トラオムにて何故ジェームズ・モリアーティは負けたのか
はい、という訳で(どういう訳だ)前回に引き続き異星の使徒、ジェームズ・モリアーティについて考えていこうと思います。
今回のは考察、というよりも物語の解釈の色合いが強いので、考察とは名づけていません。
あくまでも物語としてどうしてそうなったのか、個人の解釈をつらつらと述べていこうと思います。是非最後までお付き合い下さいませ。
※諸注意※
「死想顕現領域 トラオム」までの本編ストーリー全面ネタバレ
ジェームズ・モリアーティ(裁)のmaterialネタバレ
個人の解釈
よろしいですね?ではどうぞお進み下さい。
「運命の糸」は果たしてどのように切られたか?
さて、皆様にある「異星の使徒、ジェームズ・モリアーティの能力」として印象にあるのは「ノルン」こと「運命の糸」の能力でしょう。
ラストバトルにて、カドックの魔眼の補助を受けマシュが断ち切ったのは、皆様も覚えていらっしゃる通りです。
ですが、こうは思いませんでしたか?
「ブラックバレル無しでどうやって運命の糸を断ち切ったの?」と。
今まで神性を持つものや神を、カルデア側はブラックバレルに藤丸の令呪を装填、撃ち込むことで打倒してきました。
……果たして、カドックと縁があったヴィイの魔眼だけで運命の糸を断ち切れるのでしょうか。甚だ疑問です。
私はこれについてクリア直後は何も考えていませんでした。どこぞの探偵が勝手に滝壺に落ちたからです絶対に許さないぞお前本当に。
その衝撃が強すぎて、何にも考えられなかったのです。これについてキチンと整理したのはロスから数日経った後のことでした。
まず、カドックの用いていたヴィイの能力について。アナスタシアのmaterialにはこのようにあります。
materialには「イタズラレベルの事」や「弱点を見出す」事はできても、何かを殺傷、傷つけることは出来ない、とあります。やはり、ヴィイだけでは「運命の糸」は打ち破れないと考えるのが自然です。
では、どのようにして打ち破れたのか。これは因果の積み重ねによる成果、と言えるでしょう。「運命の糸が断ち切られた」のは、
ホームズの「ノルン」の助言
ホームズ打破による「運命力」の低下
「モリアーティ」という概念におけるデバフ
カドックの「ヴィイの魔眼」による補助
以上四つの要素による合わせ技で「運命の糸を断ち切った」と考えられます。
順に説明しましょう。
1.ホームズによる「ノルン」の助言
これは分かりやすいでしょう。本編で滝壺ダイブ間近で、ホームズが叫んだ一言です。これにより「モリアーティに何故攻撃が当たらないのか」のヒントを得られました。まずこれがなければカドックは魔眼を借りてモリアーティに挑もう、とは考えなかったでしょう。
これがあって初めて、カドックはモリアーティに勝つ算段を立てられたと言っても過言ではありません。ホームズのファインプレイその①。
2.ホームズ打破による「運命力」の低下
これはジェームズ・モリアーティのゲーム内materialに記載があります。(期間限定星5鯖のmaterialに本編の顛末を書くな(半ギレ))
「ホームズに勝つ」ことで、彼は物語の主役では無くなってしまった。いえ、むしろ「自身の持つ運命力の最高潮」を「ホームズとの一騎討ち」に使ってしまった、と言い換えてもいいでしょう。
それ故に「運命力」の低下を招いてしまった訳ですね。まだ「主人公」であるカルデア側に「運命力の勝負」で負けた訳です。ホームズのファインプレイその②。
3.「モリアーティ」という概念におけるデバフ
皆様は当然トラオムまでクリアしていらっしゃると思いますが、新宿での新茶を覚えていらっしゃいますでしょうか。そうです、黒幕としてホームズを打ち負かした新茶です。
彼は新宿のラストバトルにて「自身が犯人である」と藤丸に看破され、弱体化を受けていました。(アンデルセンやシェイクスピアの補助も含め)
ここから考えるに「モリアーティ」という概念は「自身が犯人として指摘されない」状態が能力をフル活用出来る最低条件であり、「自身が犯人として指摘される」と恐ろしいまでに弱体化するのだと考えられます。
ではトラオムではどうだったか。
そうです、彼はカルデアという目撃者の前で「ホームズの殺害」を達成しました。……いえ、達成してしまった。それ故に「モリアーティという概念」の持つ「能力フル活用出来る最低条件」に抵触し、弱体化していたと考えられます。
さらに付け加えるのならば、「モリアーティという概念」と「ノルンの能力」の噛み合わせが絶妙に悪い事も挙げられるでしょう。
彼女らは「運命を見て、紡ぎ、断つ」ことが能力です。このうち、「運命を見る」ことはいいのですが、残り2つの「紡ぎ、断つ」というのが宜しくない。
モリアーティの強みとは先ほども語った通り「犯人とバレないこと」であり、言い換えれば「場を整え、引き金は他人に引かせる」ことにこそ真髄があります。
しかし「運命を紡ぎ、断つ」という行為は「引き金すら自ら引く」という事になる為、どうあっても弱体化を防げないのです。
なによりホームズはカルデアと行動を共にしている為、目撃者がどうあっても生まれてしまいますので尚のことです。
4.カドックの「ヴィイの魔眼」による補助
これは冒頭語った通り、「ヴィイの魔眼」によって「運命の糸」を可視化。さらに弱点を暴き立てることで、弱体化し切った「運命の糸」をマシュらカルデアのサーヴァントに断ち切らせることが出来たのです。ヴィイすごいね、ホームズの宝具みたいだぁ……。
以上の要素が絡み合い、「運命の糸」は断ち切られたのです。
こうしてみると、如何にホームズがモリアーティ戦の勝利に寄与しているかが分かります。物語を読み終わった直後の「なんかカドックが魔眼で補助してマシュが運命の糸切ってる……意味わからんぞこれ」という印象が大分変わったのではないでしょうか。
ホームズは何故滝壺に落ちなければならなかったのか
では次に、「どうしてホームズは滝壺に落ち、死ななければならなかったのか」についてです。いや物語の都合だろ、といえばそうなのですが、疑問に思いませんでしたか?
「なんで、満足気に笑ってるの……?」と。特に先程まで「モリアーティ戦はカドックとマシュがなんかして勝った」的に受け取っていた方はそう思った筈です。
これは、先ほどのお話とも密接に関わっているのですが……もう一度、ジェームズ・モリアーティのゲーム内マテリアルを見て頂きたいのです。
「ホームズが一対一で戦いを挑んだのも、その運命の劇的さを高めるため。ホームズの敗北が、後の勝利に繋がったと言えよう。」とあります。
この一文から分かる事は「ホームズはモリアーティと戦う前に勝つ為にすべきことを理解していた」ということです。これが何を意味するか、もうお分かりですね?
「ホームズは自身が死ぬことが最適解である」と分かっていて、それを成し遂げたのです。(残された側の気持ちを考えろ原典から成長してないなお前(半ギレ))さらに付け加えると、ホームズが生き残る事はあの場面において最もしてはいけない事でした。
何故かというと、先ほども語った通り若モリが主人公であるのは「ホームズが死ぬまで」です。逆をいえば、「ホームズが死ぬまでは主人公補正が掛かったまま」なのです。その状態では、カルデア側には勝ち目がありません。運命の糸も断ち切れず、彼のなすがままだったでしょう。
そしてなにより「ホームズ本人は半死半生でお荷物状態」なのも頂けません。ホームズはモリアーティに戦闘では負けてしまいますし、なによりその後の「カドックにマスターになるように交渉する」場面でホームズを盾にされようものなら手も足も出ないからです。これが本当の地獄絵図という奴ですね。
彼はあの場面で瞬時にそれを導き出し、カルデアを生き残らせて勝たせる為に滝壺に落ちていったのです。(それが何の相談もなくノータイムでやるからコッチは複雑な気持ちになってるというに)それ故に、モリアーティは背筋が震えた訳なのですね。ホームズは身命を賭して、我々を勝利に導いたわけです。
……ひとついいですか。
「キチンと説明しろ!!!!経営顧問さんよぉ!!!!」です。
(※ここまで辿り着くのにクリア後数日掛かっている)
もしかしたら、なデバフの話
皆様はトラオム冒頭にて、ヴラド公にモリアーティがちょっかいをかけたのを覚えていらっしゃいますか?
そうだね、ヴラド公決死の自己封印だね、覚悟キマリ過ぎてて凄かったね。
私はふと考えたのです。「もしかして、モリアーティの概念的デバフはここから始まっていたのでは……?」と。(クリア後やり直した時、何で自分から黒幕ですって看板首にかけてるんだろうと思ってたとか言えない)
先程の語った通り、「モリアーティという概念」は「自身が犯人であるとバレる」と強烈なデバフが掛かります。これが、モリアーティが自覚する……つまりホームズが滝壺に落ちる前から始まっていたとしたら?ヴラド公にちょっかいを掛けた時点から始まっていたら?
そう考えるとどうして今回のモリアーティの作戦が「ノルン頼り」なのかも説明がつけられると思うのです。
今回のモリアーティの「ホームズ殺害計画」は「運命力の勝負」によって為されたものでした。結果「モリアーティは主人公としてホームズに勝利する」ことはできました。
……しかし、あまりにも「モリアーティとしての強み」をかなぐり捨てている気がするのです。もっと別のやり方もあったはずなのに。
どうしてこんなにも自らの能力を用いず、「ノルンの能力に頼った」のでしょうか。
私には、当初からデバフが掛かっていて、自身の正しい能力値を見失っていた様に思えるのです。
「自身が黒幕である」というムーヴをしてしまったが故に、デバフ掛かりはじめ、正しい自身の能力を見定められず、結果デバフの掛かっていない「ノルンの能力」に頼り切りになった。そのように私は考えます。
完全にドツボにハマっています本当に有難うございました。
更なる敗因
さらに彼の敗因を述べるなら(追い討ち)、それは「主目的を決めきれなかったこと」でしょう。
彼の目的は2つ。一つが異星の神との契約である「ホームズの抹殺」。もう一つが、「カルデアの乗っ取り」です。
彼は本編にて「ホームズの抹殺」→「カルデアの乗っ取り」の順で行動しましたが、これ、ハッキリ言って悪手です。
なぜかというと、彼は少なくとも第7節の夢の時点で「異星の神とは縁を切る目論見」を既に語っていました。つまりハナから裏切る前提で動いているのです。であるなら別にホームズを殺すのは、カルデアを乗っ取った後にすればいいだけなのです。
結果的に「ホームズを殺せばいい」ので、態々優先させる必要がない。半殺しまではすべきでしょうが。
「何故ホームズが滝壺に落ちなければならなかったのか」でも語りましたが、そこで半死半生のホームズを盾にカドックに迫れば、カドックの「もう裏切れない」の発言的にもマスター・サーヴァント契約を結びカルデアを乗っ取るのは簡単だった筈です。私にも気が付けて思いつけることが、モリアーティに思いつけない筈はないのですが、ドウシテコウナッタ。ホームズを駒にするのも一つの手でしょう。運用法を思いつけていない時点で、あの空想のモリアーティ道場行きは確定していた訳ですね……。
彼の判断は「間違い」だけであったのか
……さて、ここまで酷いくらいにモリアーティの敗因を叩きつけてきた訳ですが、何も「彼の判断全ては間違いだった」と言いたいつもりではありません。本当です信じてください私の推しでもあるんです本当です。
彼の判断には、間違っていない、面白い発想があったのも事実なのです。
彼の「判断」で目を見張るのは、やはり「ノルンの運用、活用法」です。
「運命を見、紡ぎ、断つ」という能力から、「自身に攻撃が当たらない様にする」のは、目から鱗でした。ホームズが指摘しなければ、永遠に気が付けなかったことでしょう。
ひたすらに当たった運命を断ち切り、攻撃の完全無効化を成すのは、今までに無かったタイプの攻撃無効者です。真面目に神性看破がなければ詰みも良いところです。チートですわこんなん。
さらに「運命を予言する」ことから、「夢に干渉する」というのも素晴らしい発想です。彼は度々(第7節、第13節後半)夢に干渉してきていましたが「ノルンの能力」からここまで活用法を見出すのは尋常じゃない発想です。感服しました。
こういうところに、「魔弾」を用いて世界を、惑星を破壊しようとした新宿のアーチャーこと老齢のモリアーティとの共通項が見え隠れしていますね。
また、マスターとして「カドックを選択する」というのも正しい判断だと思います。カドックの方が魔術師として優れていますし、なにより合理主義です。
合理的、と言えば聞こえはいいかも知れませんが、その実「計算に組み込みやすい」のです、こういう人たちは。何故かというと究極「効率よく目標をクリアするにはどうするか」を突き詰めれば性格が異なっても結論が同じになるからです。
そういう意味で、計画のパートナーとして、指示者として、操る対象として、カドックの方が藤丸よりもピッタリ合致するのです。ナイス判断!(ツッコミとしても)
最後に
……さて、如何だったでしょうか。ご納得頂ける解釈は、ありましたでしょうか。私としては、トラオムという物語において、若モリはこんなに頑張ってたんだぞ!可愛いんだぞ!というのが伝われば幸いです。
ついでにあの顧問探偵一回殴り隊に入隊してくれる人が増えればいいな、とも思っております(最低)マジで許さね〜
彼の咄嗟の判断力には感服するばかりですし、なにより、それ程カルデアでの生活を愛してくれていたんだな、と思うと涙が出てきてしまいます。
きちんと帰ってきて、説明してくれる日を待つとしましょう。
次にnoteを書くのがいつの日になるかは分かりませんが、またお会いいたしましょう。それでは。
↓ご指摘、ご感想はこちらまで
オマケ「なんでカドックに興味を失ったの?」
はい、というわけでこっからオマケのお話、解釈です。今回の本題から逸れるのでオマケにしました。
議題はズヴァリ「なんでカルデアに召喚された若モリは、カドックカドック言わないの?」です。
私は当初、若モリを召喚したらとっぱな「カドックはどこだ?」と言われるんだろうなぁ、なんて思っていたのですが、開幕「ヨーロッパを股にかける大悪党?何の話だい?」と言われて椅子から転げ落ちました。嘘だろモリアーティ……?こんな学生時代がお出しされるとか想像できる訳ねぇだろうが!!!
まぁしかし、あくまで第一再臨。きっと再臨を重ねればカドックを呼ぶだろう、なんて思っていたんです。ええ、本当です。
それがですね、蓋を開けたらこれですよ。
お、お前〜〜〜〜〜???!!!!!
当初何を見せられ……いや聴かされてるんだろうとまた椅子から転げ落ちました。ナニコレ何があったのお前ら。何?喧嘩したの知らないうちに。
めちゃくちゃ困惑しました。如何に召喚ごとに記憶がリセットされるにせよ、主義趣向は変わらない筈なのにこのボイスはなんだ???と。
……そこで、もう一つのボイスを見てほしい……というか聴いていただきたいのです。
6.5章クリアで、なおかつ絆5達成ボイスなのですが、前回の考察でも明記した通り、モリアーティに異星の使徒としての記録はありません。
そして、先述したボイスがクリア直後から聴けるのに対し、こちらは絆5を達成してからでないと聴く事ができません。
ここから考えるに、「カドック云々を問われてからモリアーティはトラオムの記録を閲覧した」と思われます。時系列的には「会話7」→「絆5」という流れだと考えられるのです。
……とすると当然、モリアーティは疑問に思った筈です。
「何故マスター君はカドック・ぜムルプスに興味があると考えたのか?」と。自分を召喚し、契約を結んだのはマスター君である筈なのに、と。
使徒時代と異なるのは「カルデアを乗っ取る計画を持つかどうか」です。恐らく、ここがマスターへ興味、カドックへ興味を向けるかどうかの分岐点なのです。
何故かというと、「彼の判断…」にて語った通り、計画の担い手としては圧倒的にカドックの方が優秀です。計画のパートナーとして、指示者として、操る対象として、カドックの方が藤丸よりもピッタリ合致するので。
……しかし、そんな計画がない時、カドックはどう映るでしょうか?
彼の魅力を否定するつもりではありませんが、もしかしたら、こう映るかもしれません。「予想の範囲内過ぎてつまらない」と。
先程も語った通り、合理主義は究極同じ結論に至るので、把握がしやすいという観点があります。計算通りに進むのは兎も角、分かりやすすぎるのはどうなんでしょうか、私はいいと思いますけど。
きっと、ホームズにとっての若モリも同じである筈です。アラが多いから、自分の方が上手くできてしまうから、新茶に比べてつまらない、と。
若モリ宛のボイスがないのも、それが理由かもしれません。
その上で、藤丸とカドックを比べると、単純に予想ができず、何するかもわからない「変数」であるのは藤丸の方です。なにより、自身を喚んだ物好きでもあるので。
さらに付け加えると、(計画があったとはいえ)老齢の己に影響を与え、新しい己へと変革させたのは藤丸です。こりゃあ興味湧きますねぇ。解体してみたくなりますねぇ!
……以上、つまらない空想、解釈でした。
またお会いしましょう。グッバイ!