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♯小説「想いは深く…。(魅了_2)」

「今日もありがとうございます!
いつも優しくてくれて嬉しいです。
優しい貴方が大好きですよ。また来ますね。」

いつも通りのやり取りに、いつも通りの日常。
それなのにいつもとは違うちょっとした言葉。

いつも通りに手を振り、見送った。
貴方が僕のことが好きだということを僕は知っていた。だけど気付かないふりをしている。

それは
貴方の気持ちに、答えられない。

決して嫌いって訳でもなく、迷惑だとも感じたこともなかった。なんなら好きという感情ですらあるのに、僕の心がそれは拒むのは何故だろう?

「…あぁ、そうか。」

もう萎れたスズランを携帯ケースから取り出した。
以前、他の人からもらったごく普通のスズランの花。こんなにも大事にしているのは

「僕は…ー」

また違う相手に叶わない恋をしているからなのか。
彼女は、誰にでも優しくて、誰からも好かれる。
そんな彼女になりたいと思って、目で追いかけてた。そんなある日、彼女が気になってこれが"愛しい"だということに気づいた。
 
でもそんな彼女は、みんなに優しくて僕に対しての恋愛感情なんてないんだと薄々気づいていた。
だから、弱い僕は彼女を想う感情を封じ込めた。
なのに、いざこうして別の相手との新しい恋を始めようとしているのに、拒むということは

ーー僕はまだ彼女が好きなんだろう。

 「こんなこと考えたってくだらないのにな…」

薄く笑って、スズランをしまい込む。

あぁ、僕は…
2人の相手に、好意をもち優柔不断で
なんて"ズルくて"悪い人間なんだろう。

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