夏の味
夏休みに栄養ドリンクを三ツ矢サイダーで割ったものを、よく飲んでいた。
氷をコップいっぱいに入れてキンキンにして冷やして、朝ごはんの後に飲むのが、小学生の私の夏限定至福のひとときだ。
なぜ夏限定かと言うと、この時期だけ父が栄養ドリンクを飲むのだ。
珍しい飲み物に、私も当然興味を持ち飲みたがった。
子どもなので一本は飲ませられない、という事で栄養ドリンクの半分を三ツ矢サイダーで割り飲ませても良いと言うことになった。
栄養ドリンク独特の、濃くて少し重みのある液体を氷いっぱいのコップの底に垂らす。そこへ三ツ矢サイダーを、とくとく注ぐ。三ツ矢サイダーの透明でパチパチ弾ける炭酸と、重たい黄色い液体が混ざっていく。
そうして出来た夏の黄金ドリンク。
冷たくて甘くて少し飲み慣れない薬の様な風味と、シュワシュワを飲み干す。
今の生活に支障ある暑さではなかった。
茹だるような暑さではあったが、セミをとったりトカゲを探したり、プールに行ったり夏休みの楽しいひと時を過ごすための、朝の儀式。
たまに妹も早く起きて、黄金ドリンクを欲しがり2人で飲んだのも良い思い出だ。
今はその儀式も、新しい時代の過酷な夏を生きる我が子に受け継がれた。
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