在留外国人&外国人支援者向け☆ニュースレター#03「手取り額」~日本の給料のしくみを知ろう~
みなさん、こんにちは。
AICA VISA取得アドバイザー
行政書士の岡田裕子です。
(Immigration lawyer Yuko Okada)
今回は「手取り額」~日本の給料の仕組みを知ろう~というテーマをお話ししたいと思います。
この記事を読むと、
・ 手取り額の意味
・何が給料から引かれているのか
・給料から引かれる理由
・誤解やトラブルを防ぐためのポイント
について知ることができます。
外国人の労働者から聞かれる不満の中に、
「給料が最初に言われてた金額と違う」
「約束していた給料をもらっていない」
そんな声を聞くことがあります。
どちらも、自分が思っていたよりもお給料が少ないという訴えです。
この部分だけを切り取って聞いてみると、
「ひどい会社だ!!」
「ブラックな会社に勤めてるのか」
「外国人労働者から企業が搾取しているのか」
企業が法律違反を犯している。
そんな風に捉えてしまいがちです。
でも実際はとてもシンプルな理由
日本のルールがきちんと相手に
伝わっていないことから生じている
**「誤解」 ** なのです。
日本のルールでは、
従業員が会社から給料を受け取るとき、
税金や社会保険料があらかじめ
引かれた後の金額を受け取ります。
これを「手取り額」といいます。
法律によって、
税金や社会保険料を従業員に代わって
会社が国や市町村に支払うことが
決まっているからです。
給料から引かれる税金や社会保険料には、
次のようなものがあります。
・所得税
・住民税
・健康保険料
・介護保険料
・厚生年金保険料
・雇用保険料
これらの給料から引かれた税金や社会保険料は、
会社がまとめて国や市町村に支払っています。
決して会社が従業員のお給料を勝手に使ったり、
減らしているわけではありません。
従業員一人一人が自分で国や市町村に
手続きをするのは、とても大変ですね。
だから、会社が代わりに手続きしてくれているのです。
では、給料から引かれる税金と社会保険料
の内容について詳しく解説します。
・所得税・・・毎月の給料の金額から計算される税金です。お子さんなど養う家族の人数が多い人や家族に障がいを持った人がいる場合は負担が少し軽くなります。
・住民税・・・自分が住んでいる市町村に支払います。前年1年間の所得によって決まる税金です。前年1年間の所得が一定額より少ない人には住民税はありません。
・健康保険料・・・従業員と家族の病気や怪我に対して支払われる保険です。
・介護保険料・・・健康保険に加入している40歳以上の人が対象です。
・厚生年金保険料・・・65歳になった時や仕事以外の原因で死亡したり障がいを負った時に年金が支払われる保険です。
・雇用保険料・・・失業した時にお金を受け取るための保険です。失業保険のことです 。給料の額に比例して増減します。
ボーナス(賞与)が支払われるときにも
住民税以外の税金と保険料が引かれます。
労災保険というものがありますが、
これは従業員の負担はなく
費用の全額を会社で負担しています。
雇用する企業側は、面接の時など給与の説明をするときに雇用契約書に記載する金額を説明することが一般的でしょう。
相手が日本人であれば、そこから税金や社会保険料が引かれておよそを手取り額がいくらになるかということを計算することができます。
しかし外国人の人は、このような日本の給与の仕組みを理解していません。
誤解されたり後でトラブルにならないようにしっかりと説明しましょう。
誤解を防ぐためのポイントは次の3つです。
①給料からは税金と社会保険料が引かれる。
雇用契約書や労働条件通知書に書かれた給料の金額よりも、本人が受け取る手取り額は少なくなります。
養う家族の人数によって税金の額は変わりますが、およそ給料の約20%程度が引かれます。
およそ給料の約20%というと、
給料が20万円の人は4万円ほど引かれて手取り額は約16万円という計算です。
特に家族がいる場合、20万円だと思っていた給料が16万円だとびっくりしてしまいますよね。
このような仕組みであるということを、
最初に話して理解してもらいましょう。
②入社2年目になると住民税が引かれるようになる。
住民税は前年1年間の収入によって金額が決まります。学生から社会人になった人の場合アルバイトのお給料では住民税を課税される基準に達しない場合があります。
その場合1年目は住民税の課税はありませんが、2年目の6月から住民税が引かれる予定となります。
住民税が引かれる分、手取り額が減ってしまいます。
お給料が減ったと驚かないようにあらかじめ説明しておきましょう。
③厚生年金保険に加入するため保険料も引かれる。
外国人社員の中には、数年後に帰国する予定で日本の年金をもらうことはないため、年金の保険料を払いたくないと言ってくる人もいます。
このような申し出があったときは、
次の4つを説明して理解を得ましょう。
・厚生年金保険料の支払いは日本の法律で決まっているということ
・厚生年金保険は65歳以上になってからもらう年金だけではなく、死亡したり障がいを負って仕事が出来なくなったりした場合に、遺族年金や障害年金を受け取ることができます。
従業員と家族の万が一を支える保険です。
・帰国した場合は、請求すれば脱退一時金が支払われます。保険料は無駄になりません。
・ビザの更新や変更、永住許可申請、帰化申請をしたい場合に社会保険料の支払いは必須です。
まとめ
採用を検討している外国人の方にお給料の話をする時は、必ず契約書通りの金額だけではなく手取り額について説明してあげるといいですね。
お給料に対する認識の違いは致命傷になりかねません。
今日本で既に働いている外国人の方も、転職する時は「手取り額」について、しっかりと確認しましょう。
今回は、日本の給料のしくみ「手取り額」について解説しました。
また次回、お会いしましょう!!