第12回Zoomで健康 講演スライド(上手な薬との付き合い方)
ポリファーマシーとは
・たくさん薬を飲むことによって、「薬物有害事象(副作用)のリスク増加,服薬過誤(飲み方を間違える),服薬アド ヒアランス低下(飲み忘れる)等の問題につながる状態」
・5~6種類以上飲むと薬による有害事象が増えると言われている
・特に高齢者では要注意!
なぜ高齢者は要注意かというと
・複数の疾患に罹患→服用薬剤数の増加
・慢性疾患に罹患→長期内服
・加齢による臓器機能低下→代謝の低下、排泄の低下→体内に蓄積
実際、このグラフのように75歳以上の高齢者の40%以上が5~6種類以上の薬を内服しています。
もう一つが、加齢による臓器機能低下です。
年齢を重ねると、腎臓や肝臓などの臓器機能が低下
→薬を分解したり、体外に排泄される能力が低下
→体内に蓄積されやすい
→薬が過剰に効きやすい
その結果、高齢入院患者における検討では,6剤以上を内服している患者では,10%以上の患者において薬物有害事象が確認された。
特にポリファーマシーによる転倒が問題となっています。
高齢入院患者における検討では,5~6 剤以上を内服している患者では,実際40%程度の患者において転倒が確認されています。
なぜポリファーマシーが起きてしまうかというと
高齢者に関しては、先ほど述べたように高齢者になるとたくさんの病気にかかるというのがあります。
他にも、下記のようなことがあげられます。
・複数医療機関・診療科の受診(連携不足)
・処方カスケード
・医療者側の説明不足
一つずつ見ていきましょう。
各医療機関の連携が不足していると、同じような薬が処方されてしまい、内服薬が増えてしまうというケースがあります。
処方カスケードというのは、
例えば食欲不振で病院を受診したとします。
食欲不振に対して、スルピリドという内服が処方されます。
その副作用として、パーキンソン症状が出現し、違う病院に受診するとパーキンソン病の診断がされます。
そのため、抗パーキンソン病薬が処方されます。
その副作用として、認知機能低下が出現し、今度はアルツハイマー病と診断され、抗アルツハイマー病薬を処方されてしまいます。
そして、抗アルツハイマー病薬は食欲不振の副作用があります。
このように、薬がどんどん増えていくことを処方カスケードといいます。
他にも実際このような患者さんもおられました。
ある患者さんが風邪症状で他院を受診し、総合感冒薬が処方されました。
幸い、数日で解熱し、咳や鼻水の症状は改善しましたが、まだだるさが残るということで再度受診し総合感冒薬を追加で処方されました。
3週間程たっても、だるさが取れず、だるさが取れる薬が欲しいということで当院を受診されました。
実は、総合感冒薬には抗ヒスタミンという成分が含まれており、これはだるさの副作用を引き起こすので、だるさをとる薬を処方するのではなく、総合感冒薬をやめるということで症状が改善しました。
このように症状や病気を治すために、飲んでいるつもりだった薬で、かえって体調が悪くし、それを改善させようと別の薬が処方されるといったケースはよく見られます。
医療者側の説明不足に関してですが、
先ほど薬の副作用、そしてそのため薬が増えるという処方カスケードの話をしましたが、このカスケードを止めるために患者さんが自分が飲んでいる薬について(特に副作用)知っておく必要があると思います。
薬に関する研究は見つかりませんでしたが、検査に関して面白い研究があります。
病院を受診した時に、自分が行う
検査が何のために行われたのかを理解していたのは全体の17%
検査で異常と出た場合、どうなるのかまで答えられたのは11%
検査の合併症について知っていたのはたったの4%
とのことです。
薬に関しても同じようなことが言える気がします。
医療者側の説明不足がその原因の一つと考えられ、反省させれた研究です。
ちなみに、どのような薬にも副作用はつきものですが、特に高齢者には注意すべき薬のリストというものがあります。
こちらは、一部ですが、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に詳しく記載されていますので、自分や家族の飲んでいる薬がどうなのか参考にしてみてください。
(もちろん、ここに記載されている薬をのむ必要がある人もたくさんいます)
もちろん、たくさんの薬を飲まなければいけない患者さんもいます
しかし、アメリカの研究では58%もの薬が不適切に処方されていることが明らかとなり、そのうちの81%の処方が中止されたという報告もあります。
つまり、たくさん薬を飲んでいる人の多くは、薬を減量できるということです。
どのようにポリファーマシーを解決するか
まずは、ひとつかかりつけ医を決める
他の病院に行ったときは、必ずかかりつけ医に情報を提供する
他の病院に行っても、同じ薬局で薬をもらう
→かかりつけ医、調剤薬局による医療情報一元化
内服を減らしてみたかったら、ぜひかかりつけに相談を。
医療側も内服が少ない方が、診療報酬が高い→快く相談に乗ってくれるはず。