夢に終わる、29歳の誕生日
夢見た29歳の誕生日は、大好物のジェノベーゼを食べて、見たかった映画見て、ショッピングして、ケーキ食べて、一日が終わった。それだけ。
強く期待しすぎて、今すごく惨めだ。
期待してくれていた会社の人にはなんて言えばいいのだろう。
中途入社し、数カ月しか経ってない私に対して、暖かく受け入れてくれ、親身になってくれる。そんな優しい人が大勢いる同僚や上司に、どう報告したら良いのだろう。
友達は?親は?親戚は?
30歳までに、という話は、付き合う前からしていた。僕もそのつもりだから、と言っていた。しっかり覚えているかもしれないし、そういう話をしたという話をすれば思い出す程度なのかもしれない。年齢にリミットがある女性の私にとっては、非常に大事なことだった。単純な同世代への自慢なんかじゃない。いつでも子どもを授かれるわけじゃない。
誕生日なのに、プレゼントも間に合わなかった。仕事が忙しくて、私の誕生日を思い出したのも数日前なのも、仕方ないのかもしれない。私も欲しいものが見つからないし、ねだれない。29歳を迎える私にとっての、最高の誕生日プレゼントを期待していたからだ。
ほんと。なんか、みじめ。
日付変わった瞬間にお誕生日おめでとうって言わせただけだった。デートも誕生日だからと特別なものではなく、いつものデートに「私の誕生日」という事実が乗っかっただけだった。
転職活動もかなり苦労した。残業でくったくたに疲れ果てて行ったうどん屋は満員で、おそば屋さんは店内の衛生状態が悪く、そばの味を楽しむどころではなかった。信じられないところで転び、手をついたら骨にひびが入った。ささやかな事でたくさん傷ついた。
ついてない日々は、この後訪れる最高の幸運の前ふりだと信じていた。
数週間前、大学の同級生の結婚式に出席したときも、めずらしく結婚式の感想なんか聞いてくるから、私との結婚を意識しているからだと思い込んだ。
30才までに結婚したかった私にとって、29才の誕生日は、誰よりも特別なものだった。