➉~
「ど・・・どういうこと?なに?お金で買った、て!?意味がわかんない!」
璃宇は頭が混乱したまま、眉をひそめ首を振る。
これまでも薫子から家庭外で恋人がいた、と聞いたことはある。
けれどどうして今頃、お金で恋人を買う必要があるのかわからない。
薫子を問いただそうとした時、ガラスの器に盛られたサラダがテーブルに置かれた。
璃宇は仕方なく口を閉じた。
薫子は何もなかったように、優美な仕草でフォークにレタスを刺し、口に運ぶ。
その姿はついさっきまで、お金で買った恋人と一緒にいた女に見えない。
そんな薫子を見て璃宇は苛立つが、彼女から説明するまで待とう、と決め自分もサラダを食べ始める。
野菜に添えられた赤いドレッシングはトマトベースで酸味があり、美味しい。薫子は黙ったままだ。
レタスやキュウリ、パプリカを咀嚼するささやかな音だけが、二人のBGMだ。
サラダを食べ終えた薫子はグラスに残っていたビールを飲み干すと
左手を上げ、スタッフを呼ぶ。そしてグラスの赤ワインをオーダーした。
酔いは薫子の頬や首元からY字に開いたパープルのブラウスから見える胸の谷間にかけ、赤潮のように走っている。
璃宇は思わず大丈夫?と言いかけたが、薫子があの男のことをしらふで話せないかも、と思い、言葉を飲み込む。
グラスワインが運ばれ、空になったサラダの器が下げられた。
「ありがとう」
薫子は若い男性のスタッフに上目遣いで言い、首を伸ばし赤く染まった頬を左手で耳に向かって撫でる。
その仕草が妙にエロティックで、璃宇はドキッとした。
薫子はグラスを手に取り、赤くなった喉を上に向けお酒を体に流し込む。
「さぁ、璃宇に話さなきゃね」
そう口に出すと大きく息を吸い、璃宇の顔を真正面から見つめた。
「実はうちのだんなさん、仕事のストレスからED(勃起不全)になっちゃったの。
それまで私も外で彼氏を作って遊んでいたけど、それはだんながいることが前提だった。
だんなも薄々私の男遊びを知っていたけど、私があまりに性欲が強く自分一人で満たせないから、知らんぷりして黙認してくれたの。
だけどだんながまったくセックスできなくなって、私に言うの。
もう俺はお前に何もできないから、堂々と他の男に抱かれてもいいぞ。
でも俺はお前のことを愛してるし、夫として認めてくれるならここにいたい。もしそれが嫌ならいつでも離婚するから言ってくれ、て」
一気にそう言うと、薫子はまたグラスを持ち上げワインを飲む。
彼女の目は潤み、今にも泣きだしそうだ。
「私ね、そこまで言われて初めて気づいたの。
本当は、ずっと寂しかったんだって。
だんなは仕事に夢中で、お金はしっかり稼いでくれる。
だけど私はもっと一緒に居たかった。
あの人に触れたかった。
抱かれたかった。
あの人のぬくもりに包まれたかった。
それを他の男に抱かれることで、ごまかしていたの。
自分の寂しさを、認めたくもないし受け入れたくなかった。
今あの人は心も身体も疲れ切って、仕事も休んでいる。
私が願った通り、彼と一緒にいられる時間が長くなった。
だけどあの人は男として自信をなくし、私に触れられるのも抱かれるのも拒否し続けている。
そして私に他の男に抱かれてこい、と言うの。
でもね、そんな時は他の男に心惹かれないし、抱かれたい、とも思わないの。性欲なんてどっかに吹き飛んだわ。
それでしばらく大人しくしていたら、だんなの方が私に気を遣ってね・・・・・・
なんと、彼が私のために男をオーダーしたのよ!」
「えっ!!!」
「ネットで出張ホスト、というのを探したみたい。
それで選ばれたのが、あの彼」
「で、で、薫子はあの彼と・・・・・・セックスしたの?」
一番肝心なことを聞いたその時、湯気の立つメインの料理が運ばれてきた。
薫子は、黒毛和牛フィレ肉のポワレ トリュフソース
璃宇には、鯛のソテーだ。
胸につまったことを話せて気が軽くなったのか薫子は
「美味しそう!」
と歓声を上げ、ナイフとフォークに手を伸ばす。
すぐに肉汁が染み出た赤い切れ端を口に入れ
「う~ん、やっぱりお肉は美味しい!」
と薫子は叫ぶ。
旺盛な食欲で肉を食べる薫子を見て、肉食系の女は強い、と璃宇はあっけに取られる。肉が吸い込まれる薫子の唇は肉の油でてかっている。薫子がその唇で男を引き込みキスしたかと思うと、璃宇の子宮は切なくうずく。
フォークとナイフを手にしたまま、料理に手をつけていない璃宇を見て薫子は
「ほら、璃宇のお魚も美味しそうよ。早く食べなさいよ」
とすすめ、また肉を口に運んだ。
薫子は話の続きを聞きたがりジレジレしている璃宇を面白がっているようだ。
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