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スプリング・ハズ・カム

先週はほぼ毎日Bさんと飲んでいたが、今週のBさんは、接待やら送別会やらで忙しいらしい。

私たちはいつも前もって約束するわけではなく、飲みに行く日はたいてい仕事終わりのBさんから「飲みたい!」と短くLINEが来る。19時くらいまでに連絡がなければ今日は無しだなと判断し、ひとりで適当に夕食を済ませることにしている。
(たまに、食べたあとでお誘いが来る日もある。そういうときはお酒だけ付き合う)

ただし接待の日は会えないかというと、必ずしもそうではない。
私の家は市内随一の繁華街から徒歩圏内にあり、Bさんの接待は99%その繁華街で行われるため、接待帰りのBさんがうちに泊まることもあるのだ。

おきてる?

とLINEが来て、「おきてる」と返すと

今から行っていい?

と来る。
いいよー、と返して待つ。
数分後、少しふらついたBさんの姿がインターフォンに映る。

接待だとあまり食べられずにお酒ばかり飲んでしまうらしく、うちに来るときのBさんはお腹を空かせていることが多い。
まずお水とミラグレーンを飲ませてから、家にあるものを何かしら食べてもらう。といっても私はろくに料理をしないため、冷蔵庫にあるのは煮卵(これだけは大好きなので、白だしに漬けたりカレー味にしたり、いま流行りの麻薬卵にしたりと毎回アレンジを変えて常備している)ぐらいだ。何もないときは納豆とか鯖缶とか冷凍の焼きおにぎりを出す。何を出してもうまいうまいと食べてくれるので嬉しい。

見方によっては「飲み会の場所から家が近くてごはんも用意してくれる都合のいい女」のように見えるかもしれないが、接待だからタクシー代は出るはずだし、私の家で出せるレベルの食べ物はBさんの家にもあるだろうし、何より自宅に帰ったほうが次の日絶対にラクなはずなのだ。私の家に泊まった翌朝、Bさんはたいてい5時台にうちを出て一度自分の家に戻り、シャワーを浴びて着替えてまた出社している。申し訳ないくらい大変そうである。
それでも私の家に来てくれるのは、Bさんが私に会いたいか、私がBさんに会えたら嬉しいことを解ってくれているかのどちらかで、どちらだとしても私は嬉しい。
なので一緒に寝ながら、「来てくれてありがとう」と伝える。
Bさんは半ば意識を失いつつもハグで返してくれる。

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東京から数日遅れて、私たちの住む町でもいよいよ桜の蕾がほころび始めた。
今週末は私が大阪に行ってしまうんだけど、来週末まで桜もってくれるかなー。お花見できるかなー。そもそもBさん、一緒にお花見なんかしてくれるのかなー。嫌がられるかなー。

そんなことを悶々と考える、まあ要するに、春です。

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佐久間ゆい
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