ショートストーリー:笑顔
「大きくあたりますように。」優しい笑顔とともに明るい声が返ってきた。
好きな数字を組み合わせる宝くじに結構当たっている、という芸能人の話をテレビで聞き、通勤途中の売場で週1回購入することにした。
ジャンボは買ったことがあるが、数字を組み合わせて購入するくじは初めて。こだわりの数字はないし、窓口で迷いたくないので、自動的に数字を選んでいくつかのくじにしてくれるパックを購入することからスタートした。
窓口はいつもは女性1人だったが、2人の人が交代で座っているようだった。
1人は、大きく当たりますようにと声をかけてくれる女性。もう1人の女性は、少し疲れ気味なのか販売店で決まり文句の「ありがとうございました。」がない時もある。
こうなると笑顔と共に当りますようにと言ってくれる女性の方が、当たるような気がしてくる。窓口が笑顔の女性の日は、縁起がいい気持ちで1日を過ごした。
しばらく連続して疲れ気味の店員さんだった。なんだか当たらない気がして、気持ちを入れ替えようとパック購入から1種類のくじに変更した。
何年ぶりかのマークシート。クイックピックというのを選択すると、自動的に数字を選んでくれる。
その日の窓口は疲れ気味の女性。購入したくじとマークシートが返却された。
なぜシートが返却されたのかピンと来ず、ハズレくじと共に処分した。翌週、窓口はまたあの女性でシートが返却された。しばらく考えて、やっと次回に使用すればよいことに気づいた。
「お姉さん、教えてくれてもいいじゃない。」と思いつつ、「そうだこの女性は喋らないだった。」と1人納得。
次の週、窓口はまたあの女性だった。当りそうにないなぁ、と思いつつシートを出す。
シートが返却され、「クイックピックなら窓口で言ってもらうだけでいいですよ。」という声が聞こえた。
え、喋った!しかも笑顔!!
何だか嬉しくなり「良いことを教えてくれてありがとう。シート持ち歩くの面倒だったんですよね。」と返すと、「そうですよね。口頭でどうぞ。当りますように。」
女性は人見知りなだけだったのか、いい笑顔で見送ってくれた。これからは彼女から購入しても、当たりそうな気がするし、買った後も気持ちよく過ごせる。
笑顔の力を感じつつ、高額当選を狙って今日も窓口へ向かう。
ありがとうございます^_^