「緋色の弾丸」感想・レビュー
2021年4月16日(金)、1年の公開延期を経てついに劇場版名探偵コナン「緋色の弾丸」が公開されました!!
わたし自身、この日が楽しみすぎて会社に2週間以上前から有休の申請を出し、前日はワクワクしすぎて寝れず、当日は朝の5時に目が覚めるといういい年して遠足前の小学生状態でした(笑)
今回は4回緋弾してきた私がネタバレ全開で「緋色の弾丸」を語り尽くしていきたいと思います!
「まだ見てないよ!」という方はぜひご鑑賞いただいた上でこちらの記事を見ていただけますと幸いです。
◇◆◇
【あらすじ】
舞台は、世界最大のスポーツの祭典「WSG-ワールド・スポーツ・ゲームス-」の記念すべき東京開催を迎えようとしている日本。その開会式にあわせて、日本の技術を総集結した、最高時速1,000kmを誇る世界初「真空超電導リニア」が新名古屋駅と東京に新設される芝浜駅間に開通することが発表された。世界の注目を集める中、名だたる大会スポンサーが集うパーティー会場で突如事件が発生し、企業のトップが相次いで拉致されてしまう異常事態に。その裏には事件を監視する赤井秀一の姿、そして赤井からの指令を待つFBIの姿があった。コナンの推理により、15年前にアメリカのボストンで起きた忌まわしきWSG連続拉致事件との関連性が浮かび上がり、当時の事件もFBIの管轄だったことが判明する。果たしてこれは偶然なのか? 世界中から大勢の人々が集まる日本で、いったい何が起ころうとしているのか?
引用元:名探偵コナン緋色の弾丸 公式サイト
まずは初めて見終わったあとの感想から。
初めて観た時はもう一つ一つにテンションが上がってドキドキしてしまい、劇場を出た時は夢見心地で足取りがふわっふわしてました(笑)
私の脳内がどれだけ大変なことになっていたか、以下当時のツイートです。
今見ても相当ハイになってたなぁと思います(笑)
1年待ったのだからしょうがないでしょう、ということで。
1年延期されたことで青山先生の原画も増え、作画も例年にも増してとても綺麗で、観ていて「綺麗…!」と感動しました。そして、コナンといえば爆発が恒例イベントになっていますが今回は(今回も?)ドえらいことになっていましたね…(笑)
凄すぎてもう笑うしかないとはこのことか、と思いながらラストは観ていました。
それではここからは、
・キャラ別見所ポイント
・事件について
・赤井とメアリーについて
の順に「緋色の弾丸」をたっぷり語っていきたいと思います!
◇◆◇
【キャラ別見所ポイント】
①江戸川コナン
トップバッターは主人公・コナン!!
今回も大活躍で見終わった後は「本当にお疲れ様でした…」と思わず合掌してしまうほどでした(笑)
今作のコナンは「司令塔」として一緒に行動する世良・サポート役の灰原・別ルートで事件を追う赤井・FBIに携帯と探偵団バッジをフル活用して指示をする姿がとても印象的でした。これだけの強者たちを相手に的確な指示を出し、駒のように最適な配置へ動かして事件を解決に導く姿はとても頼もしかったです。
また、「たとえ犯人であろうと死なせない」という己の信条を貫き通す姿も見えてとても嬉しかったですし、それでこそコナンだなとも思いました。
個人的にはわざと転んでジョン会長の袖口に発信機をサッと取り付けたり、小五郎のポケットから乗客リストをササッと盗み取ったりと、あまりの手際の良さに末恐ろしいなとすら思いました(笑)
あとは、クライマックスのリニアがスタジアムに突っ込む直前のコナンのこちらの台詞!
「くっそぉ!死んでたまるか!!」
出典:小学館ジュニア文庫「名探偵コナン緋色の弾丸」ノベライズ版より
揺れる車内の中、必死に後続車両に向かって走る中でのセリフとあって『工藤新一』全開、むしろいつも以上に男らしいセリフでキュンを通り越してギュンとしましたね(笑)
毎年恒例の「らーーーーーん!!!!!」が無くて寂しかったんですけどこの台詞で不問にしようと思います(笑)
◆毛利蘭
今作の蘭は珍しく、自ら積極的に事件に関わっていて新鮮に感じました。同じく事件に関わってくるコナンや灰原にちょっと振り回されていた感もありましたが(笑)
しかし、自分が乗るリニアのことを調べてまとめていたり(新一との電話のシーンで蘭の手元にあるノートに書き込まれていました)、なにより病院で発生したクエンチの爆発で気を失った後、起きて一番に「コナンくんと哀ちゃんは!?」と心配しているなど、真面目で心優しい蘭ちゃんが健在だったことはとても嬉しかったです。
オススメポイントはなんといっても新一との電話のやりとり!
「ちげーだろ!オメーを守るのは俺のーー」
「オレの……なによ?」
出典:小学館ジュニア文庫「名探偵コナン緋色の弾丸」ノベライズ版より
この2人のやりとりにキュンが止まりませんでした…!!なにしろ付き合い始めてから劇場版では初めての恋人らしいやりとりなので、もうマスクの下でニヤニヤ。さぞや気持ち悪い顔をしてたことでしょう。さらにその後の「…バーロ。言わせんじゃねーよ」にもトドメを刺されました。
さらに、小五郎との親子の会話もすごく素敵でしたね。「あっため直すから」のセリフの言い方と蘭の表情がすごく温かくてとても大好きなシーンです。
個人的には蘭の無双シーンがあったら嬉しかったですね…本人やる気満々でしたし(笑)
◆灰原哀
劇場版お留守番組筆頭の我らが哀ちゃん。
実は「純黒の悪夢」以降、阿笠邸から一歩も出てないとか…(笑)
そんな哀ちゃん、今作は大活躍&魅力大爆発!
パーティー会場での1人乾杯にはじまり、「私にも連絡寄越せっつーの」とぼやいてみたり、犯人に突き飛ばされても冷静に対処する姿など、制作スタッフさんたちに何度お礼を言っても足りないくらい盛り沢山でした…。
特に病院での爆発では、クエンチだといち早く気がつきコナンに危険を知らせたり、技師たちに混じって原因を究明する姿など、科学者・宮野志保の姿が随所に見られ、灰原の本領発揮だと嬉しくなりました。また別行動のコナンをしっかりサポートする姿もとても頼もしく、相棒感あふれる2人の姿に「これこれ!」とテンションが上がってしまいましたね
(探偵団バッジを掲げ合う2人にエリーとまったく同じリアクションをしました)。
近年の灰原は「ゼロの執行人」では画像処理やリアルタイムでの映像合成処理、「紺青の拳」ではレーダー解析など、もはや情報処理分野の達人みたいになってますが、そもそも哀ちゃんの得意分野は薬品開発(笑)
私自身、学生時代に情報系の勉強をしていましたが同じ科学・工学系に見られても薬品開発と情報処理はまったくの別分野で、化学系の学科の友達の話を聞いてもちんぷんかんぷんでしたし、その逆もまた然りでした。サラッと哀ちゃんはやってのけていますが本当はフサエバッグ何個買ったって足りないくらいのことをさせてるんだ、とコナンは知るべきですね…(笑)
そして今回の劇場版で気になったのは、灰原の声のトーンが普段よりも高いと感じたこと。詳しくは下記のふせったーをご覧いただければと思いますが、素の「宮野志保」でいられるコナンの存在は灰原にとって大きいのだろうなと思いますし、素の姿を見せることができるのは徐々に周囲に打ち解けている証拠でもあるのかなと思うと嬉しくなりましたね。
◆赤井秀一(沖矢昴)
今作のキーパーソンでもある赤井。
予告や事前の番宣での推されかたに相当出てくるのかと思いきや、想像よりも出番は少なめ。
赤井の場合、死んだことになっているのでおいそれと前には出ていけないですし、活躍の仕方としてはこれが限界なのかなとも思いました。
それでも「銀の弾丸」を的確に撃つスナイパーとしての活躍だけではなく、FBIの面々と秀𠮷の仲介人としてサポート役に徹していたのも、これまでソロプレーが多いイメージを持っていたので、また新しい赤井の魅力が見られたと嬉しかったですね。
また、赤井秀一役の池田秀一さんと沖矢昴役の置鮎龍太郎さんの声の差異がどんどんなくなっていっているのが凄いなと今作を見て実感しました。
もちろん、沖矢として人前に出る時は沖矢なんですけれど、沖矢の状態でコナンと話すときには声だけ沖矢で中身は赤井なんですよね。池田秀一さんがチョーカー型変声機をつけて喋ってる感じなんです。同じ役者さんが演じているわけじゃないので違いが出て当然とは思うのですが、その違いがどんどん無くなっていることに衝撃を受けました…。改めて声優さんってすごいですね。
そういえば…個人的にあの「GO」という台詞が何度聞いても「5」と聞こえてしまい、カウントダウンが始まるのかと身構えてしまいます…。
多分、私だけじゃないはず…(笑)
◆世良真純
今作を語る上で世良の大活躍は絶対に触れなければいけません!
本作の世良は脚本の櫻井武晴さんも仰っていたように「裏の顔」、つまり母・メアリーの仕事を手伝う姿が描かれています。こちらは原作でもほとんど描かれていないので新鮮でしたし、なによりクールな世良を拝むことができます。
そして、やはりなんといってもコナンとのコンビプレーがこれでもかと詰め込まれていましたね…!
リニアに乗り込んでからの犯人推理、コナンの正体に迫る手汗握る展開、リニアの暴走を止めるために協力する2人の姿…などなど見どころ満載です。
特にわたしが今回の劇場版で気になったのは、ジョディが味方側の人間であることをなぜコナンは世良に教えなかったのか、ということ。
「……うん。この後は先生を助けてあげて」
「その電話の向こうには、君の言う『ボクたちの味方』が二人いる」
「え?なんのこと?」
「一人は、君が『先生』と呼ぶ人物。もう一人は、ライフルを使う……おそらくFBI」
出典:小学館ジュニア文庫「名探偵コナン緋色の弾丸」ノベライズ版より
この一連のシーンでは赤井とジョディのシルエットが描かれているので皆さんご存知の通り、
『先生』=ジョディ
『スナイパー』=赤井
となります。
世良の視点からは『先生』と呼ばれる人物と『スナイパー』の2人の人物がコナンと関わっていて、その2人は助け合う関係=仲間同士、という方程式が出来上がります。
世良は「異次元の狙撃手」でジョディと既に会っていて、ジョディがFBIであることも知っていますし、このことについてはコナンも知っています。
しかし、コナンは世良の問いに対して答えませんでした。それは『先生』=ジョディだとわかれば、ジョディがFBIであることを知っている世良はジョディに兄・秀一の件について探りを入れかねない。そして、そこから芋づる式で赤井が生きていることを突き止めてしまう可能性が高くなってしまうから。
赤井が、自身が生きていることを秀𠮷にしか知らせず、メアリーや世良に伏せているのは、恐らく2人を危険なことに巻き込まないためだと考えています。赤井がそういうスタンスである以上、コナンも世良に伝えることはなく、この場では濁したのかなと考えてみました。
いやはや、ここの一連のシーンは本当に痺れましたね…。普段は追う立場であるはずのコナン(新一)が世良にかなり追いつめられる姿が新鮮でとてもドキドキしました。
そして世良の登場シーンの中で個人的お気に入りは、ラストでジャケットが風に煽られて飛ばされてしまい「お気に入りだったのに〜」と言った後にフッと夕日をバッグにコナンに向けて微笑んだあの表情。
普段はボーイッシュな世良ですがあのシーンは柔らかい表情ですごく素敵でした。
世良が劇場版に初登場した「異次元の狙撃手」では中盤でコナンを庇って退場していたため、それを思うとより今作の世良の活躍に胸が熱くなること間違いなしです。
※青山先生原画のこのシーンが大好きで予告で何度も観ました(笑)
◆羽田秀𠮷
劇場版初登場となる秀𠮷は、前半では由美タンとのラブラブ珍道中を繰り広げて、緊迫している本編の中での癒しタイムを担当していましたが、終盤は赤井とタッグを組み、犯人を追い詰める姿を見せてくれましたね。
ギャップが凄すぎて、今回の劇場版で世良と同じくらいファンをさらに増やしたんじゃないかと思っています(笑)
個人的に好きなのは、将棋会館の下見に訪れた秀𠮷と由美のやりとり。
「言わなかったっけ?ここに『名古屋将棋会館』ができるんだよ」
……
「アンタもミーハーね」
「他の棋士にはさせられないから」
「え?」
「資金集めにあっちこっち引っ張り回されたら、将棋の時間がなくなっちゃう。そんな思いをするのは僕だけでいい」
出典:小学館ジュニア文庫「名探偵コナン緋色の弾丸」ノベライズ版より
棋士の方は本当に寝る間も惜しんで人生の全てを将棋に賭けていますが、その一方でタイトル戦などになってくるとスポンサーや関連企業とやりとりする時間も増えてきます。特に六冠王の秀𠮷はあちこち引っ張りだこで、他の棋士に比べてそれが顕著なのだろうと思います。
そういった思いを経験してるからこそ、こういった言葉が出てくるのだろうし、心優しく、しかし勉強の時間が減ってもなおタイトルは譲らない絶対的な強さを見せる秀𠮷であることが、このセリフにぎゅっと凝縮されていると思いました。
そして、今回の劇場版で秀𠮷の最大の見せ場は詰将棋に見立てた犯人との鬼ごっこ(そんな可愛いものではないですが……)。
劇場で何度見てもキャメルと同じく「何で!?」と言いたくなるくらい、どうしてあそこまでドンピシャで当てたのかよくわかっていなかったのですが、劇場版では描かれなかったシーンがノベライズ版で補完されており、ようやっと納得しました。
「でも犯人は自ら決めたルールに縛られてしまうんだ。犯行の動機というルールにね」
「経緯を聞いて予想はできたよ。そして、最初の橋に犯人が現れたことで確信できた。この人物は何か理由があってリニアを追跡している。そうと判れば、相手の行動はこちらの手の内にあるも同然」
「どだい、車じゃリニアのスピードには敵わない。それだけに犯人は必ず先を焦ったルートを選択してくるはず。駒の動きが限られれば詰みへの道筋を読むのは簡単だったよ」
出典:小学館ジュニア文庫「名探偵コナン緋色の弾丸」ノベライズ版より
今作では「港北インターチェンジ」「鴨池大橋」など実在する名称と「川品駅」「新港浜駅」など実在の名称をもじった架空の名称が混じっています。
実際に近郊に住んでる方だと「犯人は最短ルートを選んでるんだな」と理解しやすいと思いますが、一方で私のように関東圏に明るくない人にとっては「どうしてわかるのかがわからない!」となりがちなんじゃないかな、と思ってしまいました。
この秀𠮷の台詞はぜひ、カットせずに入れていて欲しかったですね。
◆メアリー世良
こちらも劇場版初登場のメアリー!
本編でもまだまだ謎が多く、深堀りは難しいのだろうと思っていましたが、MI6としての顔を見せてくれたり、ラストにあんなサプライズを用意してくれるとは…!!詳しくは後ほど解説します。
そして、なんといっても見所はメアリー・真純VS沖矢(赤井)倉庫の乱ですね(笑)
最初は沖矢VS真純で戦うも、そこは実力的にもやはり沖矢のほうが上。そこに助っ人としてメアリーが参戦することで一気に形勢逆転します。
母強し、ということで床に倒れる沖矢さん。安室と戦った時ですら余裕を見せていたのに、たったの数十秒で膝をつくどころか倒れることになり、レアすぎて驚きました(笑)
コナンワールドでの実力としては、
京極>>>若狭・メアリー>赤井・安室>蘭・真純
といった感じなのでしょうか?
検証してみたいところです(笑)
以上、今作のメインキャラクター達の見所ポイントまとめでした!この他にも少年探偵団やFBI、園子などまだまだ魅力的なキャラクター達がいっぱい活躍しているので、ぜひ作品を鑑賞していただけたらと思います!(もしかしたら追加するかも…?)
◇◆◇
【事件について】
今作ではWSGを巡って15年前・11年前・現在で事件が発生しています。
ここからはそれらを時系列順にまとめてみていきたいと思います。
◆15年前・11年前
15年前、WSGボストン冬季大会を巡って3つの誘拐・殺人事件が発生しています。
第1・第2の事件で誘拐された被害者たちはすぐに解放されていますが、第3の事件の被害者だけが電車内で射殺されてしまいます。
この一連の事件の犯人としてWSGのパーティーにも参加していた寿司職人の石原誠が逮捕されます。
彼は最後まで無実を訴えていましたが、その後獄中で死亡しました。
石原の妻と子供はその後証人保護プログラムが適用され、日本に帰国しています。
また、第1の事件の被害者である菓子メーカーのトップは事件後、スポンサーを降りたことで「テロに屈した」と全米中から非難され、こちらも証人保護プログラムが適用され、日本に帰国しています。
その4年後、再びWSGを巡って事件が発生。
犯人は逮捕され、4年前の模倣犯としてFBIが捜査や取調べに当たりました。
◆現在
WSG東京夏季大会の開催を目前に、15年前と同じくスポンサーが誘拐される事件が発生します。
第1の事件はゴルフ場を訪れていた菓子メーカー『三塚製菓』の三塚社長が誘拐、第2の事件ではパーティー会場を訪れていた『鈴木財閥』のトップで園子の父・鈴木史郎が誘拐されます。しかしいずれもすぐに発見され、大事には至りませんでした。
第1・第2の事件の際に被害者と行動を共にしていた自動車メーカー『日本コード』のトップ・ジョン社長は、バーで隣にいた人間に被害者たちと会う予定を話してしまったかもしれず、それがきっかけで今回の事件につながったのではないかと小五郎に相談し、小五郎はリニア乗車に同行することとなりました。
◆犯人
今回の事件は白鳩舞子と井上治2人による犯行です。
【白鳩舞子】(CV.平野綾)
15年前の事件の犯人・石原誠の娘。
第1の事件当時、父である石原誠と一緒にいたことをFBIに証言していたものの、石原は逮捕されてしまう。証言を揉み消されたと思ったことから、当時のFBI長官であったアラン会長を恨み、今回の犯行に至った。
名前は「イシハラマコト」のアナグラム。
15年前の事件後、USMSの証人保護プログラムを適用し、名前を変えて母と共に日本にやってくるも、その母も心労が祟り、すでに他界している。
【井上治】(CV.鈴村健一)
15年前の第1の事件の被害者である菓子メーカートップの息子。
父が誘拐されるところに遭遇し、その際に犯人の一人の顔を目撃する。しかし逮捕されたのは石原誠のみだった。その4年後(11年前)に模倣犯が逮捕され、その男が父親を誘拐した男であるとFBIに証言するも、その男も15年前の犯人だと報道されることはなく、自分の証言を握りつぶし冤罪を作ったことを隠すために隠蔽したと思った井上はFBIに恨みを持つ。その後、事件を調べていく中で同じくFBIに恨みをもつ白鳩の存在を知り、共犯者となった。
第1の事件後、WSGのスポンサーを降りた父は全米中から非難され、証人保護プログラムを適用し家族で日本に帰国している。
第1・第2の事件でどちらが犯行に及んだのか、はたまた2人で犯行に及んだのかは作中で言及されていないので省略したいと思います。
次に、誘拐されたジョン社長とアラン会長について犯行の一連の流れは以下の通りと考えられます。
【白鳩】病院でクエンチ騒ぎを起こす
↓
【井上】ジョン・アランが気絶している隙に2人をスーツーケースに詰める
↓
【井上】スーツーケースに入れた2人を空港内の病院の駐車場から運び出す(世良が目撃したのは病院の地上駐車場、その後沖矢がいた立体駐車場に駐車していた別の車に運び込み、逃走した)
↓
【井上】東海コンビナートでジョン社長を解放しようとしたが沖矢や世良たちに追いつかれてしまい、さらに逃走
↓
【井上】名古屋港ガーデン埠頭の歩道橋にてジョン社長を解放する
↓
【井上】新名古屋駅から発車されるリニアにアラン会長が入ったスーツケースを運び込む
↓
【白鳩】リニアに乗り込む
【井上】石岡らとともに新幹線に乗り込む
リニア乗車後は、
アランの殺害→白鳩
リニアの操作→井上
の役割分担で犯行を完遂させようとしていましたが、最終的にはコナンや世良、赤井らFBIの面々により阻止されました。
◆事件の真相
15年前の事件は石原誠の単独犯として報道されましたが、実際には石原とその4年後に模倣犯として逮捕されたヒスパニック系アメリカ人の男(犯人Bとします)らの複数犯による犯行でした。
11年前の事件後に逮捕された犯人Bは、FBIとの司法取引により15年前の事件の共犯者を自白することで、当時の罪を問わないとされました。そのため、本当であれば15年前の事件に犯人Bが関与しているものの公表はされず、世間的には石原誠による犯行として記憶されることとなりました。
《15・11年前の事件の真相》
第1の事件:犯人Bらによる犯行(石原は関与していない)
→白鳩の証言は正しかったが実際はその他の事件に石原誠は関与していた
↓
第2の事件:石原と犯人Bによる犯行?
↓
第3の事件:石原による犯行(射殺)
↓
11年前の事件:犯人Bによる犯行
→井上の証言も正しかったが「FBIは間違った犯人をでっち上げ」てはおらず、第1の事件には関与していないものの、石原誠も犯人の一人であり、井上が目撃した犯人Bは司法取引により罪に問われなかった。
今回の白鳩と井上の犯行は『単独犯に見えて実際は複数犯である』という、自分たちが今回の犯行を決意するに至った15年前の事件の皮肉になっているのではないかと思います。
確かに、司法取引に関しては一般人が判ることではないので、知らずに勘違いしたとしてもしょうがないとは思います。
ただ、お互いが持っている証言を照らし合わせれば、あるいは真相に辿り着くことができたのかもしれません。
◆不明な点
①石原誠らの犯行動機
15年前の事件を起こした石原誠らの犯行動機について、ジョディがジェイムズに尋ねます。
「WSGの商業化に抗議するテロだったと聞いていますが……」
「トップが拉致された会社がその後すぐWSGのスポンサーを降りたため、そう思われている」
出典:小学館ジュニア文庫「名探偵コナン緋色の弾丸」ノベライズ版より
『そう思われている』、つまり実際のところは違うということです。
また、冒頭のシーンにて射殺直後の石原の表情が見えますが、眉根を寄せて唇を噛み締め、震わせていました。それは目的を達成した清々しい表情ではなく、とても悲しげで苦しそうでした。
この表情の意味や犯人達の思い・犯行動機が語られないため、犯人達にどんな真意があって犯行に至ったのかわからないままです。
②被害者たちが証言を拒んだ理由
「一人目と二人目の被害者は無事解放されたが……なぜか彼らは犯人に関して口をつぐみ、捜査への協力を拒んだ」
出典:小学館ジュニア文庫「名探偵コナン緋色の弾丸」ノベライズ版より
とジェイムズは話しています。この理由も作中では明らかになっていません。拉致された被害者なのであれば犯人逮捕のために協力は惜しまないはずです。しかし、そうはしなかった。
つまり、話すことで自分たちに不都合なことが明るみに出るからと考えることもできます。
被害者の1人目である井上の父についてもスポンサーを降りていたり、息子である治にも真相を話していないので、その可能性は十分あり得るかと思います。(井上の父が息子にだけでも真実を打ち明けていれば今回の事件は起こらなかったのに、とも思いますが…)
◆犯行動機の考察
わかっている点と不明な点から15年前の事件の石原らの犯行動機を簡単に考察してみたいと思います。
物語の冒頭でニュース映像が流れ、その中でリポーターは建設途中のスタジアムをバックにこう話します。
『もう間もなくWSGボストンが始まりますが、未だスタジアムが完成しておりません。果たして当日までに完成するのでしょうか』
出典:小学館ジュニア文庫「名探偵コナン緋色の弾丸」ノベライズ版より
2016年に開催されたリオデジャネイロオリンピックも建設が大幅に遅れ、建設コストが高くなると懸念されていました。この莫大な建設コストをどう賄っていくか、ということですが、オリンピックに多くのスポンサーがつくことでこの莫大なコストを負担することが可能となります。
ものすごくざっくり言ってしまえば、スポンサーが多くつけばつくほど、オリンピック組織委員会にとっては何かと都合がよくなるということ。
そして、スポンサー達もまた世界的な祭典のスポンサーとなることで自社製品をPRできたり、オリンピックのスポンサーというだけで企業イメージもよくなります。
一見、WIN-WINの関係でなにも悪いことはないように見えますが、そもそもオリンピックというものは平和の祭典。そこにお金や利権などが絡むことで、神聖で純粋なスポーツの祭典とはいえないのではないか、と見ることもできます。
(東京2020オリンピックでも中抜き問題などがありました)
こういったことから、パーティーの関係者で、よりそういった現実(裏の世界)をみてきた石原達は純粋なスポーツの祭典を取り戻そうと、警告の意味を込めてスポンサー達を拉致したのではないかと見ることもできます。
第3の事件については、本当は殺害するつもりはなかったものの顔を見られてしまったり、街中で騒ぎになってしまったことでやむなく射殺した、と考えています。だからこそ、あの後悔するような苦しげな石原の表情に繋がるのではないでしょうか。
ここまで作中で発生した事件についてみてきました。今作は過去と現在で犯人が異なっていること・それぞれの立場から事件について語られることでその内容が少し複雑になっています。
不明な点でも述べたように、犯人達の犯行動機や犯行に至るまでの思いのようなものが語られていないのでやや消化不良な部分は否めないですが、現実のオリンピックでも問題になっていることを取り上げている櫻井さんの脚本はとてもリアルで面白いなと思いました。石原達の犯行動機はあくまでも妄想なので、そこをさらに深堀していくのも楽しそうですね。
◇◆◇
【赤井とメアリーについて】
今作では沖矢(赤井)とメアリーが邂逅するというビッグサプライズがありましたが、一方でこの2人のやりとりから「赤井・メアリーは対峙している相手のことがわかっているのか」という疑問が湧き上がり、公開当初は「どっちだ!?」と私含めて多くの人が疑問に思ったはず…(笑)
ここからはそんな赤井とメアリーがお互いの存在に気づいているのか、また今作で気づくことになったのか、順に見ていきたいと思います。
①「あの子」=??
「私はまだあの子に会うわけにはいかない…」
メアリー・真純VS沖矢(赤井)が倉庫でバトルしてるところへコナンが到着し、それに気づいたメアリーは物陰に隠れて世良へ「先に行け」とメッセージを送ります。
その直後のこの台詞、メアリーがいう「あの子」とは一体、誰のことを指しているのでしょうか?
メアリーのこのセリフから、メアリーは『沖矢=赤井』と薄々気づいているんじゃないかと漠然と思っていました。
理由としては、立体駐車場で車内にいる沖矢を意味深にじっと見つめるメアリーの姿や、逃走した犯人を追いかけている際、道に迷った世良に「今の赤い車を追え!」とマスタングが走っていった方向へ向かうように指示する姿があったことが一つ。
また、あの倉庫内には世良とメアリー以外にはコナンと赤井(沖矢)しかおらず、なおかつメアリーはコナンのことを指す時は「あのボウヤ」、赤井のことは「秀一」と呼んでいます。
これらのことから例のセリフの「あの子」はコナンではなく、自身の息子である赤井のことを「あの子」と言ったのではないかと思っていました。
こちらについては『緋色の弾丸検定』から「あの子」とはコナンを指しているということが判明しました。
②FBIの小僧
次に、ラストシーンについて見ていきたいと思います。
ラストシーンで沖矢の姿に戻った赤井はマスタングで眠る秀𠮷・由美をキャメルに託し、スバル360に乗り込みます。が、その瞬間後頭部に銃口を突きつけられます。
「おい、FBIの小僧」
「どこの誰かは知らんが、貴様らのせいで我が国の要人に危害が及ぶところだったぞ」
「今回は幸運にも大事には至らなかったから見逃してやる。次はないと思え」
出典:小学館ジュニア文庫「名探偵コナン緋色の弾丸」ノベライズ版より
車のライトに照らされた一瞬の隙に銃口は離れ、沖矢も振り返るもののドアが開いていました。
それを見た沖矢(赤井)はフッと笑います。
「小僧か……」
出典:小学館ジュニア文庫「名探偵コナン緋色の弾丸」ノベライズ版より
この一連のシーンはメアリーからは沖矢の顔は見えておらず、また沖矢からもメアリーの姿は見えていません。
しかし、沖矢は恐らく声や口調から銃口を向けている人物が母・メアリーであることに気がついた上で「小僧か……(あなたの息子だがな)」と笑ったのだと見ることができます。
一方でメアリーですが、自分が銃口を向けている人物が昼に倉庫で相手をした男であることはわかっているものの、その男=赤井と気づいているかは劇中では明言されていません。
そのため、このラストシーンでは、
①メアリーは沖矢=赤井と気づいた上であえて「FBIの小僧」といい、叱咤激励をした
②メアリーは沖矢=赤井と気づいておらず、ただ要人を危険な目に遭わせたFBIの小僧に忠告しに来た
の主に2つの見方ができるようになっていました。しかし、こちらは週刊少年サンデー付録の「弾丸の書」から 、
赤井→自分に銃口を向けた人物がメアリーだと気づいている(「相変わらずだな母さん…」と思っている)
メアリー→沖矢の正体が赤井だということに気づいてない
ということが判明しました。
①②より、今回の劇場版をきっかけにメアリーが沖矢の正体に気づく→赤井が生きていることを知るといった可能性はなくなったということになりそうです。
私としては、脚本の櫻井武晴さんがどっちにもとれるようにあえてぼかしたのかなぁと思っていたんですが、そういうわけでもないようですね(笑)
ただ、メアリーが沖矢=赤井と気づいていないのならば、メアリーはどうして沖矢がFBIだとわかったのかということが気になります。
誘拐されたジョン社長を追っている=WSGスポンサー誘拐事件に関わりのあるFBIのメンバーと推測することはできますが、確証はありません。
仮にMI6の力を使って調べたとしても沖矢は架空の人物なのでFBIには実在しないですし、そもそも大学院生として通っているので、『沖矢=FBI』ということにはならないはずです。
幼児化している現在、いくら推理力があって格闘術に優れていたとしても、素性の知れない相手のもとに単独で乗り込むような無謀な真似を用心深いメアリーがするのかという疑問が浮かびます。
だからこそあの台詞は『メアリーは沖矢=赤井と気づいた上で息子に叱咤激励するために来た』と見ていたのですが…(笑)
しかし、公式から見解が出た以上そういうことなので、今度は原作での2人の邂逅を楽しみに待ちたいなと思います。
◇◆◇
ここまで「緋色の弾丸」についてたっぷり語ってきましたが、いかがだったでしょうか?
すごく長くなりましたが、本当はまだまだ語りたいことが多すぎて、泣く泣くカットしてる内容も多かったり…。
もしかしたら追記するかもしれませんが、そのときはまた読んでいただけたら嬉しいです(笑)
今作は1年の公開延期を経ているため、例年以上にファンからの期待値が高かったのではないかと思います。実際、私のように「面白かった!」という人間もいれば「思っていたのと違う、面白くない」といったネガティブ意見もよく見ました。
謎解き要素が少ないことや、私自身も感じた犯人の犯行動機の不明さなど説明が少し足りないな、と感じたことがネガティブ要素として大きいのかなと思っています。
また、特にラストシーンなんかは原作を読んでいればわかりますが、未読の方や映画だけみる人には分からず置いていかれる可能性もあったりと、ただでさえ複雑な赤井ファミリーを2時間という映画の中で取り上げることの難しさなんかも感じました。
ただ、個人的にはいつもと違ったキャラクター達の姿を見ることができたり、犯人に向けて言ったジョディの台詞など原作ファンだからこそより楽しめる要素もあったりと大満足しています。
さらに、今年の映画ラストにあった予告から来年の映画では高木・佐藤・警察学校組が大活躍しそうなので、今からとても楽しみですね!
間もなくDVDも発売されますが、視聴の際にはこの記事をお供にしていただけたら嬉しいです(笑)
ここまでご覧いただき、ありがとうございました!
それでは…
See you next time!