【模型日誌】きみはリビングでザリガニを組み立てたことがあるか #ザリガニのプラモ
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ちょっと昔話
私の小さい頃の話を少ししよう。
私の実家は岐阜県の田舎で、見渡す限り山と田んぼと焼き畑の煙で霞んだ空しかない典型的など田舎だ。
小学校の友人は畑に猿が出たとよく言っていたし、イノシシや鹿の目撃情報には事欠かなかった。家の近くにはたぬきが出るし蛇も出る。街を流れる川の上流には未だに野生の蛍が生息しており、夏になると家族で蚊に刺されながら観賞しに行った。
そんな自然豊かな地元なので、子どもの頃はよく山をそのまま利用した近所の森林公園っぽいところに遊びに行っていた。そこにはきれいな小川が流れていて、小魚やタニシ、サワガニがたくさんいて石をひっくり返してよくつかまえていた。
その小川の上流には貯水池がある。そこから小川に続く用水路は水の流れが悪いのか、きれいな小川とは対照的に少し泥臭かった。
しかし、やつらはそこにいた。そう、アメリカザリガニだ。
世の中には「ザリガニは釣るもの」派と「ザリガニは捕まえる」派が存在しており、前者の方々にはザリガニを素手で捕まえる方法をご存じない方がいるかもしれない。やつらは非常にすばしっこく、力強いハサミを2つも持っているので慣れていないと手強い。おまけにアメリカザリガニはアメリカンサイズでデカイし泥臭い。
素手で捕まえるには、やつらに気づかれる前に(できれば尻尾側の)上から首の部分をつまむか、隅っこに追い込んで力ずくで捕まえるかだ。後者の場合、ハサミで指をつままれる可能性があるためリスキーだ。
首の部分をつまめばやつらの大きなハサミも手を挟むことはできない(稀に挟んでくるツワモノもいる)。つまむと見える脚の付け根は色味が薄く、どちらかというと薄いオレンジのような色だ。メスの場合は稀に腹に小さい粒が無数についているが、それは卵だ。その場合はその場で逃がす。
捕まえたあとはホームセンターで売っているようなプラスチックの虫かごに入れて持ち帰り、家の水槽で飼った。半分に割れた鉢植えの破片を入れてやると隠れ家にするなど可愛いらしかったが、やはり少し泥臭かった。
そんな思い出深いザリガニだが、私も大人になって都会の人間となり、めっきり合間見える機会がなくなってしまった。
心のどこかではまた捕まえたい、飼ってみたいと思いつつ、それはただノスタルジーに浸りたいだけだと言い聞かせスルーしてきた。
そんなある日、ラジ館でそいつと出会った。
アメリカザリガニのプラモ、だと!?
ラジオ会館8F、ボークス (ホビースクエア秋葉原)。いつものように塗料を物色していると、見覚えのあるシルエットの赤いのが目に飛び込んできた。
アメリカザリガニだ
ショーケースに飾られた新商品のサンプル。オーソドックスな赤色に加え、青色・白色も、という謎のカラーバリエーション。
しかも、デカイ。2倍サイズなんじゃないかこれ?しかもけっこうリアルだぞ。正直カマキリのプラモとかも同シリーズで売ってるの知ってたし、ザリガニも出るってネットで見かけた気もするけど、これは、これは…
つくりてぇ
いやでも今日も塗装待ちのやつの塗料買いに来たんだし家にプラモたくさんあるしそうでなくともHJプラモデルコンペの作品作らないとだしそれからそれから…
そのとき、天から声が聞こえた(ような気がした)
「プラモは作りたいときに買え」
(注:作りたいときに買えとは言ったが、買ったからといって作れとは言っていない)
気づいたらレジに向かっていた。
ザリガニのパーツを眺める
さて前置きが長くなったが、買ってきたアメリカザリガニのプラモを見ていきたい。正直やつらと対峙するのは20年ぶりくらいなので少し不安な気持ちもある。一方、奥底では心が踊っている。
まずパッケージはこんな感じだ。わざとらしいくらいにリアルなテカリが効いたアメリカザリガニが3体描かれている。
箱を開けるとパーツがぎっしり詰まっている。
これらがザリガニのパーツか
パーツを全て並べてみる。意外と色数が多く、クリアパーツもある。
パーツをそれぞれ眺めていく。この特徴的なパーツはやはり頭部だろうか。
これは紛れもなくハサミの一部だろう。甲殻類に特徴的な外殻の凸凹がリアルに表現されている。
これは尻尾か。どの外殻パーツも鮮やかな赤でまさにアメリカザリガニを再現している。
これは足の付け根か。ここらへんはリアルなだけあって少しグロい。
最初はクリアパーツ!?と思ったが、腹部はたしかに半透明だった。このパーツ分割から推測するに蛇腹になると思われる。
目だ。聞くところによると一番光沢のある素材を使い、金型も念入りに磨いたとのこと。いい輝きだ。
大胆なほどに長いこのパーツはヒゲだろう。こんなに長かったか?と思ったが2倍程度のサイズ感なのでここまで長くても不思議ではない。
どのパーツも妥協することなくリアルさを追求している。
パーツを眺めるだけで小さい頃に対峙したやつらの記憶が蘇り、まるで答え合わせをしているような、懐かしい感覚を覚える。
リビングでザリガニを組み立てる
パーツをザッと眺めたところで、いよいよ組み立てたい。ただ、いつものように作業机で組み立てるのもなにか気乗りしない。
ザリガニはもっと身近で、気づけばそのへんにいるような存在だ。そんな彼らを作業机など大それた場所で組み立てるのはナンセンスだ。
もっと気を抜いて、楽にできる場所。そう、リビングこそがザリガニを組み立てるに相応しい場所だ。
どんなプラモを組み立てるときもまずやることがある。そう、説明書を読むことだ。
説明書によると、このプラモはニッパーを使わなくても手でもぎ取るだけでパーツが切り取れるらしい。手軽に組み立てるにはピッタリだ。
先に大まかな組み立て順を見ると、どうやら頭→ハサミ→尻尾→合体の順序のようだ。
また、「自由研究シリーズ」と銘打って入りだけあって説明書もリングノートのようなデザインになっていたり、豆知識的なコメントが散りばめられていたりと手が込んでいる。やるな、フジミ模型。
さっそくパチパチ組み立てて、頭部が完成。もぎるだけでいいのでかなり楽ちんだ。
ヒゲや特徴的な両頬の膨らみ具合などを武骨な顔つきをリアルに再現している。
足たちは後でつけるようだ。このタイミングだと生々しくてグロい。
続いてハサミだ。先ほども眺めたパーツだが、惚れ惚れする造形美だ。
組み立てるとこんな感じだ。やはりザリガニの命といえるハサミ、造形にも力が入っている。もちろんハサミは開閉できるようになっている。
両腕分作ると、やはり存在感がある。
続いて腹部だ。正直どのように再現するか気になっていた箇所だ。
腹部はやはり蛇腹で、こういう感じのパーツを6つ作りり…
つなげる。なんだかこれだけでも1つの生き物のようだ。寿司のマグロにも見える。
裏返すと例のクリアパーツが見える。ザリガニの腹部は半透明なので、よく再現されている。小足たちもちょこんとついててキュートだ。
いよいよそれぞれのパーツを合体させるが、その前に頭部に足などをくっつけていく。
やはりこれだけでも1つの生き物のように見えなくもない。
さあいよいよ合体させて完成だ。
ザリガニ、完成
ついに完成だ。組み立ては写真を撮りながらで小一時間。手軽に組み立てられるいいボリュームだ。
完成したザリガニを眺める。やはり記憶の中のやつらそのままだ。やたらデカイが。
そして写真を撮っていて気づくが、このプラモはなぜか写真映えする。鮮やかな赤色がそうさせるのか程よいツヤがそうさせるかはわからないが、ザリガニ以上のものと対峙しているような錯覚に陥る。
ひっくり返してみる。やはりザリガニだ。そう、この感じ。足の密集具合、腹部の半透明さ。
やはりザリガニを持つ手は自然とここに。あの硬いながらも柔らかい外殻の感触が思い出される。
そしてザリガニといえばこのポーズ。威嚇のポーズだ。やはりサマになる。
背面から見るとこんな感じだ。尻尾の先もそれぞれ可動する細やかさだ。
複雑でイカツイ顔も、口周りに至るまで見事に再現されている。
腹部の蛇腹はもちろん海老反りに対応している。けっこう反れるぞ。
最高のザリガニの飾り方
冒頭の昔話を覚えているだろうか。ザリガニを家に持ち帰り飼育する際にどうしたか。
そう、ホームセンターで売っているようなプラスチックの虫かごに入れた。
入れた。
やはりこの組み合わせは絵になる。
まるで本物と錯覚してしまいそうだ。
心なしかザリガニも喜んでいるように見える。
まとめ
というわけで今回はザリガニのプラモを組み立てた。
あの頃に触れたやつらと、そっくりそのままのプラモだった。今は触れる機会もめっきり減ったが、やつらはやはりやつらだと古い友人と再会したような懐かしい気持ちになった。
正直、令和の時代になって「ザリガニをリビングで組み立てる」なんて体験ができるなんて思いもしなかった。
フジミ模型と、あの頃のザリガニたちに感謝だ。
ぜひきみもリビングでザリガニを組み立てて、あの頃のやつらと再会してみてほしい。
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