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レディー・ドラゴン セックスレスな妻たちへ

愛とセックスは比例する?~レディー・ドラゴン~⑥

夫のパジャマのズボンの上にそっと手を置く。
股間にあるものは、つぶれかけの肉まんのようにホワホワあたたかく、フニャフニャしている。
自分から夫のそこに手を伸ばしたのは初めてだ。そこから先をどうしたらいいかわからず、璃宇はとまどう。
しかたなくパジャマの上から、肉まんを上下にソロソロと撫でてみた。
その途端
「おい、何をしているんだ?!」
夫の鋭い声が飛んできた。その声に璃宇はビクンと体を震わせ、慌てて手を引っ込める。ガバリと起き上がった夫は目を見開き、自分のベッドに入っている璃宇を見た。

「何をしているんだ?」
眉間に皺を寄せた彼は、問い詰めるように璃宇にもう一度聞く。
その目つきは冷たく、穏やかな眠りを邪魔された怒りをにじませていた。夫が見知らぬ不審者を見るような目で自分を見ることが、璃宇はショックだった。

「な、何って・・・・・・」
口ごもる璃宇に夫は、言葉をかぶせる。
「だって、おかしいだろう?
いきなり寝ている俺のベッドに勝手に入り込んで、股間を触るなんて」
「ええ、まぁそれはそうなんだけど・・・・・・」
うまく自分の気持ちを伝えられないまま璃宇は黙り込むと、後味の悪い沈黙が夜に飲み込まれた。
うつむいて言葉をさがす璃宇に、夫は静かに言った。
「商売女みたいな真似は、よせ」
その言葉に、璃宇は一瞬息が止まる。彼の一撃は心を切り裂き、かすかな希望を谷底に突き落とした。

璃宇は弾かれたように夫の布団を乱暴にはぎ取り、ベッドから逃げる。そしてすぐ隣にある自分のベッドにもぐりこむと、夫に背を向けた。
ついさっきまでいた夫の布団のあたたかさに比べ、璃宇の布団は醒めた自分の心と同じくらい冷たかった。

商売女みたい・・・・・・
夫の放った言葉が、璃宇の心をえぐる。
頭まで布団をかぶると胎児のように背中を丸め、親指を噛む。
涙をこらえるために。

勇気を出して初めて自分から夫のベッドに入ったのに、優しく抱き寄せてくれなかった夫が憎かった。
夫のベットに入らなければよかった・・・止めとけばよかった・・・
馬鹿みたい、自分で自分を傷つけにいって・・・
何度も繰り返しそう思い、璃宇は自分の心をえぐり続ける。
嫌い!
大っ嫌い!
涙を流すかわりに、怒りを小声で吐き出す。
夫が嫌いなのか自分が嫌いなのかわからない。でもそう言わずにいられなかった。
やがて夏にかき氷を食べ頭がキーンとし何も考えられなくなったように、心は冷たい空洞になった。水晶の洞窟だ。璃宇はためらうことなく、足を踏み入れる。もう何も怖いものなどない。そこは自分の子宮の中なのだから。

透明な水晶のつららが垂れ下がる洞窟を歩いて行くと、突き当りにもう一人の璃宇が脚をぶらぶらさせ座っていた。
あごまでの短い茶色のウェーブヘア。左の肩ひもが落ちたシルクの黒いスリップを身に着け、真っ赤な口紅でじっと璃宇を見る。
現実の璃宇は、肩までの黒髪のストレートヘアで、黒いスリップも派手な赤い口紅も持っていない

彼女は何がおかしいのか、笑いながら言う。
「商売女って、何?誰のこと?娼婦のこと?
それとも、アダルト産業で働いている女達のこと?
彼女たちはセックスしても、快感はあるの?
愛がなくても、セックスできるの?
私、愛はあったけど、快感はなかったわよ」

夫とのセックスに愛はあったが、快感はなかった。
璃宇がその言葉をじんわり噛みしめていたら、もう一人の璃宇は面白そうに言った。

「ねぇ、愛はなくてもセックスできるか、試してみたら?」

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