釣り&キャンプ-1 シンプルでコンパクトに
「キャンプ、するんでしょ?」と聞かれることがあります。
まぁ、20数年前のアウトドアブーム(実際はオートキャンプ・ブームでしたが)のときは、いまはなき『Outdoor』誌を中心に、そのほか一般誌の単発の特集やムック本の、編集/執筆/ロケのヘルプといった活動で、むしろそのブームを作る側でしたし(創刊企画も3つくらい関わった)、テント他は一式どころか、撮影用小道具として3式くらいありますが……実際に個人的に行くか?というと(40代から広範な食アレルギーが出たせいもあり)、今はほとんど行っていません。
まぁ、ブームの最中は毎週何かしらのロケがありましたから、あの数年間で、一生分キャンプしたかもしれません(笑)
ただ個人的にやるならば、できるだけ小さく、コンパクトに、設営/撤収の時間も短くして、食事も簡単なものにしますね。昨今流行りの「登山キャンプ」「ソロキャンプ」風でしょうかね。釣り場のそばに泊まって釣りがしたいとか、そういうキャンプ以外の目的があってのキャンプなので(前記のように目的=仕事の場合もありますが)。
前書き、あるいは元アウトドア雑誌編集者の愚痴
で、本題の前に「そもそも……」を書かせていただきたいのですけど。
もう何年もの間、世間ではアウトドア・クッキングがキャンプの目的みたいになっていますが、あれは作り手の都合だったんですよね。
で、このへんを裏話しつつ愚痴りますが……。
ごく初期の、ブームとして社会に認知される少し前=それまで売れていなかった雑誌やグッズが売れ始めた頃は、他の楽しみもキャンプのスタイルも多様だったんです。
このあと、ミニバンが次々発売された頃に社会が気づいて、爆発的にブームが拡大します。自動車メーカーやその他諸々の広告の受け皿的に「ファミリー・オートキャンプ」と銘打った雑誌やムックが次々と出ます。
このとき! スタッフとして、アウトドア雑誌でもページが多く割けない、比較的マイナーなアウトドア・スポーツ志向の人、そして自動車雑誌にいた特にアウトドア趣味のない人が大勢流入しました。
で、そういう方々がオートキャンプに絡めるのは、料理以外になかった。
(ぶっちゃけ、その野外料理の道具さえ持っていなかった人もいましたからね。「メーカーから借りられないから」と、編集部からの要請で、私の個人装備を貸したことすらある)
となれば出せる本の主軸は、道具のカタログと、野外料理になってしまう。
さらに用品メーカーさんも、キッチン周りのいろいろな小道具を売りつけるには、キャンプ料理は好適なので広告もバンバン出る。ますます道具のカタログと料理ばかりの本になる。
そんな本が本屋さん(ネット以前の時代なので)に山積みされれば、読者も「キャンプって料理を楽しむんだなぁ」と思いますよね。
それだけならまだしも、ダッチオーブン等の、いきなり初心者が使えなさそうな調理器具までガンガン売りつけにかかる=出版社もそういう本を出す。なぜかガーデン・パーティ用のBBQグリル(キャンプ道具と一緒に車に積めます?)までカタログに載っている本すらある始末……。確かに、そういう大きな用品や豪快な料理はページを派手に埋めてくれますけどね。
そんなところから「キャンプ=凝った野外料理」が今に至るまで、定着しちゃったんですね。元は「毎回カレーと焼きそばとBBQじゃ面白くないよね」的な話だったのが……。
キャンプで凝った料理、を否定するわけじゃないんですけど、見ていると「キャンプに行ったらなんか力の入った野外料理をしないといけない」雰囲気がね、違和感がありすぎるんです。
キャンプサイトもご飯もシンプルにして「遊びに注力」する、あるいは「ひたすらのんびり」する、というのも「あり」のはずなんですが……。
* * *
まぁ、愚痴(?)はさておき、実践的な「釣り+キャンプ」の話に移りましょうね。今回はまずキャンプスタイルの概要から。
ソロ/登山ベースのキャンプ用品を選ぶ理由
キャンプ場近くの小川や湖で小物釣りをちょっと、というなら大した荷物にはならないでしょうが、真剣に釣りをするためのキャンプとなると、必然的に荷物はメチャクチャに増えます。でも自分の持っているクルマの大きさは決まっています。ルーフキャリアを使ったとしても拡張できる量はしれたもの。大型SUV、ミニバンだって、積載量は有限です(衝突安全の都合から車体前部が延びたため、車体長に対する荷室長は縮まる傾向ですし)。
そこでまず荷物の減量なのですが、釣りがメインならば、釣具は減らせません。必然的に減らせるのはキャンプ道具です。
では、何を減らすか? まずはテントをロッジ型やファミリー用大型ドームテントではなく、山岳用にします。居住性を考えると4名用の山岳テントを2名で使うといった感じでいいでしょう。それでも収納サイズ的には、ファミリー用の背の高い、ポールを多数使ったテントに比べれば数分の1。設営時間もあっという間(それもひとりで!)です。
ただし、ゆったり寝られるように寝袋は封筒型、マットはエアベッドや膨張型の厚いマットにする(地面が凹凸でも硬くてもOK)。寝袋はともかく、エアベッドはそこそこ小さく収納できますし。
あと、快適性をアップするのが薄手の銀マット。テント内に敷き詰めておくだけで、真夏以外は快適度が大幅に向上します。やっぱり地面って冷えるんです。
薄手といっても食器棚なんかに敷くのはちょっと薄すぎますので、一応3mmくらいある、ホームセンターなんかで1畳〜2畳サイズで売っているものがよいです。荷室への積載時も、畳んだものを荷物同士のクッションにしたり、全部積んだ後に上に並べてかぶせたりできます。
ただこの銀面の裏の発泡シート、地面の水分を直に吸い込むと急激に劣化しますので、直に土の上や芝生に敷くのは厳禁です。あくまでテントの中専用です。むしろ荷物の一時置きといった用途には、ちゃんと防水されたブルーシートが必携です(次回、時短テクニックで解説します)。これも畳んでしまえば荷物の隙間などに入りますので複数あると良いでしょう。
椅子やテーブルも最小限レベルまでコンパクトにします。直に座れる施設があれば不要ですが、そこまで整っている場所もあまりないので(地面や石の上に座るのは長時間になるときついです)。
椅子のおすすめは肘掛のないタイプの、筒状にたためるものです。いっそアウトドア用パイプ椅子の「大」でもOKです。なぜか肘掛付きが多いのですが、キャンプサイトの地面では椅子が引き摺れませんから、横から座り込むことも多く、肘掛けは不便なんです。収納時のかさも増えますし。
もう一点。食事用の椅子なので、踏ん反り返って座るタイプは安楽に見えて、お腹がつかえて食べにくいです。座面が水平なものを選びましょう。
テーブルも、この後で説明する料理と関係しますが、60cm x 60cm〜60cm x 90cmくらいでいいです。ないと不便なので持っては行きますが、いっそ、ツーバーナーの台(ハイスタンド)に乗せて固定できるように加工した板でも十分です。
私自身は荷室に収納しやすい寸法で、ハイスタンドに固定できるようなものを複数自作しました(のちのち解説するかも)。
最近あまり見なくなりましたが、4人分の腰掛とテーブルが一体になっていて、真ん中にパラソルの穴があり、収納時はカバン型に畳み込めるやつなんかは買っちゃダメです。完全に水平&平面な場所以外には設置できないだけでなく、どこか1ヶ所が壊れただけで(主要パーツはプラスチックですから事故率高いです)、全員の椅子/テーブルがなしになってしまいます。必ず椅子とテーブルは個別に選びましょう。
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自分のキャンプ道具一式を撮影した写真はないのですけど……。かなり以前ですが、手持ちの道具に編集部から撮影に必要な大ぶりな椅子などを数点借り出して加え、自分が当時乗っていた初代レガシィ後期型(5ナンバー)でロケに行ったのが、本(絶版)になっていますのでリンクします。
● 参考資料 26ページ〜32ページ「キャンプ用具の実践的積載術」
(何度も流用された使い古しですが、すでに出版社がないですし、こういう引用をしても良いでしょう。そもそも契約外と見なされる流用なので)
一見てんこ盛りですが、注目は最初の車の後ろに全部下ろしたメイン写真。これが私の基本装備に一番近いです(テントしか張っていませんがウイング型タープも含まれています)。これだけあっても、5名乗車状態で荷室のみに3人分を積載し、荷室カバーが掛けられます。もちろんルーフキャリアを使わずに、です。
1〜2泊の着替えなどは後席1人分くらいに載りますから、大物用クーラーや巨大タックルボックスといった釣具がない限り、後方視界をある程度確保した状態で3人、ルーフボックスありなら4人乗車もできますね。
次回、細かくやるつもりですが、ざっくり上のようなイメージです。
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一方こっちの写真は……某誌のロケ=父子のキャンプ&フィッシングという名目で、編集部が借り出しのオーダーをしたものを、釣りロケが終わる待ちの時間に、ひとりでセッティングをしたときの記念写真です。
自分用の寝袋とか、借り出したものだけでは季節的に不足するもの、ロケ隊(自分、カメラマン、編集)向けの椅子などを追加しただけで、レガシィ(2代目)の後席を倒して、後ろが見えないほど積み込む必要がありました。ですから、設営や撤収時間を考えても、父子2人のキャンプでこれ、というのは実際には不可能です。まして釣りもして、子供の面倒を見ながらサイトの設営&凝った料理なんて、できるわけがなく……。
アウトドア専門誌は嘘がつけませんが、それ以外の本で設営やサポート、ヘルプの依頼があった場合は、リアルさより見た目重視だったので「行ってみたらこんなだった」事案は何度かありました。運ぶだけなら、車を増やせばいいので(自称ベテランたちの豪華キャンプも、各車1〜2名乗車で大勢集まるので、凄い物量です。家族キャンプの参考にはなりません)。
でも雰囲気写真一発ならともかく、誌面に細かくHow-Toを載せるとなると、やっぱり専門誌の方が見た目はよく……。これはもうロケのやり方が、それ以外と根本的に違うからなのですが。
料理は後片付けも考えて簡略化
続いて料理関係なんですが……。もうね、なんか凝ったものを長時間かけて作るのは諦めましょう。第一、釣りに来たんですから、朝晩のベストタイムにかかる時間帯に料理をしたり片付けたりするのはもったいない。夜も寝られるならば、早朝に備えてさっさと寝たい。
現地の食材で何かしたいという気持ちも否定はしませんが、そのぶん、人か時間が犠牲になりますので、私はお勧めしません(自ら「釣りなどはしないので料理に徹する」と言う人がいる場合は別ですけど)。あと、後述する環境負荷の問題もあります。
ということで「火」周りも、プレヒートやポンピングの必要なガソリン・ツーバーナー、炭をおこす手間のかかる炭焼きBBQグリルではなく、ちょっと焼くとか湯を沸かすだけに特化したい。ならば一瞬で点火できるガスを使ったコンロがベストです(標高が高い、寒冷期である、などで気温が低い場合は寒冷地用の対策が必須)。同時にコッフェル(鍋釜類)も食器も最小限に。献立的に山岳用でいけるなら、それが最高!
料理そのものも、最近はおいしいインスタント食/レトルト食がありますので、それを楽しむのも一案。高級レトルト・パスタソース/レトルト・カレーもあります。さらに今では高級店とタイアップした製品や、さまざまなご当地カレーなどを事前にお取り寄せもできますし、そういう食事を楽しむ場と考えてもいいのでは?
あと参考になるのはピクニック系=サンドウィッチのように、ある程度自宅で加工した食材を現地で組み合わせるだけのもの。これも、なるべく汚れた食器や野菜くず、食材の切れ端などを出さないアイデアです。
なぜここまで絞るのかというと、後片付けの容易さが重要だからです。時間がもったいないこともありますが、山奥、海岸など釣り場に近いキャンプ場は、きちんとした排水設備がなかったりするのです。キャンプ場へのゴミ処理委託も限度がありますし、管理人のいない場所では「全て持ち帰り」なんてことにもなります。
食器はキッチンペーパーで汚れを落として、生分解性の洗剤を少しだけ使ってきれいにするくらいで留めたいんです。野菜クズ的なものも出したくない。大量のお湯が必要な麺類は避けたい。揚げ物はもってのほか。
さらに条件によっては(資源的に問題ありですが)、使い捨ての紙皿の方が、キャンプ場周辺の環境負荷的にはエコだったりします。
それでも車で行くことを考えると、ゴミの持ち帰りも含めて、登山系ソロキャンプより自由度が高いですが……。
なお1〜2泊程度なら、空腹を埋めるためにロールパンなどそのまま食べられるパン類などがあると、本当に助かります。インスタントやレトルトの1食って、ちょっと足りないんですよね。もちろん、ロールパンは焚き火などで炙っても美味しいですし。
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えっと……。
どうしても昔いろいろやっていた(頑張っていた?)ジジイの愚痴っぽくなってしまうので、今回はこの辺まで(すみません)。
次回は積載手順とか、時間割とか、時短テクニックとか、そのへんのもっと実用的なことについて話しましょうね。