湖水地方で優雅な休日…!? 【Play back Shamrock #11】
※ご注意※ 本連載は2020年に経験した出来事を1年後に振り返る趣旨で公開しており、掲載の情報等は2020年当時のものです。また、第10回以降は当初の公開予定よりも大幅に遅れて公開に至りました。
(見出し画像:Windermere駅近くの商店街。都会とはまた違った高級感が滲み出ていた)
2月15〜16日は1泊1.5日のスケジュールでイギリス本島のほぼ中央部に位置する国立公園でリゾート地の湖水地方(The Lake District)を訪れた。15日は午前中にダブリン中心部で試験を受け、その足で空港へと向かったため「1.5日」が正確な表現のように思う。
今回のヨーロッパ滞在で私は費用と時間との折り合いを付けつつ目的の場所に1つでも多く訪れようと、外国を訪問する際には基本的に日帰りで行程を組むケースが多かった(日帰りで外国に行くとは、日本にいながらでは常識的にほぼあり得ない話だが、ヨーロッパにいると実際問題、決して無茶な話ではなくなる)。とは言え、こだわりのある場所や現地での移動に時間がかかる場所に行くには日帰りでは全く不十分なことも確かで、今回が正しくそれだった。ただし先にも書いた通り、諸々との折り合いを付けた結果、純粋に1泊2日ではなくなってしまったが。
さらにもう1点、残念な条件が重なってしまった。この日はストームの影響で荒天になることが見込まれていた(結構な波乱の旅になることをお断りしておく)。
写真:湖水地方のWindermere湖。箱根の芦ノ湖を彷彿とさせる
湖水地方には「いずれ行きたい」と長らく考えていた。そして遂に今回の滞在中に訪れることを決めた。なぜ湖水地方なのかと言えば、短期留学で以前イギリスを訪れた面々と話をした際に、湖水地方に行きたいと言うメンバーがおり、それ以来私も憧れをもっていたことが大きかった。「湖を眺めながら優雅にEnglish Breakfastをいただいて、コーヒを楽しみたい。」そんな会話をしていたことが強く印象に残っている。
自分1人だけ先に行ってしまうことへの罪悪感もあったが、いずれは仲間と足を運ぶことも視野に入れ、予習を兼ねて訪れてみようと考え今回の旅をセッティングしたのだった。
1日目の15日は夕方にマンチェスターへと飛び、そこから湖水地方の入り口に位置しているケンダルまで移動した。湖水地方へはマンチェスター空港から列車を使い、乗り換えなしでアクセスできる(ただしおよそ2時間、乗りっぱなし)。列車での移動中はレポート執筆のための文献読み込みの時間に充てていたので退屈はしなかった。
ストームの影響がどこまで出るか、気にかけてはいたが湖水地方の手前までは概ね順調に進むことができた。しかし到着前に最初の影響が出た。河川の増水の影響で列車の目的地が変更されたのだ。とは言え、終着駅になったのはケンダルの1つ手前、主要路線からの分岐駅にあたるOxenholme Lake District駅で、この日の宿まで歩いて行くことも可能な距離に位置している。最初は「代行のバスが出る」と言われたのでそれを目当てに駅でしばらく待ったのだが、数十分待機しても案内されず、宿までおよそ2kmを結局歩いて向かうことにした。
ここからは若干、波乱含みだった。Oxenholme Lake District駅から宿までは距離としては決してそこまで遠くない一方、すでに時間は19時を過ぎており周囲はすっかり暗く、しかも増水している川を渡らなければならなかったのだ。ケンダル駅から宿までは市街地が続くが、Oxenholme Lake District駅からは歩行者のほぼいない住宅地を歩く必要があった。
不気味さを感じたため駅を出てから宿に着くまでは基本的に小走りで先を急いだ。周囲が暗い中、轟音を立てて流れる川の様子も目にし緊張感でいっぱいだったが、最終的には無事にこの日の宿に到着した。
写真:この日の夕食
今回は国内外を問わず初めてB&B(Bed & Breakfast)を利用。暖かな出迎えを受けた。湖が見えるロケーションでは宿泊費も嵩むため、今回は学生にも十分手が届くケンダルのB&Bというチョイスになった。
近隣の店舗でハンバーガーとピザをテイクアウトし夕食。この日はこれにて終了した。
写真:2日目の朝食
そして2日目。B&Bということで朝食に期待していたが、予想以上に満足度の高い本格的なEnglish Breakfastだった。駅からは若干距離があるものの、部屋の広さや雰囲気なども踏まえると今回の宿は当たりだったと言えそうだ。
本来であれば2日目はピーターラビットの聖地であるヒルトップや史跡などを巡る計画だったが前日のストームの影響で軒並み一般公開が中止となり、変更を余儀なくされた。午前中はケンダルを歩き、午後に湖のあるWindermereを訪れることにした。
写真:Kendal Castle
写真:ケンダルの街並み ※画像の一部を加工しています
宿から駅まで歩く過程でKendal Castleを見物しつつ、街中を歩いた。城はケンダルの街を見渡す丘の上に位置している(湖らしきものはここからは確認できなかった)。なお、城とは言っても豪華な建築物が現存しているわけではない。具体的な年代は確認していないが、壁や建物の基礎が残されており、かつての面影を見てとることはできる。
城から下り、ケンダルの中心街を通って駅まで向かう。ケンダルは全体的に、商店が数多く立ち並び利便性と賑わいがありながら落ち着きも感じられる、バランスのほどよいところだと感じた。
写真:車窓風景
ここからは湖水地方の最大の見どころである湖を見に、列車を利用して終点のWindermereまで移動した。なお、ここでの車窓風景が今回の一連の旅の中で最も気に入っている光景と言っても過言ではない。一面、緑に包まれたのどかな丘陵地帯に羊が放牧されている様子は、一日中見ていても飽きないのではないかと思うほどだった。
写真:駅からWindermere湖までの道中 ※画像の一部を加工しています
写真:湖に向けて坂道を下る ※画像の一部を加工しています
Windermere駅からは湖水地方最大の湖であるWindermere湖の湖畔まで1km強を歩いた。周囲の家々が別荘なのかの判別はつかなかったが、いかにもリゾート地といった感じの風格漂う街並みの中を歩くのは苦にならなかった。
やがて坂を下り、視界には湖が。この日は雲が多くベストコンディションではなかったものの、束の間の休日を味わうには十分すぎるレイクサイドビューがそこには広がっていた。
写真:Windermere湖畔。まさしく「白鳥の湖」といった感じだ
多少は時間にも余裕があったことからしばらくの間、湖畔から風景を眺めることにした。昼食を兼ねて湖畔のカフェに入店。美しい風景を「おかず」に食べるサンドウィッチは、どこでいただいた昼食よりも感慨深かった。湖を眺めながら優雅な朝食とはいかなくとも、そこまでコストをかけることなく雰囲気を味わうことはできたのは学生には大変ありがたかった。
当初の予定からは大幅な変更を伴いはしたが風景を堪能し、お土産を購入してWindermereを後にした。なお、無類のウサギ好きな母のためにピーターラビットの絵本を購入したのだが、イギリスではなくアメリカで出版されたものだと購入後に気がつき、ちょっと残念な気分にもなった。
こうして憧れの地・湖水地方への訪問は一応の収穫を伴って無事に終了した。束の間の休日を謳歌できたと思う(一連の日程の中で最も充実感のある週末だったのかもしれない)。
またWindermere湖周辺には宿泊施設はもちろんのこと、商店やテーマパークも含め見て回るスポットが数多い。湖水地方全体ではなおのことだ。1泊とは言わず、何日でも滞在したいと思わせる魅力に溢れたリゾート地だった。
次週は旅の舞台を再びアイルランド島に戻し、国境地帯の街・デリーへと向かう。