釣り&キャンプ-2 釣りの時間は譲れない(前編)
さて。コンパクト装備と食の簡略化をもう一度おさらいしておきます。
●テントは山岳用の小型軽量、収納時もコンパクトなものを、設営時間の短さも考えてチョイス。ただし収容人員はゆとりを持つ。
●タープは使うなら2本ポールのウイング型がコンパクトで設営も簡単。
●寝袋に限っては、ゆったりと寝られる封筒型にすることで快適さを確保する。釣りなどの野外活動を考えると、疲れを取るのは最優先。
●マットは地面の凹凸や硬さを気にせずに済むエアベッドが小さく畳めるのでオススメ。テントの床に薄手の銀マットを敷いておくと快適さが増す。
●椅子は横から座ることもあるので肘掛のないタイプ。筒状に畳めるものがオススメ。座面が平らでないと食事の時に腹がつかえる。
●テーブルは必要最小限サイズ。車への積載状況によっては自作も一案。
●食事内容は「高級店のお取り寄せレトルトでもいい」くらい柔軟に。
●コンロなどの燃焼器具は湯沸しやちょっと火を通すことがメインなので、着火を含む取り扱いが簡単なガスがベスト。寒冷地対策はしたい。
●鍋釜(コッフェル)、食器は、食事にもよるが山岳用で考えてもよい。
●いろいろ使えるのでブルーシートは数枚持っておく
みたいな感じですね。では、今回の本題に入りましょう。
まず積み込みから始まるキャンプの時短ワザ
いやホント、適当に積んじゃダメなんです。スムーズに事を運ぶ=時短です。出発前のこの時点からその「技」は始まっているのです。
ブーム当時のTV番組で「キャンプ道具積載王」みたいな企画があったんですけど、メジャーアウトドア誌など複数でクルマ記事を担当していた私には一切、声がかかりませんでした。でも「ブッチギリで圧勝してしまうからでは?」という話があちこちの雑誌スタッフから言われたくらい、毎月何回ものロケで、違うタイプの車にキャンプ道具を積んでましたね。
で、積載の手順なんですが、まず、一番奥がテントの中に入れるもの=寝袋とマットですね。全部設営して、最後に出すもの。
「走行時のバランスを考えて重量物になるクーラーボックスを奥にすべきだ」と言ってた自動車評論家がいましたけど、それでは途中での買い出し(氷とか飲み物なども含みます)ができません。
次がテント本体、食器とか鍋釜類、ランタンなどの小物の入った袋やコンテナ。さらに手前にクーラーボックスと水タンク、コンロ類。
クーラーボックスと水タンクは助手席側がよいです。運転席側はどうせ死角で見えないので、着替えや釣具などの荷物を積み上げても大丈夫=積み上げない方にクーラーボックスやポリタンクを置きたいのです(食材の買い出し同様、水はキャンプ場で汲むとは限りません。例えば下の写真)。
ロープやペグをまとめた袋もこのへんに。これはタープの設営に関わりますので。
そして一番最後に椅子やテーブル、コンロ用スタンド、タープとそのポールを積み込みます。これ、理由は簡単で、まずキャンプサイトに到着したら、一時的な物置台として椅子やテーブルを使いたいからなんです。
これ普通だと、テントからセッティングしたいと考えるんですよね。ただ設営というのは手荷物や着替えなど、地面に直置きしたくないものがいっぱい出ます。キャンプ地に着いた直後って、いろいろ必要なものがありますし……車の外に出た途端、暑い/寒いなんてのは、もうごく普通で。
ブルーシートなどを広げるのも一案ですが、大物から小物まで、いちいち前かがみになるの、腰が大変でしょ?(シートは複数持っていた方が、何かと応用がききますけど)
設営の手順
さて、設営は積載と逆の手順になります。前述のように椅子やテーブルを出して、荷室のキャンプ用品の上に積んでしまった着替えなどの荷物や「どこいった?」となりやすいロープ/ペグの袋などの小物をそこに移します。
次に、どう見ても問題の生じない真っ平らなキャンプサイトを除き、まずやりたいのがテントの位置決め。予定の場所に、テントの床と同サイズくらいの、防水性能のきちんとしたブルーシートを敷きます(まだテントは張りません)。この時点で「寝られるフラットさがあるか」「寝ていてずり落ちてくるような傾斜はないか」などを確認します。百均の薄くて防水性能のないシートは不可ですのでご注意を。
昔ながらの「テントの周囲に雨水を流す溝を掘る」はとっくにタブーなのですが(テントの床がバスタブ型=周囲に立ち上がっているものがほとんどなので構造的にも不要です)、稀にまだやっている人がいて、平らなはずのキャンプ場でも、地面がデコボコだったりします。
ブルーシートの上にテントを張るのは、時短テクニックとしてはかなり重要です。土や芝生の湿気というのは相当なもので、テントの床はいくら防水加工が施されていても、一晩経つと乾かさなければ袋には収納できないくらい湿気ているんです。帰宅前にひっくり返して乾かすのは常識です。
が、ブルーシート1枚でそれはクリアできます。帰宅前に一気に畳めるだけでなく、帰宅後に再びメンテナンスとして乾かすのも短時間で済むのでオススメです。ブルーシートそのものはすぐ乾きます。使用後は、袋に入れて荷物の隙間に突っ込んでおいても、上に乗せておいても構いません。
* * *
テントの位置と向きが決まったら、テントを張る前に、そこを基準としてタープを立てます(季節や天候によっては省略可。なお焚き火をするときは火の粉による穴あきを警戒して張らないほうがいいです)。
ポール2本で済むウイング型がコンパクトで、張るのに時間もかからないんですが、どうしても張り綱が大きく展開しがちなので、キャンプサイトによっては(区画されていて車の場所も決まっているとか)長方形のタープが必要になったりもするのですよね……。
長方形のタープは、条件に合わせてさまざまに変形させられるので便利ではありますが、ポールやロープが多数必要なのと、それゆえにかさばる、設営時間がかかるという欠点があります。
自立式はタイプいろいろですが、結局はロッジ型テントのようなポール/フレームが必要になるので、さらにかさばる(&時間がかかる)のが欠点。小さいロッジ型テントのフライシートとフレームだけ持って行ったこともありましたが、これでもかさばる上に思いのほか狭くて……。
で、タープを張るときに一番簡単、時間の短縮になるのは、50〜60cmくらいあるランタンポール用の超大型ペグ、あるいはぶっ込み釣り用の竿掛けを打ち込んで、そこへ最初のメインポールを、両端がフックになったラバーコードなどで固定し、自立させてしまうことです(地面が硬いと刺さらない/立てたあとに位置調整ができないという欠点はありますが)。
ただし自立しているといっても、反対側はロープとペグでテンションをかけるので、逆方向にテンションをかけるためのロープとペグは通常通り必要です(これをやらないと引っ張られて徐々に倒れてくることも)。
もちろん、誰かにポールを立てて持っていてもらえれば、ずっと簡単になるのですが……なかなか思うようには。慣れてくれば、タープ本体の重量とV字にしたロープを上手く使って、ひとりでも立てることは可能です。
なお、ロープのペグ側はアルミでもプラスチックでも良いので「自在」をつけて長さとテンションを調整できるようにしておくこと、ポール/タープ側にループをつけておくことは必須です。こういうものは、キャンプに出かける前にガシガシと細工しておきましょう。
あと、打ち込むときに使うハンマーは、ホームセンターで大きめのゴムハンマーを買ってきて使うと楽です。付属の金属製のものでは重さも長さも足りませんし、衝撃で手に負担も大きいので(ただし金属を叩く=亀裂や欠けが生じることがあるので、消耗品と割り切る必要があります)。
まずは8の字結びで、ロープ中央にポール先端へ通す輪を作ります。ロープ片側がポールの1.5〜1.6倍=ロープ全長は3倍〜3.2倍以上必要です。
続いて自在の装着。シンプルな「二つ穴」「くの字型」のアルミ製がおすすめです(バリエーションもありますが省略します)。
付け加えますが、タープやテントを適切に張るためには、付属のロープやペグだけでは上手くいかないことが多いものです。プラペグの大/小、アルミの棒でできたピンペグ、鉄のL字アングル材でできた頑丈なスチールペグ、タープのメインポールを支える大型スチールペグ(凶器っぽい)など買い足す必要が出てきます。短いロープの予備も必要。
また、長方形タープには雨水を逃すロープを付けるところなど、適宜ハトメを追加しておく必要が出てくるかも。このへんも追い追い……。
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で、タープの下に椅子やテーブルを移動、キッチン環境をざっくり整えます。このとき、クーラーボックスや水タンク、食器類の入ったコンテナ(or バスケット)といったものはまだ車からおろす必要はありません。作業が断然楽になるので、地面に置くより何か台の上に置きたいですから。
これらは専用の台を用意してもよいです(アウトドア用パイプ椅子でもOKです。今は百均にもあるし)。また車をタープに寄せて停められるなら、荷室ハッチを開けて、荷室フロアを台にするのはよいアイデアです。何でも降ろせばいいというわけではありません(このとき室内灯/荷室灯はバッテリー上がりを防ぐためにオフに!)。
あと、クーラーボックスを地面に置くと、ついつい物置台に使ってしまったり、椅子にする人が出て、いちいち退けたり立ってもらわないと蓋が開かない……といったことが起きます。これ時短というか、ものすごくストレスなので、回避策としても何か台の上に乗せたいんですね。
最後に、先ほど広げておいたブルーシートの上にテントを張ります。ペグとロープで固定して、キャンプサイト完成です。
撤収のときのキモ
撤収のとき、ひとつだけキモに命じておくべきことがあります。それは
ペグからロープを外すのは最後にペグを回収するとき
ということなんですね。親切心から真っ先にロープを外して回るゲストがいます(何も知らなくても手伝えるのはそれだと思って)が、ありがた迷惑の典型で、ペグ紛失の原因のほとんどはこれです。
ロープがついていればどこにあるかわかるのですが、たとえ黄色のプラペグでも、ロープが外れた途端に見えにくくなります。ましてアルミ棒のピンペグなど、どこに刺さっているのか瞬時にわからなくなります。
プラペグやピンペグの1本や2本、金額的な損失は小さいとしても、買い足しておかないと、次のキャンプで不足して困るものです。
これを「神経質」と言う人がいますけど、何年キャンプの経験があろうと、前回触れた「銀マットを地面に敷いて荷物を置く人」と並んで、私は「隠れド素人」だと思っています。自分で困った経験がない(=おそらく自分では道具を持っていない)ということですから。
ということで。
まずテントの中のもの(寝袋やマット、着替え類)を片付けてしまいましょう。そして寝袋を干す時間があれば、車の上に並べるなどで軽く湿気を飛ばしてしまいます。着替え類はバッグに入れて、とりあえず車の後席に(荷室にキャンプグッズを積み終わったらその上に積むのも一案)。
ここでキッチン周りを片付けて食器などをコンテナに入れます。そしてテーブルや椅子を車の後方に集めて荷物の一時置き場にします。これは設営のときと逆手順ですね。
で、テントの外側の雨よけ「フライシート」をはがして畳みます。このとき、専用のペグで止まっていればロープとペグを外してその場でペグは袋に回収。そののちテントのジッパーをメッシュ部分も含めてしっかりと閉めて(テントにテンションがかかっているうちに閉めること)、ポールを抜いてそれを畳んでいきます。
テントがぺしゃんこになったところで、ロープから、あるいはテント本体からペグを抜きながら回収。下にブルーシートが敷いてありますから、テントの床はさらっとしているはずなので、そのまま一気に畳みます。収納袋に本体とフライシートを納めたら、テントの撤収は終わり。下に敷かれていたブルーシートは裏返して少し乾かしましょう。
テントがなくなって広くなったらタープの解体。これはもう、一発目で倒してしまうのが楽です。ただ、焚き火をした場合は、そちらに倒れないように。火は残っていないと思いたい(火があればナイロン生地なので燃えるか溶けるか……)ですけど、ススや灰がついても汚れます。一応「布」なので、そういう汚れは避けたい(泥でなければ不思議と土は落ちるんですが)。
倒したらポールを抜いて畳み、タープ本体をたたみ、ともに収納袋に入れ、最後にロープとペグを回収します。
この頃には多少なりとも寝袋は乾いていると思いますので、畳んで丸めて、再び荷室の一番奥へ入れます(帰宅したらもう一度しっかり干しましょう)。ここから先は積み込み時と同じように詰めていくだけです。
雨の日の撤収はもう、なりふり構っていられません。まず車をバックでタープになるべく近づけて停車。後ろのハッチを開けて屋根にし(上に開く場合です)、タープに直結するような形にします。横開きのハッチの場合はギリギリまで寄せてください。
次に、寝袋やマットをテントの中で畳み、タープの下を通って車に収納。タープの下でキッチン周りや椅子、テーブルを畳んで車に収納。テントはペグを抜いて回収したら、下のブルーシートごとタープの下に引き摺り込んで解体。最後にタープを解体します(このときはなるべく倒さずに)。この手順が一番濡れません(雨具を着なくてもほとんど濡れない手順ですが、テント/タープの解体はどうしても濡れますので、着ていた方が無難です)。
なお雨に濡れたテントやタープなどは、どうしても膨らんだ感じになって、さらに布の滑りも悪いため、元の袋に入らないことがよくあります。なので、別の防水袋にまとめて入れて、密封して持ち帰りましょう。マリンスポーツ用の大型防水袋が丈夫なのでベストですが、大きなポリ袋でもかまいません。あと、それらは帰宅後に速攻で乾かすのを忘れずに。
カビが生えると悲惨です。
こんな感じで、設営と撤収の手順をパターン化しておくことは、大幅な時短につながります。適当にやると、行きつ・戻りつ・考えつつ……で、ものすごく時間かかるんですよね。
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書いてきたら予想外に長くなってしまった(6000字超!)ので、食事やキャンプサイトでの過ごし方の例については、また次回。すみません。
あと嫌な話なんですが……最近は、不在と見ると食器類やキャンプ道具を盗む輩がいるらしいので、食事が終わったらそういったものはテキパキ片付けて車にしまっておきましょう。釣りやカヌー、トレッキングなどに出たらなかなか帰ってきませんし、車で行ったならなおさらです。悪いやつは見てますから……(観光地の駐車場では、そういう車を狙った車上狙いも多いという話もあり)。