【読む映画】『ワンダーウーマン』
世界が熱愛する女性ヒーローの降臨
女性監督作品として製作費も興行成績も史上最高、世界中で大ヒットという画期的な記録を、いくつも打ちたてている『ワンダーウーマン』。1941年に生まれた、アメコミ(アメリカンコミック)女性スーパーヒーローの初実写化映画である。
いまどき、女性ヒーローのアクション映画はめずらしくない。だが、男性ヒーロー映画と同様、CG偏重で、メカデザインなどにはやたらと凝る一方、人物造型や脚本はそっちのけという粗製濫造も多くて辟易するのも事実。
それだけに本作には驚いた。ヒーロー映画の正統派、王道復活である。
物語は、女性だけの部族アマゾンが暮らす美しい島から始まる。最高神ゼウスは、邪神アレスから人間界を守るためにアマゾン族を生んだ。その王女ダイアナはある日、人間界が危機に瀕していることを知り、その危機=第1次世界大戦を終わらせるべく旅立つ。そして最も過酷な西部戦線に向かう。
このダイアナ=ワンダーウーマンが、とにかくカッコイイ。ルックスやアクションだけではない、純粋さや知性や優しさが相まったキャラクターそのものが、非常に魅力的だ。そんな彼女に観客は感情移入し、彼女のようになりたいとも思う。
そのような導きこそ、監督はむろん、原作者ウィリアム・M・マーストンの狙いであることが、ハーバード大学教授ジル・ルポールのベストセラー『The Secret History of Wonder Woman(ワンダーウーマン秘史、注)』に明らかだ。同書によれば、英国の女性参政権運動家エメリン・パンクハーストや、米国の産児制限運動家マーガレット・サンガーの影響など、ワンダーウーマンの出自もワンダー(驚愕)だらけである。いずれあらためて紹介したい。
監督:パティ・ジェンキンス
出演:ガル・ガドット、クリス・パイン、ロビン・ライト、ダニー・ヒューストン、デイビッド・シューリス
2017年/米国/141分
初出:『週刊金曜日』2017年8月25日号(1149号)。
注 境分による仮訳。その後2019年12月、『ワンダーウーマンの秘密の歴史』という日本語タイトルで青土社より翻訳刊行された(鷲谷 花訳)。
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