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約束の果て 大千穐楽レポ

朗読劇 READING WORLD
ユネスコ世界記憶遺産 約束の果て 大千穐楽を観劇してきました。

備忘も兼ねた感想です。舞台そのものの記憶の記録的な意味合いも取っておきたく、ネタバレもそのままに記載をしています。


◯朗読劇 READING WORLDのこと


 声優・2.5次元俳優の朗読劇やトークイベント、音楽ライブなどの企画・運営を主業務とするイベント会社、thanksgivingさんが主催する朗読劇プロジェクト。
 前身は2020年より京都で毎年開催されている「世界文化遺産 下鴨神社 朗読劇 『鴨の音』」で、今後は日本中の世界遺産・歴史的建造物・様々なゆかりの地での開催を予定。

 ……と、HPには記載がありますが、これの音頭を取っていたのが松野太紀さんとのことでした。松野さんに師事されていた藤原珠恵さんが想いを繋ぎ、今回の舞台は実現に至ったようです。
 個人的には、今回の舞台を観劇して本当に素晴らしい舞台だったので、ぜひ各地で本プロジェクトが続いて欲しいと願いますが、それを願うたび、このプロジェクトを導いていた松野さんのご逝去が残念でなりません。

 各地の"記憶"を声優さん達の"声"とともに言葉通り語り継ぐ形は、私たち若い世代にとっても受け取りやすいものであり、また、もし記録が残るようなことがあれば、それもまた大変に意味のあるものになるなのではないかと考えます。

◯ユネスコ世界記憶遺産 約束の果て


 プロジェクト第一弾として選ばれたのが舞鶴。
 ユネスコ世界記憶遺産は、世界の"重要な"記憶をユネスコが保護する事業のこと。

 舞鶴は、戦後シベリアに残された日本兵たちが日本に帰ってくる受け入れの港(引揚港)ひとつであり、その土地の人々は帰還した人々をあたたかく受け入れたそう。

 引き揚げ、シベリア抑留の史実を後世に語り継ぐためにも、引揚関係の資料を舞鶴はユネスコに申請、世界記憶遺産として保護を受けることになりました。

 シベリア抑留の話は日本史の授業で学んだのはもちろんですが、
 最近だと二宮くんが主演だった「ラーゲリより愛を込めて」が記憶に新しい。これも本当に苦しくも素晴らしい作品でした。映画の主題歌であるMrs.Green Appleの「Soranji」も大ヒットしましたね。私はあまりに映画のことを思い出して泣いてしまうので、いまだにSoranjiをしっかり聴けない。せっかくそろそろ聴けるかなと思ったけど、今回の舞台を通してまた聴けなくなりそうだ。

 旧ソ連での苦難に満ちた記憶とともに、二度と戦争を起こしてはならないという平和への願いを抱いたうえで、
 シベリア抑留の"記憶"が私たちに強く語りかけるのは、過酷な状況を生き抜く力や、家族(自分の大切にする人)への愛。

 想像をも絶するシベリア抑留の日々を耐えた人々が、どのように生きたのか、命を繋いだのかを知ることは、
 そのバトンを繋いでいま、日本で生きる私たちが、そのまた未来へバトンを繋ぐうえでとても大切なことであると考えます。

◯舞台のこと


 私は声優さんも佐久間くんも好きですが、舞台や演出に詳しいわけではないので、ここからは事実ベースではなく主観的な感想として備忘を残していきます。

 朗読劇、という形式の舞台を観劇したことがなかったのもあり、アンサンブル(役名のないキャスト)の方の多さに驚き、改めてこのプロジェクトの大きさを感じました。
 アンサンブルのキャストは全部で25人。
 そのうちのおひとりは、フルートの演奏者の方で、フルートが生演奏で演奏されることにも驚きました。フルートのメロディがそれぞれの場面に色を加えるようで、非常に印象的でした。

 佐倉さんが語り手として下手に座り、物語を紡ぐなかで、
 舞台の左右と中心にマイクスタンドと椅子が設置され、メインのキャストとなる緑川さん演じる大森、佐久間くん演じる島津、岡本さん演じる竹本がそれぞれに座る形が基本の構成でしたが、
 場面によって立った状態での朗読であったり、
 井上さん演じるシズコや岸尾さん演じる沢村が現れたり、なかにはアンサンブルのキャストの方の群読もあったりと、入れ替わり立ち替わりで物語が語られました。

 朗読劇であるため、舞台の大きな装置や道具は存在せず、立ち回りと声だけでその場面の空気を作る形に、圧倒されました。
 朗読というと読み聞かせのような、椅子だけが並んでそこで語られるものとイメージしていたので、それよりもずっと繊細かつ大胆な構成にぐうっと世界観に引き込まれました。

 また、シベリアの真っ白な雪景色のなかを歩いていくシーンの際の光の動きが、自分たちもその過酷な雪のなかを歩いているように感じさせられて大変印象的です。

 声だけでなく、舞台全体を大いに使われた迫力のある舞台でした。


◯演者さんのこと


 佐久間くん以外の演者さんの話をします。
 声優さんファンの視点です。

 ・緑川さん
 緑川さんのお名前をキャスト欄で初めて見たときに「あのグリリバが見られる……!?」と飛び上がりました。アニメではうたプリの鳳瑛一が印象的です。あとはディアラバの逆巻アヤトが好きな世代です。。
 ファンの妄言の記録なので敢えて書くとすると、古谷さんが降板となったニュースを聞いた際、正直舞台の存続そのものも厳しいのではないかと不安に感じていました。キャストさんを見るに青二プロダクションの方が入られるのだろうと思っていたのですが、岸尾さんが新しいキャストとして入り、緑川さんのお名前が座長の位置に変わった瞬間から、不安から一気に楽しみに変わりました。安心感はもちろんのこと、舞台そのものの楽しみな感情も一気に引き上がったのを覚えています。

 緑川さん、そして緑川さん演じる大森が舞台そのものを引っ張っていく存在であり、その存在に安心感と安定感を覚えました。大森も当然人間であり、物語のなかで自暴自棄になるシーンもありましたが、そのなかでもその人望と人情を感じさせる役柄でした。緑川さんの厳しくも暖かい声色を通して大森という人間の感情に触れることができました。

 ・岡本さん
 会長はメイド様、の碓氷巧海に恋をしたことから私の声優ファン人生は始まっているので、岡本さんは初恋の人と言っても過言でない。岡本さんも初めて拝見できたので本当に嬉しかった……! あとは夢喰いメリーの藤原夢路がだいすきでした。キャラソンの「終わらない夜を」まだ歌えます。

 岡本さんの演技にひたすらに泣かされた90分でした。それぞれのキャストさんにそれぞれの感想があるのですが、正直なところ私はかなり岡本さんに持ってかれました。もーすごかった。ご本人も泣いてらしたし、その感情に堪らなく引き込まれました。
 岡本さん演じる竹本は無骨な軍人であり、ぼそぼそと低い声で厳しく話す役柄ですが、涙ながらに想いを語るシーンで出る岡本さんの高いトーンのしゃくりや叫びが、低い声とのギャップも相まってとっても印象的でした。引き摺られてボロボロと泣いていました。

 ・佐倉さん
 あやねる! あやねるも初めは夢喰いメリーだと思います。余談ですがあやねるって通称は岡本さんが命名したんだよって話をこの前杉田さんの「自称声優」で岡本さんが話されてましたね。「ちょろい」めちゃくちゃ面白くてずっと聴いて&観てました。これまで画面で見ていた通りめちゃくちゃ可愛かった……。カテコの最後の最後しゃがんで手を振ってくれてるあやねるかわいすぎました。

 苦難が続くシベリア抑留のシーン、暗いシーンになるのは当然でしたが、やっぱり苦しかったので、佐倉さんの語りが救いにはならずとも、私たち観客にとっては句読点を打つところであり、物語に想いを馳せる橋渡しのような存在でした。
 物語の最後で、佐倉さん演じる語り手が大森の孫であることが明かされ、佐久間くん演じる島津の甥っ子に語られた内容であることが明かされます。まさに「語り手」として、このプロジェクトそのもののような役割であることが、大変印象的でした。

 ・井上さん
 マリーナ! 最近だとやっぱりアルミンの印象が強いですが、私ははがない(僕は友達が少ない)の三日月夜空ちゃんのイメージが強いです。本当に声の幅、演技の幅が広い役者さんだなぁとお声を聴くたびに毎回驚きます。どうでもいいですが、マリーナのスタイルが憧れすぎて高校生のときスマホのトップ画面がマリーナの写真でした。10年くらい前の話なのですが、今も全く変わらずお綺麗で驚きました。

 優しく、芯の強くあたたかな母親シズコの存在は、物語のなかで日本で帰りを待つ家族の姿の代表のような姿でもあり、とても大きな存在感でした。物語は大森とシズコが再開を喜びあう大森の"夢"から始まります。彼らに取って如何に家族が心の支えであり、大切な存在であるかを表す存在でした。

 ・岸尾さん
 岸尾さんは神さまはじめましたの鞍馬の印象です。今回同行してくれたお友達と私、ふたりとも神さまはじめました大好きなので鞍馬!って色めきました。岸尾さんはあとから追加でキャストとして参加されているはずですが、松野さんの弟子であり、主催のthanksgivingでも舞台に立たれているのだと知り、岸尾さんほどにあの場所に入るべき方はいないだろうと思いました。

 岸尾さん演じる沢村と緑川さん演じる大森との対話は、大森の人間性がいちばんによくわかるシーンで、そしてとても辛いシーンでした。
 生きて帰れた人々がいるなかで、シベリアの地で志半ば命を落とし、土にも埋められず無念の思いであった人々の姿が痛々しく描かれ、彼らの思いを「繋ぐ」ことこそが、生き残った人々の生きる理由のひとつであったことがわかりました。


◯佐久間くんのこと


 佐久間くんの舞台を観に行こう、と始まった舞鶴旅。佐久間くんのことを書き起こすまでにこんなに書いてしまった。。それほどまでに思い入れの強い舞台になりました。

 きっとこれを読む方にとっての本題、佐久間くんの姿についてです。

 彼のメンバーカラーであり、アイコンでもあるピンク色の髪をグレーに染めたのを観たとき、初めはとっても驚きましたが、舞台を観て彼の覚悟であったのかなと感じました。舞台稽古のあたりに合わせて染めたのかなと勝手に思っています。
 舞台の方は全員真っ黒な衣装に身を包まれていたのですが、佐久間くんもkujakuのお洋服を見に纏い、シックな装いでした。顔が小さく、スラリと色白なので普段の佐久間くんとは全く違う雰囲気で、別人のように感じました。

 佐久間くん演じる島津は天真爛漫な楽観家であり、無邪気で可愛らしい、心のあたたかい青年です。しかし、物語の途中心半ばで、大森と竹本の間で命を落とします。その明るさと儚さが、あまりにも佐久間くんにぴったりでした。
 これは彼の演じた白蛇演起なんかにも通じますが、佐久間くんはとにかく「儚い」役がよく似合う。明るい中にも陰のある役柄に納得感がある。それはやっぱり佐久間くんの本質なんだろうと思います。そして佐久間くんもそれをよく理解していて、私たちの前に惜しみなく出してくれる。ありがたい。それがお仕事をされる方々のなかでも認識として広がってきているのだなぁと思い、また嬉しいです。

 佐久間くんの人柄が如実に現れたキャラクターであり、その人柄が声に乗り、島津という人間を形作っていました。無邪気で朗らかな、優しく澄んだ声。
 朗読劇なので、台本を読みながら進むのが基本のスタイルなのですが、佐久間くんはときおり顔を上げながらセリフを喋っていて、それほどまでに「頭に入って」いるのだな、とわかりました。その真摯さがまた島津らしく、佐久間くん=島津であることの納得性がより高まりました。

 島津が亡くなる前夜、兄さんと慕う竹本と、大森に挟まれ、彼は永遠の眠りにつきます。最後まで無邪気な島津の声が、また愛おしく、その無念さを募らせました。
 そしてその後島津の妹の子、つまり甥っ子として佐久間くんは再登場しますが、完全に舞台に入り込んでいたので岡本さん演じる竹本とともにその生き写しの甥っ子の佐久間くんを見て、大泣きしました。

 生きていれば命は繋がれる。そして人々はまた出会う。辛く、過酷なシベリア抑留を描く物語の上で、この示唆だけがひとつの希望でした。

 
 初めての朗読劇だったにも関わらず、佐久間くんにとってはあまりにも試練の多い舞台だったのではと思います。
 二番手として名前が書き連ねられているプレッシャーのなか、舞台に立っていたのは、ゲストではなく、まごうことなくひとりの声優、佐久間大介の姿でした。
 これまでコンサートではその姿を見ていましたが、これまでに見たことのない、声優、としての佇まいであり、佐久間くんの新境地を見れた心地がしました。佐久間くんの新たな一歩を見届けられたことを本当にありがたく思います。

 佐久間くんファンの圧倒的に多い舞台でしたが、大千穐楽、鳴り止まない割れんばかりの拍手は、純粋に舞台に感動し、その想いに共感した観劇者たちの素直な気持ちであったと感じます。少なくとも、私はそうでした。

 松野さんの想いを繋ぎ、佐久間くんがこれからも声優としての道を歩んでいく姿を、応援したいです。

 舞台完走、お疲れさまでした。



※個人情報や席情報は消しゴムマジックしてます

#朗読劇READINGWORLD

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