小物釣り入門・川編-1「エサをどうする?」
ちょっと要望があったので、以前書いていた「フライフィッシング入門」と同じように、少々普通の入門記事とは異なった視点から、海川の小物釣りについて書いてみたいと思います。あんまり話が広がるのもなんですから、リールを使わない、延べ竿での小物釣り限定とさせていただきます。
本稿は「心身の健康のための、近所で楽しめる気軽な小物釣り」を想定しています。竿も短めの延べ竿+ウキ釣りです(マガジンはこちら)。
同様のコンセプトの海釣り編もあります(マガジンはこちら)。
まず初回は釣り道具ではなくてエサの話から。
「ミミズとかはちょっと」
という方、多いと思うんですよね。それが第一のハードルになってしまう。「釣具店に入りにくい」なんて声もありましたが、イメージの点で、このエサをどうしたらいいのか?というのは、まっさらの入門者にとって、大きな障害です。ルアーや毛鈎は難しそうですしね。
でも、虫エサを使う必要はないのです。考えてみれば、川の小物釣りならご飯粒やパンの切れ端でいい、海ならオキアミでも魚の切り身でもいいわけで……。
※かく言う私も、ミミズやゴカイは大丈夫なのですが、柳虫、ぶどう虫などという蛾の幼虫=イモムシ系はどうにも苦手なので、「虫エサは生理的に無理!」という人の気持ちはわかります……。
釣具店には小麦粉やマッシュポテトなどを主成分とする練り餌というものもありますし、今では生物由来の生分解性プラスチックに集魚材を混ぜ込み、ゴカイやミミズなどの形にしたものもあります。興味を持ったのに、エサを理由に釣りに行かないのも、もったいないですよね。ぜひトライしてみてください。
●人間の食べ物でなんとかする
ご飯粒はちょっと難しいですが、ふだんスーパーやコンビニで目にするものの中にも、釣りエサになるようなものはあります。海釣りだと「おつまみ類」などでぐっと幅が広がるんですが、今回はまず、川釣りに絞ります。
代表的なのは「魚肉ソーセージ」でしょうか。他の練り物もいけますが、コストパフォーマンス的に、こいつが一番でしょう。魚の口に入るサイズに刻んで使います。ウグイやオイカワ、いわゆるハヤの類はこれで十分にいけます。流れがあってもハリから外れにくいのもありがたいですね。
※「ハヤ」の類は各地で名前が違うことがあります
ウグイの地方名:ハヤ、クキ、イダ、アカハラなど
オイカワの地方名:ヤマベ、ハエ、ハヤ、シラハエなど
このほかアブラハヤ、タカハヤ、カワムツ、ヌマムツなどといった魚が、同じような河川の中流〜上流域に生息しています。
続いて「黄身練り」と呼ばれる練りエサです。これは卵の黄身に小麦粉を混ぜて、ハリに付けられるほどの硬さにしたもので、モロコ、モツゴ(いわゆるクチボソ)やタナゴなどには効果があります。小ブナ、コイっ子も釣れますね。ただ柔らかいので流れの強い釣り場には不向きです。
釣具屋さんで集魚材粉末を買えるなら、基材に細めの麺類=「スパゲティ」や「素麺」「冷麦」も使えます。これらをクタクタに茹でたもの(お湯に浸しておくのも可)を魚の口に入る大きさ(3〜5mm)に刻み、集魚材粉末では最も有名どころの「サナギ粉」をまぶします。このサナギ粉というのは、絹糸を取ったときに繭の中に残っている「カイコのサナギ」を粉末にしたもので、見た目は匂いのきつい(香ばしいと言えないこともないけど基本的に臭い)ただの茶色の粉です。
※なお、うっかり閃いてやらかす人がいるので、あらかじめ注意しておきますが、サナギ粉を入れたお湯に麺類を入れて煮込む!とかは、絶対にやってはいけません。室内に凄まじい匂いが充満する割に、サナギ粉は水には溶けないので麺には匂いも色もつきません(経験者談)。
エサの作り方は簡単で、百均で売っているような小さな密閉容器に少量サナギ粉を入れて、茹でて刻んだ麺類を入れ、蓋をしてよく振ればOK。ハリに付けやすく、流れにも強く、コイやフナからウグイ、オイカワまで釣れる良いエサです。水に洗われて真っ白になったら、まだ密閉容器に入っているサナギ粉を付けてやりましょう。
茹でるときに、食紅などで麺を染める人もいるようです。魚には赤い色がより好まれる、水中で目立つ、なんて言われていますので……。焼きそばやラーメンなども使う方がいるようですが、このへんはもう、個人の探究心の問題ですね。
匂いという点では、昔から「酒粕」や「おろしニンニクの絞り汁」なども練りエサに入れる集魚材として使われてきました。隠し味的に、市販の甘酒やチューブ入りニンニクを少し、上記のエサにチョンチョンと付けてみる、また、下で紹介する練りエサに混ぜてみるのも面白いかもしれません。
※追記:記事の公開後、サナギ粉の代用に、出汁に使う「煮干し粉」はどうだろう?という提案がありました。確かに魚粉ですから、効果はありそうですし、それなら食料品店で手に入りますね。試す価値はあります。
また「いりこ出汁」系となると、さらに旨味成分を加えるためにアミノ酸や酵母エキスを添加したものなどもあり、こうなると釣り餌の集魚材と大きく変わらないんじゃないかな?とも思います。
●釣具店で練り餌を買う
シンプルな発想はこれですね。使い方や対象魚もパッケージに細かく書いてあります。今は入門者向けに、すでに成形されていてハリに付けるだけのもの、水と簡単に混合してちょうどいい硬さに練ることができるものなど、とてもよくできたものが売られていますので、ここでは専門メーカーの製品を紹介するだけで十分でしょう。
なお使い残しに関しては、常温保存品でも、うっかり何かの虫が入り込んだりしないように、袋の封をきっちり閉めたうえで密閉容器に保管すること。さらに用心して虫の侵入を防ぐためには、(許されるなら)冷蔵庫保管が良いと思います。
●釣具店で買える虫エサ
ミミズはちょっとハードルが高い人でも、熱帯魚などの餌に使われる「赤虫」は大丈夫という人もいるかもしれません。釣りエサ用は観賞魚用よりもやや大ぶりです。基本的に中の体液が出てしまわないように固い頭の部分(黒色)にハリを掛けますが、あえて食い込みの良さを重視して、胴体の真ん中あたりを刺すこともあります。
対象は小ブナ、コイっ子、モロコ、モツゴ、タナゴ類など。ドジョウや、ヨシノボリのような小さな淡水ハゼが釣れることも。中下流域に生息するミミズの対象魚とだいたい同じなので、消耗は激しい(赤い体液が流れて白くなってしまうとダメ)ですが、万能エサと考えていいでしょう。
微妙なところは「サシ」ですかね。養殖された小さなハエの幼虫=蛆虫なんですが、5mm程度なので大丈夫という人もいるかも。ちなみにワカサギ釣り向けには食紅でピンクに染めたもの「紅サシ」が売られています(可愛いと言っていいのか微妙)。このエサの対象魚はハヤの類ですね。流れのあるところで多く使われます。かなり激しい流れの中でもハリから外れにくいのが決め手ですね。もちろん、フナやコイなども釣れます。
釣行予定が一週間伸びてしまった!みたいなときは、買い置きしておくと焦げ茶色のサナギになってしまうことがありますが、パッケージ袋の中のおがくずを少し、湿らせておくと、サナギになるのを遅らせることができるようです(子供の頃よくやった)。また昔は、釣りに出かける前にバターを食わせて、柔らかく、香りを良くするなんて人もいましたが、今はどうなんでしょうね。
文句なしの一級エサ「ミミズ」は古い釣り用語では「キヂ」「キジ」と呼ばれます。体液が黄色いので黄血ということですが、パッケージに堂々と「〜〜みみず」って書いてありますので、もう死語ですね、たぶん。
言うまでもない川釣り万能エサです。コイやフナはもちろん、川のずっと上流のイワナやヤマメ、アマゴ、ニジマスも釣れます。
釣具店で売られているミミズは、紙パルプの滓などの処分用を兼ねて養殖されており(パッケージ内にそんなものが入っている商品も)、一時は人間の食用にも研究されていたというほどですので、清潔ではありますが……効果的ではあるものの、この時代、たぶん無理に使う必要はないですね。
※釣り糸、鈎はもちろん、オモリ(鉛)も環境にとってはよろしくありませんので、帰るときには釣り場に放置してはいけません。むしろ、そこに捨ててある糸や釣り仕掛け、パッケージなどを見つけたら、ゴミとして回収していく方向で。釣り場近くのゴミ箱などに捨てると、拾い上げてイタズラする輩がいるので、できるだけ自宅まで持ち帰って処分してください。
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なお、姉妹編 フライフィッシング入門・目次 はこちらからどうぞ。